どうする財源 貨幣論で読み解く税と財政の仕組み の商品レビュー
『どうする財源』が暴く、日本財政の不合理と財務省の罪 戦後日本の財政運営をめぐる“常識”が、いかにして国の未来を縛り、衰退を招いてきたのか――。中野剛志氏の著書『どうする財源――貨幣論で読み解く税と財政の仕組み』は、その根本原因として、財務省による財政規律信仰と、それを無批判に...
『どうする財源』が暴く、日本財政の不合理と財務省の罪 戦後日本の財政運営をめぐる“常識”が、いかにして国の未来を縛り、衰退を招いてきたのか――。中野剛志氏の著書『どうする財源――貨幣論で読み解く税と財政の仕組み』は、その根本原因として、財務省による財政規律信仰と、それを無批判に受け入れてきた日本社会の病理を鋭く告発する一冊である。 著者が最も強調するのは、「貨幣とは負債である」という事実に立脚した、現代貨幣理論(MMT)的視点だ。政府が支出すれば、民間の預金が増える。つまり、財政赤字とは、民間の黒字なのだ。こうした貨幣の本質を無視し、「赤字は悪、黒字は善」とする財務省の均衡財政論は、前近代の領主の家計簿的発想にすぎないと、著者は喝破する。 実際、日本は1997年から2017年にかけて、先進国の中で唯一、ほとんど財政支出を増やさなかった国である。成長を放棄したも同然のこの姿勢こそ、失われた30年を招いた元凶ではないか。アメリカや欧州諸国が、インフラ投資や社会保障の拡充に国家予算を投じ続けたのに対し、日本だけが「財政再建」の名のもとに縮小均衡を選び続けた。その裏にあるのが、財務省主導の「財政法第四条」の解釈であり、国債発行への過剰なアレルギーだ。 しかもその「健全財政」の理念には、皮肉にも戦後の“戦争放棄”の精神が潜んでいるという。赤字=戦争の道と結びつける論理は、あまりに感情的で非合理的であり、経済政策においてはむしろ有害ですらある。朝日新聞などが国債発行を「戦争への道」と結びつける報道を続けるのも、まさにこの思想の延長線上にある。 中野氏はまた、日銀が政府に支払われた利子を最終的に国庫に納付しているという仕組みにも注目する。つまり、国債の金利負担は「国の借金」としても、実質的には政府内で完結する循環であり、「国民へのツケ」では決してない。さらに、バーゼル規制においても、自国通貨建ての国債は信用リスクゼロと見なされているにも関わらず、国内では未だに「国債暴落」「財政破綻」の危機が煽られ続けている。 著者はこうした現状を、機能的財政(Functional Finance)への理解不足として批判する。財政は予算制約ではなく、「実物資源」(人手、技術、設備など)の制約によって運営されるべきなのだ。つまり、インフレ率や供給能力こそが財政運営の基準であり、単なる収支バランスに縛られる必要はない。 こうした視点に立てば、日本の防衛費が20年以上ほぼ横ばいであること、中国がその間に軍事費を5倍に拡大したことが、いかに異常であったかが分かる。国民の命と安全を守る防衛すら、「財源がない」という空虚な言い訳で先送りされてきたのだ。 総評:財務省主導の国家縮小路線にNOを 『どうする財源』は、単なる経済書ではない。これは、国家のかたちと未来のビジョンを問う、極めて政治的な書物である。そして、その矛先は、何よりも財務省という「見えざる支配者」に向けられている。 “破滅するまでバラマキを続ける!?”などという論法で、あらゆる財政出動を封じる財務省のプロパガンダは、もはや論理ではなくイデオロギーである。真に必要なのは、「国債=借金」という刷り込みから脱し、財政を通じて国民の豊かさと安全をどう守るか、という現実的な議論であろう。 中野剛志氏の本書は、その出発点を我々に提供してくれる。 いまこそ、財務省の“財政神話”に冷静なメスを入れる時である。
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循環貨幣理論と現代貨幣理論。政府はお金をいくらでも生み出せる。政府が支出しなければ貨幣も生まれない。支出が先で、税収は後。税金は財源ではない。財政赤字はむしろ正常な状態。政府の支出に資金制約はない。ヒトとモノの実物資源が制約だ。いくらお金があったとしても、物理的存在量には限りがある。財政破綻など起きない。やってくるのはデフレ継続の供給能力破壊。需要に対する供給の好循環。それが築けるかが問題なのだ。お金は機動的に使うもの。知らぬは大罪。理解しようとしないのは極悪人。失われた30年。いくつの命が失われたことか
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貨幣論について非常に勉強になりました。 お気に入りの一冊です。 ただ、世間の通説(?)に囚われてるような人が読むとセンメルヴェイス反射的にアレルギー反応を起こしちゃうかもしれない。
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自分がこれまでに得た、金融や財政に関する知見とはまったく異なる視点で書かれているため、違和感しか残りませんでした。 マクロ経済学における前提やビジネスにおけるお金の動き方をまったく無視しているようにしか見えず、その点が、違和感の理由だと思います。 この本の内容については、自分の...
自分がこれまでに得た、金融や財政に関する知見とはまったく異なる視点で書かれているため、違和感しか残りませんでした。 マクロ経済学における前提やビジネスにおけるお金の動き方をまったく無視しているようにしか見えず、その点が、違和感の理由だと思います。 この本の内容については、自分の理解が足りないだけかもしれませんが、「貨幣破壊」という概念には、ものすごく違和感がありますし、マネタリーベースやマネーストックに関する記述がほとんどない点も気になりました。 また、述べられている内容のほとんどは国内の話であり、国際的なお金のやりとりにはほとんど触れられていない点にも違和感がありました。 全体的に、「ある種の(特殊な)仮定の下であれば成り立ち得る机上の空論」という印象が強く、現実を説明しているようには、とても思えません。 が、自分がMMT(現代貨幣理論)を理解していないだけかもしれないので、まずはMMTの基本から学びたいと思います。
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中野剛志氏の著書は結構読んでいるが、今回もシニカルかつ的確な分析が光っている。 ここ最近積極財政か緊縮財政どちらが相応しいかがメディアで議論されるようになった。日本がやっとこのような状況になったのも、10年以上前から様々なメディアで経済について語っていた著者の功績もあると私は思っ...
中野剛志氏の著書は結構読んでいるが、今回もシニカルかつ的確な分析が光っている。 ここ最近積極財政か緊縮財政どちらが相応しいかがメディアで議論されるようになった。日本がやっとこのような状況になったのも、10年以上前から様々なメディアで経済について語っていた著者の功績もあると私は思っている。そんな人物が書いた新書が難しいはずがない。昨今メディアで取り上げられる経済テーマに関しては基本的なことがこの本でわかるようになっている。 きっと、経済についてあまり勉強してこなかった人からしたら、今までなんとなく学んできた知識を覆す内容ばかりだろう。だからこそ、本書のタイトルは『どうする財源』なんだと思う。(もちろん現在放送中の大河ドラマからの引用というのは踏まえている)
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自分には経済的素養がないから、この著者の主張が正しいかどうかは判別できない。ただ経済学の偉い先生たちとは意見が大きく異なっているようだ。 この真偽はどうやって判別したらいいのだろうか。 またこの著者の政策はどの政党、政治家が実行するのか興味深い。
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話題の「財源」がテーマだが、著者の代表作「富国と強兵」のダイジェストとして読むこともできる。 ポイントは直感に反する「貨幣とは特殊な負債である(資産ではない)」という事実が理解できるかどうかにかかっている。 この点が理解できれば景色が変わり、日経等の経済記事のレベルの低さに愕然と...
話題の「財源」がテーマだが、著者の代表作「富国と強兵」のダイジェストとして読むこともできる。 ポイントは直感に反する「貨幣とは特殊な負債である(資産ではない)」という事実が理解できるかどうかにかかっている。 この点が理解できれば景色が変わり、日経等の経済記事のレベルの低さに愕然とするようになるだろう。 意識して身近な人に正しい貨幣観を広めていきたい。
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再読の価値あり。貨幣や国家がどういうものかを考えると当然の帰結。国民の常識になるべき内容。 「新しい資本主義」というフレーズが岸田から出てきたことがあったが、シュンペーターによる資本主義の定義からすると、日本は新しい資本主義以前に、そもそもの資本主義を理解できていなかった。財源...
再読の価値あり。貨幣や国家がどういうものかを考えると当然の帰結。国民の常識になるべき内容。 「新しい資本主義」というフレーズが岸田から出てきたことがあったが、シュンペーターによる資本主義の定義からすると、日本は新しい資本主義以前に、そもそもの資本主義を理解できていなかった。財源は投資・消費したいという需要から生まれる。つまり、政府が需要を高めて債務を負えば、財源となる。新しい資本主義という抽象論ではなく、実態をよく見た真の資本主義によるマクロ経済政策を行えばよい。
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経済学者や財務官僚がいかに不真面目なのか、がわかる本だと思う。 なぜなら彼らの緊縮財政に対する主張も、MMTをはじめとする積極財政に対する批判もあまりにも的外れなことがわかるから。 せめて相手の主張を理解したうえで批判することは最低限の分別だと思うけれど、それすらできていない。 ...
経済学者や財務官僚がいかに不真面目なのか、がわかる本だと思う。 なぜなら彼らの緊縮財政に対する主張も、MMTをはじめとする積極財政に対する批判もあまりにも的外れなことがわかるから。 せめて相手の主張を理解したうえで批判することは最低限の分別だと思うけれど、それすらできていない。 最近は事実すらまともに把握せず、適当に自分の主張だけを繰り返すいい加減な人が増えたような気がする。
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