植物少女 の商品レビュー
自分が、夫が、家族が植物人間になってしまったら?という、考えたこともないようなことを考えさせられました。死については考えたことがあっても、植物人間になる想像はなかなかできません。 生まれた時から植物状態の母があたりまえの状況の娘。そんな母と共に生きる家族のお話です。 なか...
自分が、夫が、家族が植物人間になってしまったら?という、考えたこともないようなことを考えさせられました。死については考えたことがあっても、植物人間になる想像はなかなかできません。 生まれた時から植物状態の母があたりまえの状況の娘。そんな母と共に生きる家族のお話です。 なかなか受け入れることができない父や祖母でしたが、死を間近に祖母が、病室のみんなに立派だと声をかけたシーンは胸を打たれました。 吉田さんは、長年あの病棟にいて何を思ったのだろう。言葉を飲み込んでしまったので私にはわからなかった。 主人公は、どんな人だったのかと聞かれて戸惑っていたけれど、自分の娘にどう説明しようかと考えていて、手をつなぐのが上手な人と思い至ったところが素敵だと思いました。 私も、息子の手を引っ張ってしまうし祖母の手とと同じだな、と。 読み手の問題であるとはわかりつつも、病院のセキュリティ大丈夫なのかとか、なんでこんな行動を?と邪念がでてきてしまったのが残念でした。 時々、知らないうちに時が経っていたり、誰のセリフかわからないようなこともあって戸惑いました。 続編はないでしょうが、母の死後、父親が交際相手とどうなったのか、主人公がどんな人生を歩んだのか、が気になりました。
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植物状態の母に対する主人公の心情にそっと寄り添うような文章で、主人公と一緒に病室を訪れているような気分だった。物心ついた時には母が植物状態だった主人公と、元気でいたころを知っている父や祖母とで、母に対する感覚が違う描写になるほど、と思った。
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死と向き合う作品は多く読んできたが、生と向き合う数少ない作品だと率直に感じた。植物人間という状態に向き合いながら、生きることはなにかを我々にといかけてくれる。空っぽになってもそこには 生命があり、幸せが存在する。当たり前の価値観とはなにかを再認識した作品です。
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母娘の在り方というものについて考えさせられました。そして何より、生きていることの大切さを教えてくれる、生きていることで与えられる希望があるのだと気づかせてくれる作品でした。この物語に先があったとして、この母娘がまた繋がれますようにと願ってしまいます。 母娘の物語ではありますが、よくある共に成長していく作品とは異なります。母は植物状態のまま年老いて行き、娘は小さな頃から大人になるまで母を介助し育って行く。そしてその内容は実に生々しく、しかし生々しいからこそ、私の想像とは異なる娘の成長を見て言い表せないような気持ちになりました。 朝比奈秋様の作品は初めて読ませて頂きました。他の方と同様の意見で淡々と物語が進んでいき、読みやすかったです。しかし、サクサクと読めてしまうからこそ、展開が頭の中でスピーディに映像化され、少々失礼な表現にはなりますが気持ち悪く感じてしまうほどの生々しさがありました。(良い意味です!) もし、これから読む方がいるなら… ⚠️少しもネタバレしたくない人はこの下見ないで 「呼吸」 というキーワードを拾いながら娘の成長を見届けてください。
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「あなたの燃える左手で」で、独自の視点が並々ならぬ才能と出会って、稀有な作品が完成するのに驚いた。きっとこの作品もそうだろうと確信して詠んだ。 誰かの役に立つことが生きることの意味だ、とよく言われることだ。また、それを生きる意味としてしまうと、誰かの役に立てない人の存在価値を否...
「あなたの燃える左手で」で、独自の視点が並々ならぬ才能と出会って、稀有な作品が完成するのに驚いた。きっとこの作品もそうだろうと確信して詠んだ。 誰かの役に立つことが生きることの意味だ、とよく言われることだ。また、それを生きる意味としてしまうと、誰かの役に立てない人の存在価値を否定することになる、という意見も。 存在すること、それこそが生きる意味だと、私も思う。それを理念として表出するだけでなく、小説という形で提示してくれた、と思う。 息をするというだけで存在した母が、存在するということの重さを示す。 最後は泣けました。 朝比奈秋さん、追っていこうと思う。
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朝比奈秋先生3作目 こちらも文句なく素晴らしい作品でした! 植物人間状態の母と少しずつ成長していく娘 濃厚な関係なようで透明な空気が漂っていました 毒親等母と娘のこじれた関係の物語が最近は多く その中でも母の規範意識に囚われた娘というパターンが多いかと この話では 娘も母から...
朝比奈秋先生3作目 こちらも文句なく素晴らしい作品でした! 植物人間状態の母と少しずつ成長していく娘 濃厚な関係なようで透明な空気が漂っていました 毒親等母と娘のこじれた関係の物語が最近は多く その中でも母の規範意識に囚われた娘というパターンが多いかと この話では 娘も母からの依存を欲していて 「母と息子」ではこの物語は描けなかったと思います 「母と娘」には何か独特なものがあると感じました 医療を元にしたリアルな表現が今回も効いていました
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植物状態の人と長く関わっていたこともあり、重たいけれど身近なテーマだった。 当時の記憶が呼び起こされたのが、視線の描写。 パッと突然目が開いて、まるで意思を持っているかのように視線が彷徨う。 その人が身近であればあるほど、こちらの世界に帰ってきてくれるのでは?と思ってしまう。 母...
植物状態の人と長く関わっていたこともあり、重たいけれど身近なテーマだった。 当時の記憶が呼び起こされたのが、視線の描写。 パッと突然目が開いて、まるで意思を持っているかのように視線が彷徨う。 その人が身近であればあるほど、こちらの世界に帰ってきてくれるのでは?と思ってしまう。 母が元気だった頃を知る祖母や父と、植物状態の母しか知らないみおの心情の対比が、うまく物語を形作っているように感じた。
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芥川賞おめでとうございます。 こちらの作品も素晴らしいです。静かに泣きました…。すごく複雑な感情や事柄をそっと緻密に描かれていて、聡明な作家さんですねぇ。統合失調症の母親と重ねあわせてしまい号泣…
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静かに物語が進む。 このような状況下では人の想いが錯綜して 物語が黒くなっていきそうなのに、深みを持ちつつ 終始透明感を保っている。 人がただ存在することの影響力を 深雪さんを通じてひしひしと感じる。 そして人を人として扱うことで通じ合う、という事実も。 著者名・柔らかで...
静かに物語が進む。 このような状況下では人の想いが錯綜して 物語が黒くなっていきそうなのに、深みを持ちつつ 終始透明感を保っている。 人がただ存在することの影響力を 深雪さんを通じてひしひしと感じる。 そして人を人として扱うことで通じ合う、という事実も。 著者名・柔らかで丁寧な描写にてっきり女性と思い込んでいたら 芥川賞受賞会見を見てびっくり。 ジェンダーバイアスってとれないもんだなあ・・自分に落胆。
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重いテーマなのに 登場人物の皆さんがわりとあっさりしてて、 医療の現場って、本当の様子と、 ドラマや映画で映し出されてる様子と、 きっと両方あるんだろうけど 自分がそこに身を投じないとわからないんだな と思いました。
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