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HHhH の商品レビュー

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2023/06/14

Himmlers Hirn heißt Heydrich. 訳:ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる。 タイトルは上記の単語の頭文字をとったもの。 ヒトラーが生み出したナチという思想を、そのまま具現化したかのような金髪の野獣、死刑執行人、ハイドリヒ。 ユダヤ人大虐殺の首謀者で...

Himmlers Hirn heißt Heydrich. 訳:ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる。 タイトルは上記の単語の頭文字をとったもの。 ヒトラーが生み出したナチという思想を、そのまま具現化したかのような金髪の野獣、死刑執行人、ハイドリヒ。 ユダヤ人大虐殺の首謀者である彼を暗殺すべくイギリスから飛んだチェコ人、スロヴァキア人の青年二人を主人公に据えた史実に基づく小説。 訳者あとがきに言いたいこと全てが書かれている。僕はその上澄みをここに貼り付けることしかできない。 いわゆる歴史モノ、ナチモノ、ノンフィクションモノである本書だが、他と一線を画するのはその小説スタイルだ。 脚色を排し、膨大な史実に裏付けされた出来事を忠実、誠実に、ともすれば偏執的に細部のディティールにまで拘り徹底した歴史を書く。 それだけでも確かに凄いことなのだが、 それだけでは小説ではなくただの年表になってしまうし、資料の書き写し、Wikipediaにしかならない。 とはいえ、膨大な裏付けをもってしても描ききれない出来事を想像により補填してしまえば、 それは歴史を歪めたフィクションになってしまう。 その歴史と小説、事実と脚色の間をせめぎ合う様さえ読者に詳らかに語るストイックで誠実なスタイルは、小説とは何か?という哲学さえ投げかけている。 結局著者が辿り着いた答えは、 リアルタイムにアップデートした歴史を断章によって掛け繋いでいき、まるで映画の副音声のように著者が俯瞰して語り、史実をインプットした上での考察、情景、登場人物のアウトプットを果たす。というスタイルだ。 そこには、その情報の確度や、別作品からの比較や、幅広い知見からの総合的判断が加わり、 その当時の悲惨さや時代背景や生活を見ることができ、 弱者が一矢報いる物語の歴史性を損なわずに話を展開していくという離れ業をやってのけている。 歴史小説という側面もあるが、本書が評価された理由は詩小説的で、純文学的で、歴史モノなのに日記のような私小説感のある読み味にあると思う。 誰かに入り込むのではなく、あくまで自分自身の視点で歴史を捉えるところに文学性が生じ、ノンフィクションノベルとしての新たなスタンダードになり得る小説なのかもしれない。 だからこれを著者自身が基礎小説と呼んだことに些かの疑問もない。 この小説は、あらゆる文学が貫いてきたスタンスのエッセンスを含んでおり、"われわれ"がそう在れと願った純真さと好奇心で読者を満足させることだろう。 第一部はほとんど敵であるハイドリヒやナチサイドの歴史話がほとんどで少し重い。 しかし第二部に入ってからはページを繰る手が止まらず、 ラストスパートへと怒涛の畳み掛けがある。 事実は小説よりも奇なりというより、 ありったけの事実を小説にすることの奇を見ることのほうがよっぽど稀だと思う。 42年のプラハの事を眼前にありありと浮かぶ体験。 その暗殺する曲がり角を、ヒトラーのヒステリーの鼻息を、ハイドリヒの傷口に入り込んだメルセデス車のシートの中の馬毛を、 ガブチークの楽天的態度も、クビシュの微笑みも、礼拝堂の地下も、蹄の音も、自転車も、服装も、戦争も、ユダヤ人も、、、 終盤のあの書き方は必見。 布石は序盤に撒き散らしてあるので、 何故作者がそこでそんな風に書いたのか、 そんなところを鑑みるのも一興。 効率度外視の無駄の極みこそ人間味で、 ひいてはそれが文学なのかもしれない。 おわり。

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2023/06/13

何度も映画化されている暗殺作戦をテーマにした小説。 独創的(たぶん)な構造の小説。 プーチンのウクライナ侵攻はヒトラーのやり口とそっくり。

Posted byブクログ

2023/05/25

歴史小説はどこまでが史実なのかいつも悩みながら読んでいたが、この書き方はそのボーダーラインが明確だったので悩まず読めた。

Posted byブクログ

2023/05/20

読書記録 2023.5 #HHhHープラハ、1942年 #ローラン・ビネ #読書好きな人と繋がりたい #読了 司馬遼太郎作品で、史実と創作の境目はどこなのかと考えたものだが、この作品はその比ではない。史実9割・創作1割か。 なのにこれほど劇的な物語が紡がれたことに驚くほかな...

読書記録 2023.5 #HHhHープラハ、1942年 #ローラン・ビネ #読書好きな人と繋がりたい #読了 司馬遼太郎作品で、史実と創作の境目はどこなのかと考えたものだが、この作品はその比ではない。史実9割・創作1割か。 なのにこれほど劇的な物語が紡がれたことに驚くほかない。 心理描写を入れず、記録映像を見るように、刻々、淡々と語られることで、読者は1942年5月27日の現場に居合わせたかのような錯覚を起こす。 ただ、ナチがチェコを併合する理屈が、現在ロシアのウクライナへのそれと同じで慄然とする。こちらは80年前の史実そのままの再現なのだ。

Posted byブクログ