はなればなれに の商品レビュー
元々はゴダール監督により映画化されたものらしいが、邦訳は初めて。 20歳過ぎの前科持ちの若者2人と夜間学校に通う17歳の女子が主人公。女子が住んでいる叔母の家の良からぬ大金を手にしようと画策するのだが、、主人公だけでなく、登場人物の心理描写がとてもリアルで、入り込んでしまった。
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1958年の作品、1964年にはフランス、ヌーヴェル・ヴァーグの旗手ゴダール監督により映画化された。 邦題「はなればなれに」は日本公開当時の題名。 (巻末の解説より) 表に出ない大量の紙幣の存在を知った、スキップ、エディ、カレン 三人の若者が自己の境遇に飽き足らず無謀な行動に出...
1958年の作品、1964年にはフランス、ヌーヴェル・ヴァーグの旗手ゴダール監督により映画化された。 邦題「はなればなれに」は日本公開当時の題名。 (巻末の解説より) 表に出ない大量の紙幣の存在を知った、スキップ、エディ、カレン 三人の若者が自己の境遇に飽き足らず無謀な行動に出る。 そこには、若者が健全な夢を見られない、アメリカ社会の問題が背景にある。 他にも主要な登場人物がいるが、誰一人事態を全て把握している人はいない。 誰もが自分の知り得る範囲のみが、あたかも全体かのような理解で、物語が動く。 ミステリーとはひと味違って、《文学的》な香りすらする。 少し特別な読書の時間でした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ドロレス・ヒッチェンズの作品。新潮文庫の海外名作発掘シリーズの一つ。1960年代に映画化されているようだが、翻訳は初めての作品とのこと。 仲間内の女の子の叔母が大金を隠し持っていることを聞き、どうにかして盗もうとする男女3人。そこにプロ上がりの悪党が話を聞きつけ。。。 登場人物それぞれが、それぞれの選択肢を誤り続けると、ここまで転落していくのだという悲劇が語られる。 見事に、もう絶対そこは選んではダメだろう、と思うことの連続。ある意味リアルなのかも。 かなり読みやすく、非常に完成度の高い作品。この作家の他の作品も読んでみたい。
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ぼく自身が生まれた1950年代後半の作品。トリュフォーが愛し、彼に勧められてゴダールが映画化したという肝入りの映画の、しかも映画より面白いとの噂の原作が登場。このところ古い未訳作品に取り組む翻訳者の皆さんに感謝する機会が実に多い。本書はトリュフォーやゴダールの逸話がなければぼく...
ぼく自身が生まれた1950年代後半の作品。トリュフォーが愛し、彼に勧められてゴダールが映画化したという肝入りの映画の、しかも映画より面白いとの噂の原作が登場。このところ古い未訳作品に取り組む翻訳者の皆さんに感謝する機会が実に多い。本書はトリュフォーやゴダールの逸話がなければぼくらが読む機会は決して与えられなかったろう。ノワールな名監督たちに感謝。そして何よりもその名すら知らないでいたことに罪悪感さえ覚えてしまう原作の女流作家ドロレス・ヒッチェンズの異才ぶりに拍手を送りたい。 映画版が青年たちの人生の脱線とアイロニーを、(観てはいないのだがゴダール作品なのできっと)歌うようにリズミカルにリリカルに描いたものだろう。本書のカバーにスチールが三点ほどあるので想像してしまう。しかし解説者によれば、映画は若者たちの青春の側から描かれているが、原作は若者たちと絡む大人たちの描写も多くを占めていることに驚いたということである。 さて映画を観ていないぼくのような読者にとってこの作品はどう見えるか。ずばり優れたノワールであり、犯罪小説なのである。若い男二人と女一人という、典型的な犯罪トリオが軸となる。『明日に向かって撃て』みたいに。『俺たちに明日はない』みたいに。彼らの犯罪計画を中心に、独創的かつ典型的な人物たちを周辺に何人も配置。それぞれの運命や行動をアイロニックに絡み合わせることで、ストーリーを思わぬ方向に捻じ曲げ、激突させ、運命の悪戯をさらに呼び込んでゆく。登場人物たちは、誰もかれも、思いもかけぬ方向に転回させられてしまう。まさに予想もつかない劇的小説であるのだ。 これを50代の女性が書いた? 優れたストーリーテリング。展開の妙。視点のスイッチが切り替わる絶妙なタイミング。古さを感じさせない欲望。エゴの強烈さ。怖くなるような暴力。闇の中に暮らす者ども、闇の中に飛び込もうとする若者たち。狙われる老婦人の気位と知性。暴力。運命。 さまざまな物語要素を駆使して、捻じ曲げ、思いもよらぬ結末へと疾走する犯罪の物語。戦後ノワール史に刻まれて不思議じゃない作品は、本物の掘り出し物だった。危険に震える若い魂たちの脱出への扉は果たしてどうやって開いてゆくのか? 最後まで手に汗握るアクションと迷走がぶつかり合う絶妙なストーリーテリングに、改めて喝采を送りたい。それとともに眠れる傑作を掘り出してきた出版社、翻訳者の活躍にも心よりエールを。 なおタイトルが、最後まで謎に感じられたのだが、映画の日本上映時のタイトルをそのまま借用したのだそうだ。原作と映画では相当異なるようなので、その辺りで心に遺留した違和感は、<これは映画を観なければ!>という好奇心に置き換えた上で胸に抱えておこうと思っている。
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