増えるものたちの進化生物学 の商品レビュー
章ごとにまとめると次のように.. 原始地球で生まれた「増えて遺伝するもの」が進化していった果てが人間を含む生物。その本質は①増えること②形質を次世代に伝えること③ただし変異をすること。①②③を繰り返しながら「増える」ことに有利なものが生き残り、変異の蓄積が進化。 増えるための...
章ごとにまとめると次のように.. 原始地球で生まれた「増えて遺伝するもの」が進化していった果てが人間を含む生物。その本質は①増えること②形質を次世代に伝えること③ただし変異をすること。①②③を繰り返しながら「増える」ことに有利なものが生き残り、変異の蓄積が進化。 増えるための作戦として「多産多死」(細菌やアメーバ)と「少産少死」(多細胞生物から人間)があり、「少産少死」派の成功の末に人間がある。少産少死では繁殖できるまで時間がかかるので「命」を守ること(=長命)が必要。ただし、本来は繁殖できなくなったら死んでいたが、さまざまな要素で死ななくなりますます少産少死が進行。 社会性の獲得、利他性もまた「少産少死」で「増えて遺伝する」ことの推進にかなう。 性があることは、有性生殖による遺伝子混交が変異機会を増やしてきた。 「幸せ」とは「増えて遺伝する」ための鼻先のニンジン。伴侶を得たり子を得たりしたときの幸福感もまた進化の目的にかなうものであり、幸福感が長続きしないのも同じ理屈で説明できる(増えるしくみとしての幸福感)。 「幸せになるために生きている」のでは当然なくて、「増えて遺伝するものの存在に目的や使命はない」→すべては「増えて遺伝する」という物理現象の結果であり過程でしかない。 ではどうやって生き続けるのか・・「生きることに目的や使命はないが価値と生きがいはある。」学問や芸術や文化は「増えて遺伝する」ことには直接役にはたたないが「生きがい」をもたらす。 という具合で、すべてを「増えて遺伝する」ことへの合目的性でとらえなおすことで、長寿、男女の愛、幸福感、生きがいなども理解可能。かなり牽強付会なところもあるが、真実はこのように単純なのかもしれない。 「すべてを増殖と進化への合目的性というコテコテの唯物論で解説できる」というわかりやすいだけに胡散臭さもある。戸田山和久の「哲学入門」に近い立場。 一方で、必要以上の長寿、行き過ぎた少子化などは「増えて遺伝する」という根本原理からすでに逸脱しつつあるとも言えるのでは?まあ、現代日本の有様が一時的なゆらぎでありガラガラポンの大災害や大戦争でまたもとの「増えて遺伝する」社会にもどるのかもしれないが。
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物理現象としての生物の進化と人間の生き方のつながりを明解に解説している。 多くの人は、一度はなぜ生きているのか煩悶したことがあると思う。 筆者は上記悩みに対して、研究を通じて得られた「生命という現象や人間の抱く悩みの多くは、増えて遺伝するものの末裔には必然的に生じるもの」とい...
物理現象としての生物の進化と人間の生き方のつながりを明解に解説している。 多くの人は、一度はなぜ生きているのか煩悶したことがあると思う。 筆者は上記悩みに対して、研究を通じて得られた「生命という現象や人間の抱く悩みの多くは、増えて遺伝するものの末裔には必然的に生じるもの」という見解や「人間が生きていることには目的や使命がないが、価値と生きがいはある」という主張を提示する。 上記のような見解は成人は受け入れられると思うが、筆者の提示する価値と生きがいはある程度の知的余裕、成熟が必要だと思う。
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※このレビューにはネタバレを含みます
結局ミームになるってどうなんだろう。概念で生物の本能を越えられるのがヒト、というけれど。平等概念がどこまで行くのかもそれなりにどうなんだろうと思う。
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増殖するという特性に着目した生物の進化について 自己を複製する物理現象こそが生物の本質 増えるために有利な形質が遺伝的に残る というのはまぁ理解できる 増える戦略の多産多死と少産少死の軸 少産少死だからこそ命が大事になる 他者も含めて命を奪わないという方向へのシフト ヒトの場...
増殖するという特性に着目した生物の進化について 自己を複製する物理現象こそが生物の本質 増えるために有利な形質が遺伝的に残る というのはまぁ理解できる 増える戦略の多産多死と少産少死の軸 少産少死だからこそ命が大事になる 他者も含めて命を奪わないという方向へのシフト ヒトの場合、他者との関わりにより社会全体の生存率を上げるという戦略が発達している 食料も人工物が増えるという予測 増えるという意味では枷になる性別の意義 多様性を生み出すため 個で発生した形質を次世代に残せる 環境の変化に集団として適応しやすい 遺伝子だけでなく、ミームという概念 生きる意味とは? 生物学的に間違ってはいないんだけど、ところどころツッコミを入れたくなる 包括適応度の視点で語られている部分がないな 社会性云々を言い出すなら、その辺の概念は必要だと思う そもそも本能なんてものはあるのか? 後天的な行動と遺伝子に由来する先天的な形質をごっちゃにして語っている 途中までは、ミームを無視しているなぁと思って読んでいたら、最後に言い訳的に出てきた ヒトの場合、環境の変化に対して遺伝的な形質の変化による適応ではなく、ミームにより社会全体、もしくは一部の集団を生かすという戦略にシフトしたのだと個人的には思う 社会的に地位の高い個体、例えば権力やお金を持っているといった個体の方が生存率も包括適応度も高い社会なのではなかろうか? 特に現代日本では 極めて少産少死の社会が出来上がった場合、その中の多産戦略をとった個体の割合が増える場合がある 昔は貧乏子沢山と言われたような現象が起こったけど、今や貧乏は子供を持てない時代になりましたねぇ あと、ツッコミを入れたいところとしては 同族同種の生物でも殺し合いが起こる事はある ハト派集団の中のタカ派個体は排除されなければいけない ハト派、タカ派を決定づける因子は遺伝なのかミームなのかという問題は判断が分かれるところだけど 同質の社会性で生き残っている集団としては、同じ戦略を取れない個体は、遺伝的要因だろうとミームだろうと受け入れてはいけない 多分、こんなところが小規模ではいじめ、大規模では民族や宗教間の問題になってるんだよなぁ
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地球上の生命は増えて進化してきた。『やさしさ』を持つヒトが牛や豚などの食肉を止めるようになることや、ヒトの生殖も変わっていく可能性が高いことなど記されていた。
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悩める10代の若者たちに思い悩むことが当然と肯定し、力づけてくれつつ、さらに生物の進化の面白さについて解説してくれる1冊で2度美味しい本。もちろん50歳を越えて未だ達観に至らない中年にとっても興味深い良書。
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生命と非生命とを分けるものを「増える」ことというポイントから説明していく。とっても分かりやすい説明。物理現象としての細胞分裂からなぜ生きているのか、何のために生きているのかまでを考察する。 ヒトの生存戦略は狩猟採集時代を基本に組み立てられているのだそうな。不安定だった食料確保に対...
生命と非生命とを分けるものを「増える」ことというポイントから説明していく。とっても分かりやすい説明。物理現象としての細胞分裂からなぜ生きているのか、何のために生きているのかまでを考察する。 ヒトの生存戦略は狩猟採集時代を基本に組み立てられているのだそうな。不安定だった食料確保に対応するためのものだ。 で、少子化が取り沙汰される現在から未来を考える時、新たな生存戦略を求めて進化の階段を上がることはあるのかなぁ。
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『サピエンス全史』や『銃・病原菌・鉄』も面白かったけどやっぱりちょっと難しくて、これは読みやすくて面白かった。 なぜ生きてるのか なぜ死にたくないのか 宗教やスピリチュアルな言葉じゃなく 生物学の視点で書かれてる。 狩猟採集社会の時代からたった1万年程度では、私たちの身体や脳...
『サピエンス全史』や『銃・病原菌・鉄』も面白かったけどやっぱりちょっと難しくて、これは読みやすくて面白かった。 なぜ生きてるのか なぜ死にたくないのか 宗教やスピリチュアルな言葉じゃなく 生物学の視点で書かれてる。 狩猟採集社会の時代からたった1万年程度では、私たちの身体や脳のつくりを現代型にするのはあまりに短いらしい。 性別の枠にこだわり過ぎるのは人間だけか。 自分って結構狩猟採集民よりの性格かも。 進化に追いつかないのは自分だけじゃない。 なんて身近な物事が客観的に見えてきてすごく面白い。 面白いついでに心も何だか軽くなる。
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