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百合小説コレクション wiz の商品レビュー

3.4

16件のお客様レビュー

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2024/03/08

――  アメリカの俳優ニック・オファーマン出演作品について、「なぜ同性愛者の物語にする必要があったのか?」と訊かれて「そういうくだらない質問するやつがいるからだ」って言い返したというニュースを気に入ってたんだけれど消えてる…フェイクだったのかな?  久々に百合アンソロジーなど...

――  アメリカの俳優ニック・オファーマン出演作品について、「なぜ同性愛者の物語にする必要があったのか?」と訊かれて「そういうくだらない質問するやつがいるからだ」って言い返したというニュースを気に入ってたんだけれど消えてる…フェイクだったのかな?  久々に百合アンソロジーなどを。百合でなきゃ得られない養分が…とかってわけではないけれど、やはりなんというか、この関係性じゃないと生まれない痛み、のようなものがある。でもそれって普通の恋愛小説と何が違うの? と思うことも。純度の問題なのだろうか? LGBTQに配慮も忖度もしないオレのような者が、しかしなぁ。  全8編。特に気に入った(そして気に入らなかった)ものだけを掻い摘んで…と思ったけれど毎度、ほとんど全部。それだけ良作揃いではあるのだけれど、残念な部分もあります。         ****  選挙に行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい/斜線堂有紀  普通に考えて頭がこれって失敗でしょう。1編読んで一旦お腹いっぱいになっちゃうよぉ←  やっぱりストーリーテラーとして飛び抜けているなぁと思う。面白いんだよなぁ…選挙を切り口に、これくらいの世代なら誰もが持っている素材をこんなふうに料理できる小説家はこの世代にはなかなか居ないでしょう。斜線堂全肯定botになりそう。嘘です。  エリアンタス・ロバートソン/宮木あや子  なんとも純度の高い百合小説だなぁ、と思ったらとても書き慣れてらっしゃるようで。流石だな、と思いました。こういう、自分の作品群の中に確固たる百合枠、みたいのを持っているひとが書くキャラクタはいいなぁ、と楽しく読んだ。  嘘つき姫/坂崎かおる  斜線堂が書いたのが日常の中の地獄なら、やはり戦争という真物の地獄の中での百合もまた、映えるもので。次に出てくる南木義隆が「ソ連百合」で名を馳せたように、大戦中を舞台にした百合小説は十指に余るだろう。  どうしても写実的になりがちな戦争ものでありながら、物語的な細工が全体に光るこれも良作。個人的に、おすすめの百合作品が萩尾望都『半神』で同い年、というのもまた痺れた…謎の嬉しさったら。  魔術師の恋その他の物語/南木義隆  エンタメばくはつ、という感じ。「月と怪物」、『蝶と帝国』など、重厚な作風のイメージが強くあったのだけれどこれはもう、逆のベクトルに突き抜けていてとっても面白かったです。中編程度の頁数の間、ずっとワクワクしていた。嬉しい。  運命/深緑野分  これだけはマイナス評価。  こういう、小説家を志す思春期の少年少女が必修で書きました、みたいな物語を直木賞候補になるような作家さんに書かせてちゃいけない。もっとあるやろ、というのが正直なところである。残念。         ****  ところで小説、漫画を問わず若いひとたちの作品を読んでいると、いまの世の中ほんとに何でバズるか解らないからペンネームだけはまじでちゃんとつけておきなさい、と思う。まじで。  粒ぞろいのアソート。☆3.4

Posted byブクログ

2024/02/20
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※このレビューにはネタバレを含みます

宮木あや子さんのファンとして、宮木さんの小説ベストだと思っている「雨の塔」の続編が読めたことに感動しての☆5です。 全体的には......百合小説アンソロジー「彼女。」でこういったものが面白いな、と感じて同じような趣旨のこのアンソロを買ってみたのですが、小説に性的な表現が入ると嫌悪感を抱いてしまうタイプなので、なんというか「彼女。」よりも生々しい関係の話が多くて苦手でした。 「彼女。」の方は、友情以上の何かがある女性同士の人間関係を描いたお話が多かったですね(高校のクラスメイトしかり、殺し屋姉妹だったり) 前述の宮木あや子さんの「雨の塔」は、上流階級の訳ありの子女が「捨てられる」女子大学、「岬の大学」を描いた小説です。 高校卒業時に「使われる」(嫁に出される)ことになったクラスメイトと心中騒ぎを起こした少女が転入してくるところから始まり、学校で交流する三●グループを思わせる日本屈指の大企業「三島」の翁が可愛がる愛人の娘「三島」と、その子の付き人のようなピアニストを目指す「都岡」。 「都岡が三島の奴隷なら、三島は三島の父の奴隷」と評されていたふたりの、高校時代と、その後が垣間見える短編集。短編の主人公は、ふたりの高校のときの担任なので、直接ふたりが描かれるわけではないのですが、彼女たちが自由を手にしたことが見られてよかった。 三島が可愛い、ということは雨の塔の中でいろいろな婉曲表現でわかっていたけれど、改めて「東京で一番顔がいい」と直接書かれると、やっぱり、という気持ち、

Posted byブクログ

2023/12/29

それぞれにけっこう違う味わいの構造、物語。現代から戦争、魔術師、物語の内側。 ど正面な感じなのは『選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい』(斜線堂有紀)。タイトル通りの主張を持つ女と、正式に結婚したいから投票に行き、デモにも行く女。好き合って一緒に暮らしている...

それぞれにけっこう違う味わいの構造、物語。現代から戦争、魔術師、物語の内側。 ど正面な感じなのは『選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい』(斜線堂有紀)。タイトル通りの主張を持つ女と、正式に結婚したいから投票に行き、デモにも行く女。好き合って一緒に暮らしているけれど、熱意の量も向かう先も違いすぎてケンカする。 「ズルい。それが私の根源的な気持ちだ。――こんなパレードをしなくても普通に結婚出来る奴らはズルい。――怠惰な自分が赦されないのに、そっちは問題にもならないのがズルい」 『エリアンタス・ロバートソン』(宮木あや子)では、一途な想いがあるとき表裏ひっくり返って暗闇におちてしまう。 「綺麗なものだけ食べて育った感受性のうさぎたちも、親の監視下にあった三年間で一匹残らず死に絶えた。」 自分の元から去った恋人との思い出を、ピアノの音色が弔ってゆくのが哀しくも美しい。

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2023/11/04

かなり好き。特に斜線堂有紀さんの「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」、南木義隆さんの「魔術師の恋その他の物語(Love of the bewitcher and other stories.)」、宮木あや子「エリアンタス・ロバートソン」の三編が好き。心中し...

かなり好き。特に斜線堂有紀さんの「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」、南木義隆さんの「魔術師の恋その他の物語(Love of the bewitcher and other stories.)」、宮木あや子「エリアンタス・ロバートソン」の三編が好き。心中したり不幸になったりしない、でも社会的な背景も踏まえた百合小説で好感度が高い。百合小説というよりビアン小説と言ってもいいなもしれない。わたしはふわふわした王道女子高生百合にどうしてもハマれないたちなのでこういうのはとても趣味に合うし、日々異性愛前提の社会に生きていると心が救われる気持ちになる。

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2023/06/28

百合短編小説のアンソロジー。一番好きなのは『あの日、私たちはバスに乗った』。ユアのぶっ飛び具合がいい。『魔術師の恋その他の物語』も裏魔女宅みたいで面白かった。

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2023/06/22

百合って何ーっ!?という気持ちになった。 海外が舞台だったり、ファンタジー設定だったり、メタフィクションだったり、バリエーション豊かな短編集。ちょっとラノベっぽい作品が多いような。BLの女性版みたいな作品を想像していたら、全然違った。表紙から抱いていたイメージとも違った。性描写が...

百合って何ーっ!?という気持ちになった。 海外が舞台だったり、ファンタジー設定だったり、メタフィクションだったり、バリエーション豊かな短編集。ちょっとラノベっぽい作品が多いような。BLの女性版みたいな作品を想像していたら、全然違った。表紙から抱いていたイメージとも違った。性描写が激しい、というわけではないけど、なんだか感情が重くて読んでいてちょっと疲れてしまった。 斜線堂有紀の「選挙に絶対行きたくない 家のソファーで食べて寝て映画観たい」と宮木あや子の「エリアンタス・ロバートソン」がよかった。 また、著者の紹介や、それぞれの著者による百合作品紹介のページが充実していて、興味をそそられた。巻末の河出文庫作品のラインナップも見事に百合作品で、こだわりがすごい!

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2023/06/12
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楽しみにしていた百合アンソロ。 一番好きな作品は櫛木理宇さんの「パンと蜜月」。現実味があったし、当事者同士が一番幸せそうだったので。 斜線堂有紀さん宮木あや子さん深緑野分さんはやっぱり安定感ある。 アサウラさんの「悪い奴」そうくるか!って唸る学生百合でよかった。

Posted byブクログ

2023/05/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

アニメや漫画や映画に関しては百合大好物だが、百合小説には疎い。 カバーイラストを「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」に関わるめばちさんが描いているので、手を伸ばした。 気になっていた作家さんも多かったし。 ネット発の作家さん多し。 とはいえ、カバーイラストが具体的にどれかの作品を表しているかといえばそうではないし、むしろ半分くらいがファンタジーや歴史モノやメタモノなので、イラスト詐欺といえなくもないが、まあ変化球を含んでいるということ。 絵はいい。断然いい。→このイラストの路線を求める方には、むしろ漫画の「エクレア あなたに響く百合アンソロジー」をお勧めしたい。 以下、私的好み度をA、B、Cで。 ちなみに帯の 〈名前をつけたい関係も、  名前のいらない紐帯も。〉 は名作。 ■斜線堂有紀「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」 B それこそ「スタァライト」の古川知宏監督と、脚本としてタッグを組んで「ラブコブラ」というか「タイトル未定作品」を待ちわびている。 本作はギスギスというか、彼我の政治意識差が、読んでいて辛かった。 今鑑賞中の「私の百合はお仕事です!」もそうだが、私が個人的に百合にギスギスを求めていないということなのかしらん。 ■小野繙「あの日、私たちはバスに乗った」 A 独特……。そしてそこが面白い。 西尾維新とか舞城王太郎とかの文体芸を思い出した(もはや古いか)。 ■櫛木理宇「パンと蜜月」 C 純文学風な舞台立てか? やや類型的な印象。 ■宮木あや子「エリアンタス・ロバートソン」 ー スピンオフらしいので、いったん保留。 ■アサウラ「悪い奴」 B 「リコリス・リコイル」のストーリー原案として知ったが、実は「メルヘン・メドヘン」の脚本も手掛けられていたのだった。「ベン・トー」は未見。 タイトルの意味が都度都度判明するのが面白い。 ■坂崎かおる「嘘つき姫」 A これはいい小説だ……。 皆川博子的本格西洋ではないが、スピリットは通じ合っている。 ■南木義隆「魔術師の恋その他の物語(Love of the bewitcher and other stories.)」 S! 以前からネット上の記事で気になっていた作家さん。 「アステリズムに花束を」収録の「月と怪物」を読みたいと思っていたところ。 今野緒雪「マリア様がみてる」をもじって、〈僕は自分で百合小説を書くとき、「これは『マリみて』のシェアード・ワールドです」と時々言うんですよ〉〈もちろん冗談ですよ(笑)。けれど、僕は『マリみて』も僕の作品も、同一の世界で起こっている話なんだとしばしば思い込んでしまうことがあるんです。同じ世界なんだけど、「マリア様が見ている」部分で起きているのが『マリみて』。対して、僕が書くべきなのは、そこからこぼれ落ちた「マリア様が見ていない」「マリア様が見過ごしている」部分の話だと思っているんですよ、勝手に。〉という発言で、信用度を高めていたところ。 津原泰水の小説講座を受講していたという経歴も目を引いた。 で、実際読んでみたら、文体のマジック! たとえば【薔薇子1】冒頭部の、 《家は帰るべき場所ではないから街に午後五時を告げるチャイムが鳴り響くのを背にきみは、他に人影のない冬の海に佇んで空になった猫用缶詰を片手に煙草をくゆらせている。歳は十三。》 とか、まさに津原泰水の文章を読んでいるかのようで、嬉しくてちょっと涙ぐんでしまったわ。 津原全作品の冒頭部分を最近読み直したので、この感想は間違いない。 会話文の粋さも通じている。 作者ご当人はおそらく、過剰に津原の弟子みたいに言われたら嫌だろうけれど、題材や筋もさることながら小説って文章の芸よねと再確認させてくれた点で、やっぱり津原泰水を強烈に思い出してしまったんだから仕方がない。 また、たとえば、宮崎駿「魔女の宅急便」とか新房昭之「魔法少女まどか☆マギカ」とか、典型的魔女描写という点で「魔女の旅々」とかを連想させておいて(たぶんわざと)、別ベクトルに読者を拉致せんとする豪腕さ。 さらに、冒頭と終盤で「痛み」の意味を別次元に転化された、驚きと、嬉しさとで、うっとりしてしまった。 敢えて大袈裟に言ってしまうが、この小説は額装して部屋に飾っておきたい。 ■深緑野分「運命」 B このアンソロジーに深緑さんが加わるのは確かにと思ったのは、「オーブランの少女」という弩級の名作をものした作家さんだから。 が、むしろ坂崎かおる「嘘つき姫」に深緑っぽさを感じた。 かたや本作は今敏ふう? 油圧カッターという無骨なモノを持って走る姿は、実にいいが。

Posted byブクログ

2023/05/19

どうしてもペアみたいに思ってしまうBLが異様に輪郭が鮮明なジャンル(なにがBLでなにがBLでない)だけに誤解をしてしまいがちになるが、百合ってジャンルの輪郭が極めてあいまいなのね。そのせいか、ものすごく肩に力の入った「こういうのが百合です、あんなのは百合じゃない」的力作が多くて読...

どうしてもペアみたいに思ってしまうBLが異様に輪郭が鮮明なジャンル(なにがBLでなにがBLでない)だけに誤解をしてしまいがちになるが、百合ってジャンルの輪郭が極めてあいまいなのね。そのせいか、ものすごく肩に力の入った「こういうのが百合です、あんなのは百合じゃない」的力作が多くて読んでて疲れる。アニメ界隈なんかで「尊い」の同義語として使われる「百合」を「百合」だと思ってるような人間は戸惑うばかり。個人的ベストは「噓つき姫」。

Posted byブクログ

2023/04/30

巻頭の斜線堂有紀「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」を河出書房新社のサイトで全文公開していて(太っ腹!)、それがすごくよかったのでその勢いで文庫本を買ってしまった(出版社の思惑にまんまとハマった…)。 小野繙「あの日、私たちはバスに乗った」と坂崎かおる「嘘...

巻頭の斜線堂有紀「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」を河出書房新社のサイトで全文公開していて(太っ腹!)、それがすごくよかったのでその勢いで文庫本を買ってしまった(出版社の思惑にまんまとハマった…)。 小野繙「あの日、私たちはバスに乗った」と坂崎かおる「嘘つき姫」は2022年「pixiv」初出、ほか6編は書き下ろしというぜいたくアンソロジー。 2篇目「あの日、私たちはバスに乗った」もまためちゃくちゃおもしろくて切なくて、この本は一篇読んではしばらく反芻して余韻に浸って、そしてまた次にとゆっくりゆっくり味わうべき宝石箱だと思う。

Posted byブクログ