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デミーンの自殺者たち の商品レビュー

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2023/08/25

1945年4月30日から5月4日までのドイツ・デミーンで起こった暴力と、その住民たちの自殺について書かれた本。 時期からして言うまでもなく、暴力の主体はソ連兵となるのだが、本書は暴力の原因をソ連兵個人や性質に求めることはなく、暴力が発生する時空間的な構造に条件を求める。 本書自...

1945年4月30日から5月4日までのドイツ・デミーンで起こった暴力と、その住民たちの自殺について書かれた本。 時期からして言うまでもなく、暴力の主体はソ連兵となるのだが、本書は暴力の原因をソ連兵個人や性質に求めることはなく、暴力が発生する時空間的な構造に条件を求める。 本書自体は、2021年9月にフランスで発行されたそうだが、邦訳されたのは2023年5月であり、ロシアのウクライナ侵攻から1年以上経っている。そうなると、どうしても野蛮なロシア兵の戦争犯罪を想起してしまうが、計らずして本書は蛮行の原因をロシアの性向に求めてしまう誘惑を回避しており、あくまでも暴力が起こる構造分析に集中する。 だからといって当時のソ連、そしてドイツの暴力を免責するわけではない周到さも兼ね備えており、現在のウクライナで起きている現実に対する参考にもなるのだが、本書はあくまでも暴力と集団自決の構造分析であり、それに対する処方箋が下されるわけではない。当然のことながら、それはかんたんなことではありえないので瑕疵にはならないのだが、すこし物足りなさを感じるのも事実だった。

Posted byブクログ