東京、はじまる の商品レビュー
辰野金吾のイギリス留学からの帰国後から日本銀行本店と東京駅の設計建築までの生涯を描いた一冊。 辰野金吾という名前は知っていましたが、初めて人物像を知ることができました。 明治維新で江戸時代の名残が残る時代。 西洋に追いつけ追い越せと日本が大変貌を遂げた時代。 師匠のイギリス...
辰野金吾のイギリス留学からの帰国後から日本銀行本店と東京駅の設計建築までの生涯を描いた一冊。 辰野金吾という名前は知っていましたが、初めて人物像を知ることができました。 明治維新で江戸時代の名残が残る時代。 西洋に追いつけ追い越せと日本が大変貌を遂げた時代。 師匠のイギリス人のコンドルと日本銀行の設計を巡り、時の総理の伊藤博文への直談判した時の師弟対決。 その師弟対決を超えて、友情を死ぬまで持ち続けてきた二人の絆。コンドル先生の懐の大きさがあったからこその辰野金吾がいたのですね。 妻の秀子の献身ぶりや、苦楽をともにした曽禰達蔵の身分を超えた友情。高橋是清との接点。 偉人は偉人を呼ぶですかね。 死の間際に梅太郎の言った「お義父さん。このおちょこは、今度は別のものを飲むのに使いたいですね」が涙を誘いました。 「人が仕事を選ぶのでなく、国が人を選ぶのである」 仕事の本質をつくハットする言葉な気がします。 最後の方は名言ばかりですが、辰野金吾や当時の偉人たちが今の日本を見て、何を思うのでしょうね。
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日本近代建築の父と言われる辰野金吾の物語 日銀や東京駅の建設を担い、東京の街づくりに貢献された方 恩師であるコンドル先生とのやり取りや周囲の達蔵さんとのやり取りに面白さを感じた。 多くの政界人物との関わり合いも触れられていて、ロマンを抱いた
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偶々出くわして、大変に愉しく読んだ小説だ。明治期から大正期を背景にした物語ということになる。素早く読了に至った。 本作は、日本橋の日本銀行本店や東京駅の建物を手掛けた建築家、辰野金吾の物語ということになる。 記憶が確かなら、日本橋辺りに三越前駅という地下鉄の駅が在り、その辺りに日...
偶々出くわして、大変に愉しく読んだ小説だ。明治期から大正期を背景にした物語ということになる。素早く読了に至った。 本作は、日本橋の日本銀行本店や東京駅の建物を手掛けた建築家、辰野金吾の物語ということになる。 記憶が確かなら、日本橋辺りに三越前駅という地下鉄の駅が在り、その辺りに日本銀行の本店が在った。本店の建物そのものではなく、近くに日本の通貨の歴史が判る、古い貨幣のコレクションを展示している日本銀行関係の資料館が在って、立寄ったことが在ったような気がする。その建物の建設に辰野金吾が携わっている。 そして東京駅は、戦災等で傷んでしまった後に修復した状態で長く使用されていたが、創建時の様子を再現するとして工事が行われ、現在ではその創建時の姿になっている建物が見事なのだが、その創建時に建設を手掛けたのが辰野金吾であるという。 こういう、或る程度広く知られた建物を手掛けた人物の物語ということで、日本銀行の件や、東京駅の件は物語の重要な柱ともなっている。 物語は、辰野金吾が英国留学から帰国したという辺りから起こる。横浜港に下立つと、友人や妻が迎えに来ていたというようなことになる。英国帰りの辰野金吾は、未だ江戸の面影が色濃く残る東京について、「東京そのものを建てるのだ」と意気込む。 物語は主に辰野金吾の目線で綴られる。が、時に同郷の友人である曾禰達蔵(そねたつぞう)の回顧や、終盤には息子の辰野隆(たつのゆたか)の目線の部分も在る。英国帰りの辰野金吾が色々な事に取組もうとする様子と並行し、戊辰戦争位の頃に10代後半辺りだった世代ということになる辰野金吾や曾禰達蔵の来し方が振り返られる部分を交えて展開する。辰野金吾が何を目指したか、如何してそう考えたか、そして日本銀行や東京駅という、当時の「空前の大建築」に取組む様子が描かれる。そして最晩年の様子へ進む。 偶々なのだが、比較的近年に東京駅の建物を眺める機会が何度か在った。そんなことも在って、辰野金吾が当時の“大計画”に邁進した様を、本作に描写される往時の辺りの様子を想像しながら大変に興味深く読んだ。少し夢中になってしまう雰囲気が溢れる作品だ。 読後の余韻に浸りながら、少し思った。辰野金吾が近年の東京を観たら、如何いうような感想を漏らすであろうかというようなことをだ。本作はとにかく愉しかった。
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【日銀、東京駅…近代日本を建てた男の一代記!】下級武士出身で学問に励み、列強と日本の差に焦り、恩師コンドルから日銀を横取り!江戸を壊し東京を建てた建築家・辰野金吾とは。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
明治期に日銀や東京駅を設計し、近代建築の祖となった辰野金吾の物語。巻末に自ら史実に基づくフィクションと書いてあるから物語なのだろうが、参考文献の記載がないのはなぜなのか。実在の人物を描いているにも関わらず、出版社が参考文献なしをよしとする基準はどこなのだろう。高橋是清が意外(私が知らなかっただけなのですが)な役割を演じていて、興味深かった。この作品と無関係だが、明治期の血気盛んな人物を描くと、なぜかみんな漱石の『坊ちゃん』に似るのは気のせいか。日銀といい、東京駅といい、新しい工法をその都度試していく先駆者の心意気には感服する。
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