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蝉かえる の商品レビュー

4.2

39件のお客様レビュー

  1. 5つ

    13

  2. 4つ

    18

  3. 3つ

    4

  4. 2つ

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2024/09/25

ミステリーを読んでいて作中で亡くなったキャラクターに対して可哀想という印象を受けるというのは中々ない感情だと思っていたが、本作ではどの短編を読んでいても感じた。ミステリーにおける被害者というのは一種の舞台装置となっていて、ことが起こった後には証拠品という役割に変わっている。そのた...

ミステリーを読んでいて作中で亡くなったキャラクターに対して可哀想という印象を受けるというのは中々ない感情だと思っていたが、本作ではどの短編を読んでいても感じた。ミステリーにおける被害者というのは一種の舞台装置となっていて、ことが起こった後には証拠品という役割に変わっている。そのため、人間性の部分についてあまり深堀がされないことが多いように感じている。しかし、今作では謎解きという部分も勿論あるのだが、それ以上に何故そうなったかというホワイに重点が置かれているため、亡くなったキャラクターの行動に深みが出てより魅力的なキャラクターとなっている。 この作品を通してミステリー好きではあるものの、人が死ぬ作品があまり好きではない理由がなんとなくわかってきた気がする。

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2024/09/23

読了。昆虫好きの少し風変わりな青年の閃きが、それぞれの謎を紐解いていく、連作短編。どの話も虫が関係していて、面白い切り口でした。前作のサーチライトと誘蛾灯とのリンクもあるようなのでそっちも読みたい。

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2024/09/12

昆虫好きの青年・魞沢泉が主人公の連作ミステリー 最初の表題作「蝉かえる」でぐっと惹きつけられ、次の「コマチグモ」では、魞沢くんの立ち位置が面白いなぁと思う。 五話それぞれ独立したストーリーではあるが、連作なのでもちろん繋がっていて、最後には思わず涙が溢れてしまう。 魞沢くんが...

昆虫好きの青年・魞沢泉が主人公の連作ミステリー 最初の表題作「蝉かえる」でぐっと惹きつけられ、次の「コマチグモ」では、魞沢くんの立ち位置が面白いなぁと思う。 五話それぞれ独立したストーリーではあるが、連作なのでもちろん繋がっていて、最後には思わず涙が溢れてしまう。 魞沢くんがトボけたキャラなので、温かくふんわりとした一冊になっているが、けっこう切ないんだなぁ… 解説によると、前作の「サーチライトと誘蛾灯」と二冊で対になっているらしい。 これは合わせて読みたいな。 ※心に残った言葉 「たしかに願わなくても明日はやってくるでしょう。でも、明日がくることと、ぼくに明日が あることは、同じではないのです」

Posted byブクログ

2024/09/07

主人公もテーマも深みが増している。 『サーチライトと誘蛾灯』読後に、ほとんど上下巻のようにして続けて読んだ。 もう、「昆虫好きな作家」でも、ましてや「作文好きな昆虫マニア」でもない。 短編集『蝉かえる』には、もうシリーズとしての独特の雰囲気が備わっている。 今回の五つの短編は...

主人公もテーマも深みが増している。 『サーチライトと誘蛾灯』読後に、ほとんど上下巻のようにして続けて読んだ。 もう、「昆虫好きな作家」でも、ましてや「作文好きな昆虫マニア」でもない。 短編集『蝉かえる』には、もうシリーズとしての独特の雰囲気が備わっている。 今回の五つの短編は、前短編集からの連作的要素が盛り込まれ、テーマも一層深みを得ていることは、〈あとがき〉や〈解説〉でもわかる。 なにより物語への引き込まれ方が凄みを増していて、読後の満足感が心地良い。 おもしろかった。 最後の短編「サブサハラの蝿」が、なんだか終章の雰囲気だったけど、続きもあるようだから、きっと読む。

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2024/07/13

★5 圧倒的な「さりげなさ」に読み心地抜群! 昆虫をテーマにした連作ミステリー短編集 #蝉かえる ■きっと読みたくなるレビュー ★5 美しい短編集。文章とプロットが洗練されていて気品を感じるわー 基盤にあるテーマが昆虫ということもあり、作品全体から素朴さと温もりが伝わってきま...

★5 圧倒的な「さりげなさ」に読み心地抜群! 昆虫をテーマにした連作ミステリー短編集 #蝉かえる ■きっと読みたくなるレビュー ★5 美しい短編集。文章とプロットが洗練されていて気品を感じるわー 基盤にあるテーマが昆虫ということもあり、作品全体から素朴さと温もりが伝わってきますね。主役である昆虫好きの青年魞沢泉をはじめ、他の登場人物たちも穏やかで身近なんです。会話もいい感じにホンワカしているんだけど、気の利いたやり取りもあって素晴らしい。 何より短編としての完成度が高いんですよね。有り体に言っちゃうと読み物として面白し出来がイイのよ。謎解きもシャープだし、短いお話の中でバランスよく書かれています。 ●蝉かえる 【鬼おすすめ】 かつて震災にあった山林でボランティアとして参加していた男の物語。当時行方不明になっていたはずの女の子の幽霊を見かけたというのだが… これは完成度高いです、トップレベルの作品ではないですか。序盤の展開からは思いもよらないストーリーの発展に痺れましたよ、特に人の行動や背景が超綿密なのがびっくり。短編とは思えない厚みと情緒感、そして謎解き要素も満点です。 ●コマチグモ 団地に住む女性が障害事件にあい、さらにその近所で起きた交通事故にあってしまった女の子。この二人に起きた悲劇の背景は… 意外性と納得性のハーモニーですよ、これぞミステリーの短編。例によって虫のエピソードで、なるほどーとも思わせてくれる。 ●彼方の甲虫 魞沢泉がかつてお世話になったペンションにやってきた。働く人たちと交流を深めるも事件が発生してしまい… 人間関係の紡ぎ方と小道具の使い方が上手、真相は全く想像だにできず…何とも言えない心苦しくなりました。 ●ホタル計画 雑誌の編集部での出来事、かつて一緒に働いていた青年が行方不明になったと読者から連絡があったのだ。編集長はいなくなった彼の姿を追って北海道に旅立つのだが… 最も生き物に焦点を当てて書かれた作品で、登場人物ひとりひとりの心情が切なく伝わってくる。終盤に驚かされるんだが、なるほどこういうこともやってくるのかとニヤリ。 ●サブサハラの蠅 【おすすめ】 アフリカで医者として従事していた青年が、蠅のサナギと共に日本に帰ってきた。彼は大学寮時代、魞沢泉の友人であったのだ。後日魞沢は彼の病院を訪れるのだが… 若き日の友情を描いた物語、なかなかの熱いやりとりがされるのに作品全体としては清々しい。このバランスはエグイですよ。魞沢のキメの一言が力強く、めっちゃ胸に刺さりました。 ■ぜっさん推しポイント 本作の強みは、圧倒的な「さりげなさ」。これが好きすぎる。 主人公である魞沢泉がバリバリの探偵っぷりを発揮するわけではない。鋭くはあるんだけど、あくまで少しのきっかけでしかなく、それを起点に周りの登場人物が変化していきながら読者の心に訴えかけてくるんです。また本作は昆虫がテーマになっているんですが、押しつけがましくないし、スパイス程度ですらあるですよ。 ジャンルとしては謎解きミステリーなんですが、むしろ文芸に近く、読み味に気品を感じました。本作で作家協会賞や本格ミステリ大賞を受賞されていますが、いつかもっと大きな文学賞をとられる先生ではないかと思いました。

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2024/05/06

良かった!! ここのところ自分的に星3な作品続きで、趣向を変えて読んだ海外作家作品は途中で自分の最も苦手とする展開になり(現在積読)、期待もせず読み始める。 まず言いたいのは連作ミステリ第2弾と書かれていたのに気付かず購入し、読み始めてしまったが全く問題がないということ。そして...

良かった!! ここのところ自分的に星3な作品続きで、趣向を変えて読んだ海外作家作品は途中で自分の最も苦手とする展開になり(現在積読)、期待もせず読み始める。 まず言いたいのは連作ミステリ第2弾と書かれていたのに気付かず購入し、読み始めてしまったが全く問題がないということ。そして、短編が5作収録されているが、最後の話でその全てが繋がって……ということでは無い。そこもありがたい。自分のペースで短編を細切れに読んでも、読む順番を変えなければ全く問題ない。普段こういう視点人物がコロコロ変わる作品は好みでは無いのだが、それでもこの作品は読みやすかった。誰かの人生という物語の中で主人公(というのはここでは適切では無いかもしれないが)セリ沢泉がどこかで関わっている。それを切り取って描いてる作品。 劇的に何かが起きる訳ではなくても、誰かにとっての身近な人が亡くなったその時に泉がいることで明かされる真実、もしくは事実の側面。それらが昆虫とともに描かれていた。 これは1作目も読んでみたいと思った

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2024/04/26

 虫好きの青年が主人公の連作短編集。全体的に穏やかな雰囲気と主人公の優しさにより、一話毎に心に染み渡るようなホカホカした気持ちになった。また昆虫の知識が深く掘り下げられているのも良かった。

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2024/04/20

良かった。 温泉に入って一息ついた感じに良かったー。 主人公が、あまり表に出て来ないのも好き。 短編小説で一気に読んじゃったけど、もうチョット時間をかけて読んだらよかったな、、、。

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2024/04/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

初めて読んだ先生の作品。虫好き青年の時に切なくも心温まる作品が詰まった短編集でした。 どれも捨てがたいですが、私はタイトルにもなっている蝉かえるが好きでした。

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2024/02/05

最初の数編を読んだ段階では、探偵役の男性が主人公の役割を担うにはおとなしすぎで、やや魅力に欠けるかなと感じていたのだけど、連作を読み進めるうちに徐々にこの人物の人となりが浮かび上がってきて、当初抱いていた印象が一面的であったことに気付かされた。 連作の手法としては多用されるパター...

最初の数編を読んだ段階では、探偵役の男性が主人公の役割を担うにはおとなしすぎで、やや魅力に欠けるかなと感じていたのだけど、連作を読み進めるうちに徐々にこの人物の人となりが浮かび上がってきて、当初抱いていた印象が一面的であったことに気付かされた。 連作の手法としては多用されるパターンではあるものの、主人公を前面に出しすぎない形にすることで読者の想像力を上手く引き出すことに成功していると思う。 この探偵役が語り手となる作品も読んでみたいところではあるのだけど難しそうだな。 シリーズ前作は未読だけど、解説によると本作の5編とそれぞれ対応しているということらしいので、いつか読んでみたい。

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