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海の仙人・雉始ナク の商品レビュー

4.3

15件のお客様レビュー

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2025/11/05

 絲山秋子さん初読でした。表題作は160ページほどの中編小説で、平易な言葉で軽やかに流れるような筆致はとても読みやすいです。ところが情景や人の心理描写が思いの外深い作品でした。  主人公の河野勝男は、宝くじを当てて仕事を辞め、旅の途中で敦賀が気に入り、気ままに一軒家で一人暮らし...

 絲山秋子さん初読でした。表題作は160ページほどの中編小説で、平易な言葉で軽やかに流れるような筆致はとても読みやすいです。ところが情景や人の心理描写が思いの外深い作品でした。  主人公の河野勝男は、宝くじを当てて仕事を辞め、旅の途中で敦賀が気に入り、気ままに一軒家で一人暮らし。会社員時代の同僚・片桐妙子曰く、存在感なく幸薄い感じで「仙人」みたいだと…。  この河野の前に、冒頭から「ファンタジー」が現れます。不思議な存在で、孤独な生物と会話すること以外何の異能もなし。このファンタジーが、河野の家に居候を始めるところから物語が始まります。  河野と女性2人(片桐と浜で出逢った中村かりん)の3人を中心に物語が展開します。少しずつそれぞれが抱える傷やその事情が明かされ、河野を見る目が変わってきます。そして、なぜファンタジーが河野の前に現れたのか、想像してしまいます。  その後の展開と結末は伏せますが、ファンタジーは掴みどころがなく、説明もほぼないので、その存在意義を否定する読み手もあるかもしれません。  しかし、ファンタジーは自分の分身に思えてなりません。それもしっかり孤独と向き合い、受け入れている時に現れる存在な気がします。  会話や説明の複雑さや重厚さがまるでないのに、妙に心に響き愛おしく、孤独と人を慈しむ描写が切ないです。絲山さんの絶妙な語り口で描かれる、悲しくも美しい世界観を、多くの方に堪能してほしいと思いました。  七十二候の「雉始雊」(きじはじめてなく)をタイトルにしたわずか10ページほどの掌篇がもう一つ。  自然豊かでのどかな田舎暮らしの情景が描かれてますが、終末でびっくり! つらい想いをしている子へ宛てた手紙文なのでした。さりげなく寄り添う気持ちに満ち満ちた温かく優しい作品です。  季節の移ろいを表現するための二十四節気(四季をさらに6等分、約15日)がありますが、さらに初候・次候・末候の3つに分け(5日)たものが七十二候。日本人はなんて細やかに季節を感じ取ってきたんでしょう。  ちなみに「雉始雊」は、二十四節気の「小寒」の末候にあたり、1月15日頃(旧暦)。寒さの中にも春の兆しが感じられ、オスがメスを求めて鳴き始める時期を表すのだそうです。  最近は温暖化による猛暑で秋がないような状況ですね。暦の分け方へ影響を与える時代になったのかもしれません…。

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2025/10/14

何がいいのか言葉では説明できないんだけど、なんかよかった。多分自分にはファンタジーは見えないような気がする。

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2025/03/15

浮世離れした主人公のところに不思議な存在ファンタジーが来てからのストーリーです。ファンタジーと他の登場人物とのやりとりがいい味をだしてます。愛の形は人それぞれだなと思いました。 ファンタジーは自分の近くには来てもらいたくないです。

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2025/01/18

「神と黒蟹県」がとてもおもしろくて刺さったので。 なんとなくあらすじを見て選んだ。 これもなぜかとても面白句読み切ってしまった。 もっと早くに出会うべきだった。

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2024/12/25

読んでよかったです。イメージをあれこれ喚起してくれて、すごくいい気分を味わえました。【2024年10月31日読了】

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2024/09/08

二編とも、とても良かった。 ・「海の仙人」 私の偏愛の一冊が「袋小路の男」なので、片桐さんをやはり好きになってしまうのだが、恋愛とは少し違う感情を描くのが上手な作者が、わりと真っ直ぐに恋愛を描いた本編も良かった。「ファンタジー」という特殊な存在が、すっと馴染んでいるけれど、他はわ...

二編とも、とても良かった。 ・「海の仙人」 私の偏愛の一冊が「袋小路の男」なので、片桐さんをやはり好きになってしまうのだが、恋愛とは少し違う感情を描くのが上手な作者が、わりと真っ直ぐに恋愛を描いた本編も良かった。「ファンタジー」という特殊な存在が、すっと馴染んでいるけれど、他はわりとトレンディードラマみたいな筋書きにも関わらず、だからこそ?沁々と余韻が残る。あと、土地が主役のひとつと言うか、観光してみたいかもと思った。 ・「雉始雊」 穏やかな日常が綴られていると思ったら、最後で、本当にうわっ!と泣きそうになった。日常は強くて温かい。すごく好きな話。 「袋小路の男」に収録されている「アーリオオーリオ」も、そうだったけれど、作者の描く短編も改めてすごく好き。

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2024/09/05

彼らの一生懸命に生きる姿に、生きる事を丁寧に楽しみたいと思った。 私もファンタジーに出会いたい。 とても温かな、大切な作品でした。

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2024/02/10

「海の仙人」は、爽やかな、研ぎ澄まされた言葉で語られた、ユーモラスな要素もあって味わい深い小説でした。 「雉始雊」もシンプルな物語で、自然の描写が美しく、最後の展開に驚きました。 良い本でした。

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2024/01/14

「ファンタジーがやってきたのは春の終わりだった」 なにこれ?冒頭の一文からグイっと心にきた。 ファンタジーというのは神様。姿は(借り物らしいが)40歳くらいの日本人っぽくないオッサン。 主人公、河野勝男は敦賀の海辺に一人暮らし、仕事も結婚もせず、釣りをしたり、農園を借りて野菜...

「ファンタジーがやってきたのは春の終わりだった」 なにこれ?冒頭の一文からグイっと心にきた。 ファンタジーというのは神様。姿は(借り物らしいが)40歳くらいの日本人っぽくないオッサン。 主人公、河野勝男は敦賀の海辺に一人暮らし、仕事も結婚もせず、釣りをしたり、農園を借りて野菜を育てたりしている。宝くじで3億円当たったから、性に合わなかった会社も東京暮らしもやめ、大好きな敦賀でのんびり暮らしているのだ。家の中に砂浜の砂を入れて部屋を砂浜状態にもしていた。  河野が砂浜にいる時、突然ファンタジーが目の前に表れた。ファンタジーは神といっても 「俺は大したことないぞ。大体、神というものは何もしないのだ」 「俺様はそんな都合のいい神ではないぞ。奇跡だってあまり上手くない。せいぜいが孤独なものと渡り合うくらいだ」 「俺様のことは野次馬だと思ってくれ」 とファンタジー自身が言うように「役立たずの神」である。 河野の家で一緒にお好み焼きを食べ、風呂にも入り、河野のアロハシャツを借りて着ていた。 全く普通のオッサンみたいなのだが、それが見える人にしか見えないのだ。 ある日、河野の車でファンタジーと出かけているとき、目の前でジープが左折してきた。ファンタジーは「飛び出せ」と言った。河野は飛び出さなかったが、ファンタジーは「今、お前さんの運命の女が走ってきた。ぶつかれば縁になったのに」と言った。河野は「アホか」と言ってその場は終わったが、後日、その女の人と浜で会った。 敦賀が好きで、海が好きで、本が好きで、河野が作る料理が好きで…とても気の合う綺麗なその人の名はカリン。だけど、キャリアウーマンで会社では課長でしょっちゅう転勤している忙しい人だった。河野は大好きな敦賀を離れられないので、月に1・2度しか会えなかった。 もう一人の女の人も登場する。それは河野が会社で一番仲の良かった片桐。片桐はいつも親身になって河野の相談にのってくれるのだけれど、河野は片桐を女として見ることは出来ない。片桐は何人かの男性と付き合っているが、本当は河野のことが好きだった。河野と片桐とファンタジーで、日本海側を敦賀から新潟までドライブに行くシーンがあり、途中で泊まるところがなくてラブホテルに泊まったりするのだが、ファンタジーがいるから全く何も起こらない。けれどファンタジーは他の人には見えないから(河野と片桐には見えている)端からみたらカップルに見えるというのがなんともおかしい。片桐は河野にとって何でも打ち明けられる都合の良い親友だった。 ロマンスでもあり、三角関係のドラマでもあるのだが、ファンタジーがいるから、この小説はファンタジーなのだ。パステルカラーでマシュマロのようにフワフワしたファンタジーが間に入ってくれているから、小説そのものが「大人のファンタジー」になっている。 河野という30代の男が一人で世捨て人のように(仙人のように)敦賀の海辺でのんびり暮らしていること自体が「ファンタジー」であるが、河野にはずっと背負っている自分の過去があり、それが原因でカリンを抱けずにいた。 誰にも言えない自らの汚い過去や今の仕事の重圧などを背負って、人間は本当は孤独でいる。「ファンタジー」はあまり役には立たないけれど、そんな人間(動物のときもある)に寄り添ってくれている。(ということに最後は気づくのだ) 読んだことのない種類の美しい小説だった。

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2023/12/27

自分を尊重し、他者も同等に扱う。 一見冷たく見えるが、その奥には深い愛が横たわっている。 姿は見えない、でもそこに居る。ふとした時に現れる。それがファンタジー。自分の”想像”のことなのかな?いつもふんわり想像する。だけどたまに、本当に目の前の現実と置き換わってしまうような、想像が...

自分を尊重し、他者も同等に扱う。 一見冷たく見えるが、その奥には深い愛が横たわっている。 姿は見えない、でもそこに居る。ふとした時に現れる。それがファンタジー。自分の”想像”のことなのかな?いつもふんわり想像する。だけどたまに、本当に目の前の現実と置き換わってしまうような、想像が見える時がある。それがファンタジーなのかな。 わからなくても良い。曖昧さを残すことで、世界はうまく進んで行くのかもしれない。 激しくも、心地よかった。

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