ムラブリ の商品レビュー

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24件のお客様レビュー

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2023/10/03

文字も暦も持たないなんて日本人の自分には全く想像もできないことだが、自分のいる世界の当たり前が通じない世界があることを知る。 著者は言葉に興味を持ってその世界に飛び込んでいったが、言葉を学んでいくうちに身体性も変化していくということが、印象的だった。 言葉ができることがコミュ...

文字も暦も持たないなんて日本人の自分には全く想像もできないことだが、自分のいる世界の当たり前が通じない世界があることを知る。 著者は言葉に興味を持ってその世界に飛び込んでいったが、言葉を学んでいくうちに身体性も変化していくということが、印象的だった。 言葉ができることがコミュニケーションを取れるということではなく、その空間、世界を生きられることがコミュニケーションなのだと思う。

Posted byブクログ

2023/08/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

言語学者からの言語に関しての視点だけではない、もっと幅ひろい視点での考察が刺激的。 人の行動には何かしらの理由を求められることが社会ではしばしばあると私は感じている。その度に、えっとそれは…って理由を考えることがあるけど、人間の行動は、何かしら考えた上で実施しているのではなく、脳の無意識の深層の範囲で判断されたことが多く、意識下で判断していることは実はそう多くない。そして、何でそういう行動を取ったのかというと、それについてあとから意味づけされている、ということはよく言われている。 筆者も学生時代は失礼ながら、気の赴くままの判断で日々を過ごしていたようにもみえた。でもそこからの学者としてのスタンスがだんだんと形成されていく成長過程を、さらけ出して本にかけているところに物書きとしての才能を感じてしまう。 もともと突き詰めて考えることが筆者の性分からか、学者としての職も手放し、より研究に没頭できる立場を本執筆時期には選択している。このあたりの行動の早さも今後の展開に大いに期待してしまう。 ちなみに私はこの本を知ったきっかけは、筆者自身がとあるゆる言語系のユーチューブチャネルで対談されているのをみて興味を持った。まだ見ていない方は是非視聴頂きたい。

Posted byブクログ

2023/08/15

ゆる言語学ラジオで取り上げられていて知って手に取った本。 世界は広い。当たり前のことのようでなかなか日々の生活では実感しづらいこと。本は、そんな普遍的な事実を手っ取り早く咀嚼させてくれるツールとして最適だ。 この本は正に、“世界は広い”という何の新鮮味もない当たり前の事実を改め...

ゆる言語学ラジオで取り上げられていて知って手に取った本。 世界は広い。当たり前のことのようでなかなか日々の生活では実感しづらいこと。本は、そんな普遍的な事実を手っ取り早く咀嚼させてくれるツールとして最適だ。 この本は正に、“世界は広い”という何の新鮮味もない当たり前の事実を改めて腑に落ちさせてくれた。 文字も暦も持たない(ちなみに世界中の言語のうち約4割は文字を持たないらしい!)狩猟採集民の言語。言語には文化や価値観が現れることはこないだ読んだ「言語が違えば、世界も違って見えるわけ」にも書いてあった。こんなにも、狩猟採集民の言語は我々から見て特殊なのか。と同時に、彼らから見た我々の言語もとても特殊に映るんだろうな、と思うと興味深い。 特に印象的だったのは、ムラブリ語では「上は悪く、下は良い」らしい。これは世界のマジョリティの言語とは真逆のものの見方だ。心が動くことは良くないこと、平穏な状態が是であること、という見方が根底にあるらしい。狩猟採集民であることが関係しているのだろう、と筆者は述べている。また、年齢や数を数えることが重要でないというのも非常に新鮮だ。「今、ここ」を大事にする狩猟採集民だからこそ、抽象的な概念の必要性が薄いのだろう。幾何学的でない、有機的な世界。 この著者の書く文章は、淡々としているけど熱がある。静かなドラマチック。言語学の面白さ、言語学的な観点からのムラブリ語の面白さを素人にもとてもわかりやすく教えてくれる。 そして最も印象的だったのは、定住生活を始めたムラブリの中には自殺者も増えた、というエピソード。計画性が求められるようになり、「今、ここ」以外の未来や過去を考えるようになったせいだろうか。色々と考えさせられるエピソードだった。

Posted byブクログ

2023/08/02

言語学のフィールドワークのことがよくわかるよい本だが、それよりも何よりも、その上での本書(著者)の着地点に度肝を抜かれた。すごいな、この人。

Posted byブクログ

2023/07/20

ゆる言語学ラジオで伊藤先生の動画を見てこの本を手に取りました。 狩猟採集民の生活は、私たち日本人にはなかなかイメージしづらいものですが、ムラブリ語を通して垣間見えたような気がします。 ムラブリが「自由」を求めてこの生活スタイルに定着し、伊藤先生自身、ムラブリの体現として生きよ...

ゆる言語学ラジオで伊藤先生の動画を見てこの本を手に取りました。 狩猟採集民の生活は、私たち日本人にはなかなかイメージしづらいものですが、ムラブリ語を通して垣間見えたような気がします。 ムラブリが「自由」を求めてこの生活スタイルに定着し、伊藤先生自身、ムラブリの体現として生きようということで、ムラブリの生活スタイルが自分に合っていて、それを欲している現代人も多くいるはずだ、という論旨で書かれていらっしゃることは重々承知ですが、私個人的にはその中に寂しさ、儚さを感じてしまいました。 言葉を通じて自分の生き方についても考えさせられる良い本でした。

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2023/07/12

亜熱帯の狩猟採集民は、文字や暦の観念が希薄。それと比較して、農耕民族の言語における感情表現の多様性は同調圧力の強さの現れ。

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2023/07/02

文句なしに 面白い! 文字がないからこそ 豊饒な暮らしの文化が 見えてくる 文化人類学を専攻しておられる 何人もの研究者の方から よく聞かされる言葉のひとつ 文字をもってしまったから 豊かになったモノ 文字を持たなかったから 豊かさが保たれたモノ どちらが 良い悪いではなく...

文句なしに 面白い! 文字がないからこそ 豊饒な暮らしの文化が 見えてくる 文化人類学を専攻しておられる 何人もの研究者の方から よく聞かされる言葉のひとつ 文字をもってしまったから 豊かになったモノ 文字を持たなかったから 豊かさが保たれたモノ どちらが 良い悪いではなく いろいろ 考えさせられました

Posted byブクログ

2023/07/01

 『森の人』を意味するムラブリは、タイの山岳地帯に住む少数民族だ。文字を持たない彼らの言語を研究する著者の行動記録だ。  ムラブリに対しては興味深く、また著者の青春記として面白く読んでいたが、最終章で詰まらんものを読んでしまった感に襲われる。彼の通った学校も、診察を受けた病院も...

 『森の人』を意味するムラブリは、タイの山岳地帯に住む少数民族だ。文字を持たない彼らの言語を研究する著者の行動記録だ。  ムラブリに対しては興味深く、また著者の青春記として面白く読んでいたが、最終章で詰まらんものを読んでしまった感に襲われる。彼の通った学校も、診察を受けた病院も、捨てたごみの処理も、し尿の処理もほとんどのインフラ設備は税金を基にしているのになぁ。彼の思うように生きれば良いんだが、こんな形で声高にムラブリ研究の結果として言われてもなぁ。  残念感満々の読後感だった。

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2023/07/01

タイに住む狩猟採集民ムラブリの言語について研究した著者がその研究過程や村で自分が感じたことをまとめた書籍。相当頑張られて研究されたと思うが、この時点でどのような表現を用いたとしても(ムラブリとして研究すると著者は言われる)、タイに在住するムラブリの方に関する研究を辞めるのなら最初...

タイに住む狩猟採集民ムラブリの言語について研究した著者がその研究過程や村で自分が感じたことをまとめた書籍。相当頑張られて研究されたと思うが、この時点でどのような表現を用いたとしても(ムラブリとして研究すると著者は言われる)、タイに在住するムラブリの方に関する研究を辞めるのなら最初からそっとしてあげたら良いのでは、と思った。タイのムラブリに触れて自分の方向性を見つけていくのもその人にとっては有意義なことだけど、生きている場所が異なるだけで生態や言語の研究対象とされるのはこちら側のエゴかなと思う。

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2023/06/10

ゆる言語学ラジオで興味があったコチラ、先日図書館の新刊コーナーでたまたま見つけて手に取った。 「ピダハン」やら、最近読んだ「銃 病原菌 鉄」からも強く感じていたけれど、 言語の話は面白い。 狩猟採集民の話も面白い。 昨年まで全然興味なかったけど、 フィールドワークってのがまた面...

ゆる言語学ラジオで興味があったコチラ、先日図書館の新刊コーナーでたまたま見つけて手に取った。 「ピダハン」やら、最近読んだ「銃 病原菌 鉄」からも強く感じていたけれど、 言語の話は面白い。 狩猟採集民の話も面白い。 昨年まで全然興味なかったけど、 フィールドワークってのがまた面白い。 確かにこの分野はハマるとかなり深い沼だろう。(ゾミアも読んでみたい) こちらの作品、 サブタイトルにもあるように、 文字も暦ももたない狩猟採集民であるムラブリとの関わりで得た言語学者である筆者の変遷を、 学部生時代から遡り現地でのフィールドワークを軸にして描かれている。 第一章の学部生時代にはじめて訪れたムラブリの村での失敗談から、 最終章、作者自身がムラブリの身体性を獲得して自由に生きることの意味を見出すところまで、するする進むのに、 内容は全章みっちり詰まっていて読み応えがあった。 とりあえずは作者のムラブリ語、ひいてはムラブリの人々への敬愛がすごい。 そして言語学者だからなのかどうかわからないけれど、文章がすこぶる上手い。 かなり専門的な分野だし、複雑に混み行った状況であったりする場面もシンプルにわかりやすく、しかも面白く書かれていて、ストレスフリーで読める。 ゆる言語学ラジオでの補足はあったけど、今まで読んだ言語を扱っている本の中でもダントツに読みやすかった。 わたしの中に無意識にあった狩猟採集民のイメージも、ここ何ヶ月かの読書やPodcastなんかのおかげでずいぶん変化していたけど、こちらの本でもその変化がより補強された感じ。 かと言え、自分は狩猟採集民の生活を選ばないし、そもそも選べないとも思う。 作者のたどり着いた「自由」に、 まあそんな考えや感じ方もあるのだろうと理解はできるが、自分事としては考えうる不便さを脇に置いて手に入れたいとはまったく思わない。 現代日本での適応力が人並みにはあるので、その部分はある意味で恵まれているのかな。 しかし新しく言語を身につけることで、新しい身体性を獲得するという部分については凄くやってみたい。 面倒くさがりで怠け者なので、自分が今さら新しい語学を身につけるイメージは全然できないけど、(やるとしたら英語の学び直しくらいだろう) 複数の言葉を話せる人について(その努力を棚に上げて)より羨ましいと思うようになった。 それにしてもムラブリ語。 少し聞いてみたけど、響きが本当に綺麗だな。 作者の敬愛やまない表現に引っ張られてる感も否めないけど、確かに消えていくのはもったいない言語だと思った。 本棚制限があるから迷ってたけど、 やっぱりコレはそのうち購入しよう。

Posted byブクログ