1,800円以上の注文で送料無料

動的平衡 新版(3) の商品レビュー

4.1

18件のお客様レビュー

  1. 5つ

    4

  2. 4つ

    9

  3. 3つ

    3

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2023/05/01

今回のキーワードは「エントロピー」だろうか。 エントロピー増大に抗う生命、不確実性の中での生存戦略としての「準備された心」。福岡先生の実体験とともに語られるため専門外の人間にもとっつきやすい。

Posted byブクログ

2023/04/19

分子生物学を通して人間とは・自分とは何かを問う、福岡伸一のエッセイである。動的平衡という概念でヒトの生理学的存在を表象しその根拠をいろいろな角度から明らかにしていくもので、この分野に疎い自分にも話はわかり易く納得性がある。同時に認識が深まる毎に心が揺さぶられる。「生命体は頑丈に作...

分子生物学を通して人間とは・自分とは何かを問う、福岡伸一のエッセイである。動的平衡という概念でヒトの生理学的存在を表象しその根拠をいろいろな角度から明らかにしていくもので、この分野に疎い自分にも話はわかり易く納得性がある。同時に認識が深まる毎に心が揺さぶられる。「生命体は頑丈に作るのではなく柔らかく作り自らを常に壊し分解しつつ作り直し更新と交換をする」という。 細胞の解体・タンパク質の分解・遺伝子情報の消去や抑制は千差万別で常に滞らないようにバックアップされ、生命は柔軟で環境に適応的進化が可能になる。この動的平衡は中央統制ではなく自律分散型である。 脳は中枢ではなく知覚感覚情報を集約し中継するサーバーのようなもの。‥‥37億年の生命の時間軸で極微小の細胞や遺伝子・タンパク質の生成・削減をくり返す一連の話はとにかく新鮮で面白いの一語に尽きる。 「新陳代謝」という言葉は一度も使われていないがなぜなのだろうという疑問も浮かぶ。 福岡伸一の本は2冊目だが、取り上げられるエピソードはどれも的確で印象的である。パスツールのザ・プリペアード・マインド、コッフォの3原則、ステイーブ・ジョブスのコネクト・ザ・ドット等々天才達の教訓に満ちた話が多い。 分子生物学の話は哲学でもあるということを痛感した。

Posted byブクログ

2023/04/15

宇宙の大原則であるエントロピー(乱雑さ)増大の法則に生命は「絶え間ない分解と更新」で抗う。この生命の営みが福岡博士のいう「動的平衡」である。 本書では、この鍵概念をもとに様々な話題が取り上げられているが、「エントロピー増大の法則という名の(不可避の)風化作業に徐々に負けていくプロ...

宇宙の大原則であるエントロピー(乱雑さ)増大の法則に生命は「絶え間ない分解と更新」で抗う。この生命の営みが福岡博士のいう「動的平衡」である。 本書では、この鍵概念をもとに様々な話題が取り上げられているが、「エントロピー増大の法則という名の(不可避の)風化作業に徐々に負けていくプロセスが老化」という部分が特に印象に残った。 生命の神秘に触れた気になれる良書。

Posted byブクログ

2023/03/29

コロナ騒動がもう直ぐ終わろとしてる。 個体の死は、生態系全体の動的平衡を促進する行為である。つまり個体の死は最大の利他的行為であり、ウイルスはそれに手を貸している。 確かにその通りで、ワクチン接種は、それに抗う無意味な行為であると確信した。

Posted byブクログ

2023/03/17

副題の「チャンスは準備された心にのみ降り立つ」は第9章のタイトルで、「動的平衡」とは関係のないスティーブ・ジョブズの話だったりする。 「動的平衡」に関する新しい発見を語るのではなく、生命とは「動的平衡」であるというご自身の理論をふまえて科学・医学・芸術などを思うがままに語るという...

副題の「チャンスは準備された心にのみ降り立つ」は第9章のタイトルで、「動的平衡」とは関係のないスティーブ・ジョブズの話だったりする。 「動的平衡」に関する新しい発見を語るのではなく、生命とは「動的平衡」であるというご自身の理論をふまえて科学・医学・芸術などを思うがままに語るという内容でした。 「動的平衡」とは、 生体の中で合成と分解を繰り返している反応で、合成と分解が同じ速度で進んでいるため、一見変化が起きていないようにみえる状態。 のこと。 例えば、人の細胞は入れ替わりが激しく、3年前と今の自分はほとんどが異なる細胞でできている。 特に速いのが皮膚の細胞で、一カ月で全て入れ替わる。 これは、かすり傷なら10日もすれば治ることからも実感できる。 体の内部は気が付かないが、血液は4カ月、骨は3年で全て入れ替わるそうだ。 例外もあり、心臓は一生で半分以下で、脳はほとんど入れ替わらない。 こうして、日々せっせと作り直しているから、多少のダメージを受けても復活できる。 ところが、分解→合成は常に正しく行われず、コピーに失敗することもある。 このコピー失敗によって起こるのが老化だったり癌だったりする。 これは、生きている以上は避けられないことなのだ。 だが、DNA複製機構が100%完璧なコピーを実行するなら進化はなく、原始的な単細胞生物のままで今の我々は存在していない。 「動的平衡」の復習はこれで終わりにして、本書で頭に残ったこと。 ・「物知り」を知識の羅列とすると「教養」はその答えに達するまでの経緯を語れること。 ・インターネット上のデータや知識を情報と呼んでいるが、それは静的な蓄積に過ぎない。 ・生命にとっての情報は「変化量」である。気温、酸素濃度、不審な音、味や匂いなどの変化を適切にくみ取ることが生命現象の秩序の維持には必要。 ・STAP細胞の論文は、最高権威の審査が機能せずにネイチャーに掲載された。ネット上のあら捜しが問題点を見つけた。 ・親の経験が子に遺伝することはない、とは言い切れない。 ・食べ物は身体を"作り直す"という役割が重要。 ・ピアニストや棋士の天才になる遺伝子はない。 ・私たちは芸術を渇望するが、音楽を必要とする理由は何だろう。その起源は、生物の求愛行動コミュニケーションにあるのでは。 ・優れた音楽家はその身体性を楽器にまで拡張する。アンネ・ゾフィー・ムターは肩当てを使わないが、それは「ヴァイオリンの振動をじかに身体で感じ取りたいから」。 ・全ての地球上の生き物が動的平衡の一部であり、COVID-19も地球の生命系という大きな動的平衡の一部なのだ。

Posted byブクログ

2023/03/12

生物がエントロピー増大に対抗するために行う動的平衡の概念をベースにさまざまなトピックを解説。いずれも興味深い内容でした。 新型コロナにも言及。自然を人間がどうこうできるはずもないので、打ち勝つではなく正しく畏れるであるべきと指摘。最近の為政者らに理解願いたいところですねー。 何で...

生物がエントロピー増大に対抗するために行う動的平衡の概念をベースにさまざまなトピックを解説。いずれも興味深い内容でした。 新型コロナにも言及。自然を人間がどうこうできるはずもないので、打ち勝つではなく正しく畏れるであるべきと指摘。最近の為政者らに理解願いたいところですねー。 何であれ自然を研究している方は、自然に謙虚であることに行き着きますね。恐れを知っているからでしょうか。

Posted byブクログ

2023/02/22

相変わらず、引き込まれる本である。 ・動的平衡組織論、昨今流行りの自立分散型組織論と近しい。 ・無作為は作為に勝る。過剰に準備して環境が彫琢する。未知の事象に対しては、発生的が設計的に勝る。 →これは昨今の、論理の限界論ともリンクする。ロジカルに戦略立てて段階的に進んでも、当...

相変わらず、引き込まれる本である。 ・動的平衡組織論、昨今流行りの自立分散型組織論と近しい。 ・無作為は作為に勝る。過剰に準備して環境が彫琢する。未知の事象に対しては、発生的が設計的に勝る。 →これは昨今の、論理の限界論ともリンクする。ロジカルに戦略立てて段階的に進んでも、当初のゴールに辿り着いた時にはすでにニーズが変わっている…という話に近しい。

Posted byブクログ

2023/02/08

著者の動的平衡シリーズ第3段。章毎に話が完結しており、各々楽しめる。特に新書版で加えられた新型コロナウイルスに関する第11章が面白い。ウイルスは敵ではなく、相補的な関係として長く共に存在してきた。時にはヒトを死に至らせることもあるが、それはウイルス側というよりは、ヒトの免疫反応と...

著者の動的平衡シリーズ第3段。章毎に話が完結しており、各々楽しめる。特に新書版で加えられた新型コロナウイルスに関する第11章が面白い。ウイルスは敵ではなく、相補的な関係として長く共に存在してきた。時にはヒトを死に至らせることもあるが、それはウイルス側というよりは、ヒトの免疫反応として起きるものである。ヒトの遺伝子にはウイルスからもたらされた配列もあり、それを受け入れながら長い年月をかけて生き延びてきた。無理に制圧したり撲滅できるものではなく、地球全体の動的な平衡の中で成り立っている。7章のがんに関する話もそうであるが、体内で起きている現象もまだまだ分からないことも多く、自然に対する畏敬の念を忘れるべきではない。

Posted byブクログ