パリの砂漠、東京の蜃気楼 の商品レビュー
クラスが一緒になっても、多分友達にはなれないタイプだな〜、と読んでいて思う。なのに、金原さんの生み出すいくつもの美しい文言が、心の深い部分に優しく届いた。こんなにも命を削って書いてくれた事に敬意しかない。今、このタイミングで出会えて幸せだった一冊。きっとこれからも、何度も読み返す...
クラスが一緒になっても、多分友達にはなれないタイプだな〜、と読んでいて思う。なのに、金原さんの生み出すいくつもの美しい文言が、心の深い部分に優しく届いた。こんなにも命を削って書いてくれた事に敬意しかない。今、このタイミングで出会えて幸せだった一冊。きっとこれからも、何度も読み返す。
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※このレビューにはネタバレを含みます
薄い本だけど、内容はぎっちりと濃厚。いつも思うのだが金原ひとみの文章は1文字たりとも見逃したくない、と思えるもので、普段ならサクサクと足早に読み進める私だけどこの本はじっくり時間をかけて読んだ。 こんなにも自分と似ていると思った作家さんは初めてで、エッセイ的な本書を読んでよりそれを強く感じた。根本的に自分は害悪なのだ、という染みついた価値観から離れられず摂食障害や鬱に陥るさまが自分を見ているかのようだった。私は恋愛体質ではないので、この本のすべてに一致するわけではないが、それでもおおよその価値観や感受性が自分と似ていると感じるのがとてつもなく嬉しい。 この本を読めば、私はいつでも孤独から少しは逃れられる気がする。救われました。読んで本当によかった。
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作者の感受性が豊かすぎると共に、かなりの逞しさを感じる。 これだけ、生きるのが苦しい、誰かを傷つけながら生きていくこと、そして自分が生きるのが辛いということを(本心なのかは分からないが)言語化しながら、子供2人育ててパリに渡り東京に戻り、それでも生きていく作者、逞しすぎるのでは...
作者の感受性が豊かすぎると共に、かなりの逞しさを感じる。 これだけ、生きるのが苦しい、誰かを傷つけながら生きていくこと、そして自分が生きるのが辛いということを(本心なのかは分からないが)言語化しながら、子供2人育ててパリに渡り東京に戻り、それでも生きていく作者、逞しすぎるのではないか。 作者の感受性の元と考えられるのが、パリ編のp72にあるような、誰かに傷つけられ、誰かを傷つけてしか生きていけないような世界への絶望なんじゃないかと考える。自分は、誰かに傷つけられることに対しては、確かに敏感だが、逆に誰かを傷つけることに対しては鈍感だと考えている。(というか、誰かを傷つけることができないと思っている、それほどまでに無力な存在だと思っている。)作者は、自分の一挙手一投足に対してこれほどまでに敏感であるからこそ、ここまでの文章表現ができるのだろうなと考える。 普通、自分の行動が誰かを傷つけてしまっているのではないか、ということまで考え出したら、思うことがありすぎてキャパオーバーになってしまうのではないか。それをここまで考えつつ文章に落とし込む筆者に、なんというか、感嘆する。 ただ、作者の「誰かを傷つけてしまう」という思いには、自分はある種の傲慢さを感じた。自分の言葉が誰かを傷つけるという自信があるからこそ、そう思ってしまうのだろうなと。その一端は、東京編の147からのくだりに顕著に現れている。今の環境に甘んじて、筆者からしたら「満足のいく」結婚生活に見えないカップルに対して、ちゃんと話し合えと諭し、「あんた真面目やな」といなされて激昂する作者。これは、作者の自分の考えが絶対である、という傲慢さが垣間見得た気がする。そうした結婚生活を送るカップルだってあるし、あくまでその方が楽なのだろう、ある意味諦念でなりたっているのだろう、と、自分は理解したのだが、そこに対してくってかかる作者の気持ちは理解しかねた。 解説においては、筆者のここまでの自己否定を以下のように評している 「過剰な自己否定は、普通ならよほど諧謔の型を踏まえなければ、読者を鼻白ませずにはいないはずである。」 →でもなんでこの文章だとそうならないのか?→極端な自己省察。どこか理知的な文章表現がそうしている。 とのこと。 確かにそうだなとは思う。ただ、自分がこの感覚を引かずに読めたのは、詳細な自己洞察もあるが、酒を飲む描写がそうさせているような気がする。正常な思考というよりも、振り切ってるんだろうな思って読んだ。 あと、ところどころに出てくる男性批判。解説では、 「何故自分は、これほどおかしな世界で、壊れることもなく、生きていけるようになったのだろうか?一つの理由は、私がやはり、男性だからだろう。」と評されている。 →それはそうだろうと、思う。住んでる世界は違う。でも、それを言われると、男性読者としては何も言えなくなってしまうし、そう捉えないでほしい。だからこそ、その後の「とは言え、作者は決して主人公の苦悩を、男性/男性中心社会からの暴力のみ帰することはない」という評価が、楽にしてくれた。
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パリと東京を股に掛け書かれた、エッセイという名の私小説。 おそろしい本だった。 この本には希死念慮そのものが描かれている。心の弱っている人が読めば、希死念慮に連れて行かれるだろう。 テロが身近な為、むしろ自らと死の間に距離を置けるパリ。パリに比べれば平和な為、ぼんやりとした死が...
パリと東京を股に掛け書かれた、エッセイという名の私小説。 おそろしい本だった。 この本には希死念慮そのものが描かれている。心の弱っている人が読めば、希死念慮に連れて行かれるだろう。 テロが身近な為、むしろ自らと死の間に距離を置けるパリ。パリに比べれば平和な為、ぼんやりとした死が自らに迫り来る東京。 この本を読んでいる間、どちらにも住んでいない私はどちらの風景にも紛れていた。死が目の前に在った。 おそろしい本だった。 子供や友人の何気無い描写、また、好きな音楽のくだりに救いがあって良かったと心から思う。 心身共に余裕のある時だけ読む事をおすすめする。 著者が好きな音楽を好きなだけ聞いて、心身をゆっくり休める事が出来たらと願わずにはいられなかった。 私は初めて金原ひとみ作品を読んだ。彼女は文章が巧い。
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人はよく、パリを目指す。私が知っているのは芸能人や小説家といった有名人だけだけれど。 昔には芸術家が憧れてパリを目指したが、現代の有名人たちがパリを目指すのは、いい塩梅に放っておいてくれるから?だろうか。 アメリカ以上に人種の坩堝らしいから、木を隠すなら森、なのかもしれない。 勝...
人はよく、パリを目指す。私が知っているのは芸能人や小説家といった有名人だけだけれど。 昔には芸術家が憧れてパリを目指したが、現代の有名人たちがパリを目指すのは、いい塩梅に放っておいてくれるから?だろうか。 アメリカ以上に人種の坩堝らしいから、木を隠すなら森、なのかもしれない。 勝手に想像するも、やはり一人一人にそれぞれの考えはあると思う。 耳以外のところにピアスをしている人は、個人的にちょっと怖いな・・・ と思って読み始めたら、金原さんはふるえている小鳥のようだった。 文章は、感情の粒子が細かくて、なめらかな手触り。 「パリ(編)」と「東京(編)」に分かれている。 パリ編には、エトランゼの哀しみを感じる 文章は日本語で書かれているのだから、パリで書こうが東京で書こうが変わりはないと思われるが、パリ編での文章は、言語的な不自由さを初め、「伝わらない」ことに絶望している。 東京に戻ると、そういう、薄い被膜のようなものが剥がれて、自分を取り囲む状況にはっきりものを言っている感じがする。 (はっきりものを言ったとて、伝わらないことは伝わらないのだが) 6年、異国に住んで戻ってきたら、彼の国とこの国の違いを感じることも多いだろう。 日本の男は未だ昭和のおっちゃんのように無礼でセクハラ体質である。 フランスの店員は押しなべて接客が雑で、客に対してイラっとすれば態度に出るし、女性店員はすぐヒステリックになる人も少なくない。 その点、日本の女性店員の接客は、そこまでしなくてもと思うほどしつこく丁寧で、その理由を考えた時、理不尽に悪意をぶつけてくる男の客と極力摩擦を起こさないように最新の注意を払っているのだろうと思った。 (この文章が書かれた当時「カスハラ」の言葉はまだない) 自覚:自分は恋愛体質である 相手を傷つけることを極端に恐れている。メールやLINEの返信も、これは相手がどう受け取るだろうかと、何度も書いたり消したりする(自分も同じなので、シンパシイを感じる) なぜか自己肯定感が異常に低く、というか、「生まれてすみません」といつも感じているらしい。 だから、自分を見てくれる、肯定してもらえる恋愛に縋ってしまうというのだ。 恋愛をして、小説を書くことでしか生きられないという。 よく読めば、きちんと日常生活を送っているのだが、どうも、カスミを食って生きているような儚い感じが拭えない。
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私と彼女は違う。のに、すごくわかる。私もいつもうっすらと自己の存在を否定しており、世界の色々に傷つき、怯えている。きっとどうしたってその感覚がなくなることはないこともわかっている。から、最後の一文にとても心を打たれた。 しかし一番の感想は、文章が上手い!なんとなく小説は合わないよ...
私と彼女は違う。のに、すごくわかる。私もいつもうっすらと自己の存在を否定しており、世界の色々に傷つき、怯えている。きっとどうしたってその感覚がなくなることはないこともわかっている。から、最後の一文にとても心を打たれた。 しかし一番の感想は、文章が上手い!なんとなく小説は合わないような気がして避けていたが、読んでみようかな。
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再読。今読んだら結構持ってかれるなと思って軽く読んだ。 やっぱり東京編の『おにぎり』が一番好き。 P.108 耐え難い動画を観た時、こんな奴ら死ねばいいではなく、こういう奴らは滅びろではなく、なぜ自分が死にたいと思うのだろう。 めちゃくちゃわかる。私も傷つけられた側だとしても...
再読。今読んだら結構持ってかれるなと思って軽く読んだ。 やっぱり東京編の『おにぎり』が一番好き。 P.108 耐え難い動画を観た時、こんな奴ら死ねばいいではなく、こういう奴らは滅びろではなく、なぜ自分が死にたいと思うのだろう。 めちゃくちゃわかる。私も傷つけられた側だとしても、相手を恨むのではなくそんなことに傷つく自分情けねーって悲しくなって、死にたくなる。 パリ編の『ピュトゥ』も好き。小説でもエッセイでも、金原さんの書く傷つく描写が好きなのかもしれない。 アッシュベイビーを読んだ時にも感じたことだが、好きな人に殺されたいという気持ちも分かる気がする。実際に私は今好きな人がいないし、仮に居たとしてもその人に犯罪者になって欲しいわけではないのにどうせ死ぬなら好きな人に首絞められて死にたい。めちゃくちゃ我儘。
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これは自分の読むタイミングでも かなり感じ方が違うのではと思わせてくれる。 調子が良い時に読むと なんでここまで…という部分が目立つし 調子が悪くてネガキャン中は わかりすぎて一つ一つが心に刺さるのだろう。
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もともとエッセイあんまり得意でないので だからどーしたと思ってしまう。 異文化に身をおくからこそ分かるものが あるのかなぁ。
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金原さんが代弁してくれたから、言わなくて済んだ言葉がたくさんあった。 読了したら付箋がたくさんになり、その一文一文が[私はどうか?]を考えさせてくれた。 ノートに考えをまとめていく作業がこんなに心地よいデトックスになる本は初めてだった! 誰かと意見を交換し合いたい、そんな大事な本...
金原さんが代弁してくれたから、言わなくて済んだ言葉がたくさんあった。 読了したら付箋がたくさんになり、その一文一文が[私はどうか?]を考えさせてくれた。 ノートに考えをまとめていく作業がこんなに心地よいデトックスになる本は初めてだった! 誰かと意見を交換し合いたい、そんな大事な本になりました。 これを超える本は2024年内には多分現れない。
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