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こんぱるいろ、彼方 の商品レビュー

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7件のお客様レビュー

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2024/06/20

主人公の母親と子供たちはとにかく「ふつう」で、子育てに悩んだり、友人と楽しく過ごしたり、受験勉強が嫌だと文句を言ってみたりする。 筆者はあえて、主人公たちをすごくありふれた人物にすることで、戦争に巻き込まれて命からがら逃げてきた人たちが、連綿と命を紡ぎ、その子や孫たちが「ふつう」...

主人公の母親と子供たちはとにかく「ふつう」で、子育てに悩んだり、友人と楽しく過ごしたり、受験勉強が嫌だと文句を言ってみたりする。 筆者はあえて、主人公たちをすごくありふれた人物にすることで、戦争に巻き込まれて命からがら逃げてきた人たちが、連綿と命を紡ぎ、その子や孫たちが「ふつう」に暮らせている、という人間の強さを描きたかったんじゃないか。 「王さんの話を聞きながら、奈月はひそかにはっとしていた。バスのなかが歓声に包まれた、と聞いたときに、ようやく彼らを身近に感じることができたからだった。(中略)こうして人は、自分と他人を区別していき、大事なものをなくしていくのかもしれない。自分の目に映らないものは関係ない。自分のあずかり知らぬところで人が死のうが関係ない。そうやって、殺す側と殺される側に分かれてく。そうやって戦争がはじまっていく。いつ立場が逆になるかもしれないのに、そこに自分は含まれない。」 いま朝ドラの「虎に翼」で、主人公の寅子が戦争孤児の支援に奔走している。 娘が生まれた立場で見ていて、この戦争孤児たちはわたしの娘かもしれないんだ、とちょうど今朝心にグサっと来たのだった。 もし戦争がまた起きて、わたしと夫と、その親類もみんな死んでしまったら、娘はどうするんだろう。どうやって生きてくんだろう。娘が悪い人に騙されそうになっても、死んでしまったら、わたしは娘を守ってあげられないんだ。この戦争孤児の親たちは、どんなに無念だっただろう。 ちょうどそんなふうに思って、本当にありきたりだけど、戦争は二度と起こしてはいけない、と改めて痛感したばかり。 奈月のこの心情はすごーく共感できた。わたしも今朝、全く同じ気持ちになったところ。 そしてもう少し考えてみれば、世界ではまだ戦争が続く地域がある。話す言葉が違ったり、テレビやニュースで見聞きするだけでは、なんとなく遠い出来事に感じでしまうけれど、まさにいまのわたしが、そして夫と娘が、その戦火にいる可能性だってあるのだ。 戦争に巻き込まれてしまうのは「ふつう」の人だし、それを乗り越えていかないといけないのも「ふつう」の人。その過程で亡くなるのも「ふつう」の人。そして連綿と命を紡いでいくのも「ふつう」の人なのだ。 中国が支援する北ベトナムとの戦争で、敗戦を経験した南ベトナム側の華僑であったり、唯一地上戦が行われた沖縄の人たちのベトナム戦争に対する思い、ベトナムでなお見え隠れする戦争の残り香など、さまざまな切り口でベトナム戦争の姿が浮き彫りにされていた。

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2024/06/06

ベトナム戦争に負け、共産主義に弾圧され日本へ逃れた3世代親子の物語。戦争の影響が分かりやすく描かれている。

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2024/06/07

祖母、母、娘の3つの視点で物語は進む。 ベトナム戦争で辛い思いをした祖母、ボートピープルとして幼いころに家族と日本にたどり着いた母、そしてそれらを知らずに日本人として過ごしてきた娘。 出自を知った時に娘 奈月は自身のルーツを辿るたびに出る。 母 真依子世代の私、ベトナム戦争は最...

祖母、母、娘の3つの視点で物語は進む。 ベトナム戦争で辛い思いをした祖母、ボートピープルとして幼いころに家族と日本にたどり着いた母、そしてそれらを知らずに日本人として過ごしてきた娘。 出自を知った時に娘 奈月は自身のルーツを辿るたびに出る。 母 真依子世代の私、ベトナム戦争は最近なんだよなと再確認しながらも、幼すぎてあまり記憶にないという真依子の気持ちがわかる気がした。 育ってきた時代背景がほぼ一緒だからだと思うけれど、真依子の生活における職場での力関係や人間関係、ママ友との関係などリアルに理解できた。 「つながり」について考えさせられる物語だった。 私は私、だけど私はひとりではなくていろんなつながりが広がって絡まって成り立っているんだとしみじみ。 「こんぱるいろ」って何だろうと思ったら「金春色」、ターコイズブルーのことだった。 「こんぱるいろの彼方」、いいね。

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2023/10/24

ベトナム戦争の時に南ベトナムで過ごした家族のこと。ボートピープルとして脱出してきた人々のこと。知らなかった。 民主主義に相反するのが共産主義として描かれていたけど、共産主義は経済体制のこと。民主主義vs独裁君主 共産主義vs資本主義なのでは?そのねじれに違和感を感じてしまった。

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2023/08/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

Kindleで読んだ。 1978年。戦争が終わり、体制の変わったベトナムから逃れるため、スアンと子どもたちは船に乗った――。 日本人として家族と暮らしている真依子は、子供の頃にボートピープルとして、家族とともにベトナムからやってきた。 自分がベトナム人であることを子どもたちに明かさずに暮らしている真依子だったが、娘の奈月がベトナム旅行に行くのをきっかけに娘に伝えて――。 春恵(スアン)、真依子、奈月の母娘三代の物語。 母から伝えられてベトナムについて理解を深めようとする奈月がすごいなぁと思った。 真依子みたいに無関心な気持ちもわかるから。 同じアジアだから、顔ではあまり分からないのかもね。 タイでも日本人かな?タイ人かなって分からない顔の人も多いし。 “ボートピープルとして日本に来て、真面目に働き、姉を大学、兄を大学院まで行かせ、一軒家を建てた。よくぞ、よくぞここまで。そんな言葉が、ふと頭に浮かぶ。 よくぞ、よくぞここまで。” 本当にすごいことだよね。

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2023/06/22

 物語はある普通の家庭で生まれ育った娘が大学の友達と海外旅行に行くため、パスポートをとるというところから始まります。  パスポートを取るためには戸籍謄本か抄本が必要なわけですが、その戸籍謄本には母がベトナムで生まれたベトナム人であるという出生の秘密が書かれていて、その秘密を娘に...

 物語はある普通の家庭で生まれ育った娘が大学の友達と海外旅行に行くため、パスポートをとるというところから始まります。  パスポートを取るためには戸籍謄本か抄本が必要なわけですが、その戸籍謄本には母がベトナムで生まれたベトナム人であるという出生の秘密が書かれていて、その秘密を娘に明かすことにより、物語が動き出します。  本物語は、5歳でボートピープルとしてベトナムから日本に渡ってきた母視点、その母と日本人の間に生まれた娘視点、ベトナム戦争で負けた南ベトナムから家族を連れてボートピープルとして逃げてきた祖母視点で語られる、親子3代に渡る物語です。  南ベトナムでは裕福だったものの、北ベトナムにより統一されたベトナムでは生きていけないと命からがら逃げてきた当時の祖母視点、5歳でベトナムから日本に渡ったため、ベトナム語も話せずベトナムに興味すらない母、ベトナムの血が入っていることを知ってから、自分のルーツが気になって仕方がない大学生の娘、この3人の視点は全く違うはずなのですが、物語がしっかりと繋がっていて、読んでいてしっかりとまとまっている印象で非常に読みやすかったです。  また、ベトナム戦争は知っているものの、その内容はしらない、ましてボートピープルって何?な私にとってはベトナムの複雑な歴史を知るというきっかけを与えてくれる作品だと思いました。  さて、そんな私が本作を通じて思ったのは  「なんでもない平凡な私達には歴史がある」  ということです。  一見、ベトナムが大変で逃げてきた難民の話で、私には関係がないお話かと思えるかもしれませんが、読んでいてしきりに思ったのは、実は今を生きる、普通に生活をしている私がここにいるということは、月並みですが、物凄く奇跡なんだということです。  よくよく考えれば、私の祖父や祖母は第二次世界大戦を生き抜いているわけですし、ご先祖様は江戸時代の飢饉を生き抜いていたり、戦国時代を生き抜いていて、実は複雑な日本の歴史の中でも奇跡的に生き延びてきた人たちがいたから、今の私が存在しているだなと思いました。  これは、本作品が南ベトナムがベトナム戦争に負けて、国が統一されて、新体制から逃げてきたボートピープルである祖母視点を読んでいて思いました。  しかし、私はそんな自分のルーツをほとんど知らず、日本の歴史の流れだけ知ったまま何も考えず、普通に暮らしている本作品の母と変わらないんじゃないかと思いました。  本作品のこんぱるいろとはベトナム語で、我々の認識している青ではターコイズブルーのことを指すようです。  このこんぱるいろは作中の祖母の故郷であるニャチャンの海の色のことのようですが、この作品の題名『こんぱるいろ、彼方』とはニャチャンの海から彼方の日本を指すのか日本から祖母が思いを馳せるニャチャンの海を指すのか。  その答えはわからないですが、思い描くこんぱるいろは作中の3人の女性それぞれが同じ違う色を描くんだろうなと思いました。きっと私が思い描くこんぱるいろが彼女たちの思い描くこんぱるいろと違うように。

Posted byブクログ

2023/06/10

大好きな作家のひとり、このお話しもハズレなし。 ベトナム戦争、私が小学校を卒業する頃までやっていたということ、プラトゥーンやディアハンターなどたくさんの映画で描かれているように、ベトナムにとってもアメリカにとっても悲惨な歴史である事は何となくわかっていたが、実は何にも知らないとい...

大好きな作家のひとり、このお話しもハズレなし。 ベトナム戦争、私が小学校を卒業する頃までやっていたということ、プラトゥーンやディアハンターなどたくさんの映画で描かれているように、ベトナムにとってもアメリカにとっても悲惨な歴史である事は何となくわかっていたが、実は何にも知らないということがわかった。 登場人物ひとりひとりの言葉がとても重い。

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