WILDERNESS AND RISK 荒ぶる自然と人間をめぐる10のエピソード の商品レビュー
名著「空へ」「荒野へ」の著者の、魅力的な10編のエッセイ。タイトルの「荒ぶる自然と人間をめぐる10のエピソード」というよりも、「荒ぶる人間と荒ぶる自然をめぐる・・・」という感じ。 海、山、洞窟、砂漠で・・・優れた書き手なしには、人間の極限の営み、思考を辿ることはできない。
Posted by
ノンフィクションを専門に書くライターはそう多くはない。まずノンフィクションはフィクションに比べて金にならない。売上や映像化などによる派生収入が得られる可能性はフィクションに比べて小さい一方、取材に要するコストは大きい。 だからこそ、私は優れたノンフィクション・ライターは最大限の...
ノンフィクションを専門に書くライターはそう多くはない。まずノンフィクションはフィクションに比べて金にならない。売上や映像化などによる派生収入が得られる可能性はフィクションに比べて小さい一方、取材に要するコストは大きい。 だからこそ、私は優れたノンフィクション・ライターは最大限の賛辞が与えられてしかるべきだと思っている。そして、現存するノンフィクション・ライターの中で、最も私が信頼するのが著者、ジョン・クラカワーである。 私が彼を知ったのはアメリカのカレッジ・フットボールチームによる性虐待事件とそれを隠蔽しようとする地方都市の力学を描いた『ミズーリ』においてであった。一方で彼自身の作品からすると同書はやや異色である。彼の出自は山岳ルポライターであり、彼の名を一躍有名にした3作目の『空へ』は、たまたま同行したエヴェレスト登山パーティで巻き起こった遭難事件を題材としたものである。人間の限界を超えた雪山で、どのように人が亡くなっていくのかというリアルをこれほどまでに感じさせてくれる文章というのは、この世界においてそうそうないだろう。 前置きが長くなってしまったが、本書は著者のデビューまもない時期に書かれた10の断片を寄せ集めた1冊である。そうした特性上、10のテーマは全てが登山に関するものではなく、プロサーファー、深い洞窟に潜り未知の微生物を探し求める科学者など多岐に渡る。それでも、その全ての共通するのはタイトルにあるような”自然”そのものであり、どのようなテーマであってもそこに”自然”の要素が絡む限り、一級の読み物を構築できる著者の手腕が発揮されている。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
巨大な波に乗るサーファーや人類未踏の山へ登頂するクライマーなど、自然と人間に関する様々な実話。 荒野療法に関する話が興味深かった。映画やテレビでも子供を対象としたとても厳しい更生施設などは見たことがあったけど、実際に死者が出ている事例は知らなかった...
Posted by
中国系アメリカ人サーファー マーク・フー 1995年 カルフォルニア ビッグウェイブ サーフィン 10mを超える波 広告塔としてのサーフィン 1994年12月23日 マーベリックス 100人とカメラの前で波に飲み込まれて死亡 レチュギア洞窟 1995年 壁に腐食...
中国系アメリカ人サーファー マーク・フー 1995年 カルフォルニア ビッグウェイブ サーフィン 10mを超える波 広告塔としてのサーフィン 1994年12月23日 マーベリックス 100人とカメラの前で波に飲み込まれて死亡 レチュギア洞窟 1995年 壁に腐食残留物 微生物の有機性排泄物? 独立栄養生物 熱水噴出孔 鉱物からエネルギーを得る 火星にも地中に? シュイナード・イクイップメント社 1986年 ティトン山脈で クライミング用ハーネス原因?の滑落死亡事故 裁判費用、保険料高騰、示談金高騰 誰かが小さなミスをした 元社員がブラックダイアモンドを立上げ 荒野療法 1995年 自然が人の魂を癒す ブリガム・ヤング大学 モルモン教 ノーススター社 63日間 800キロ 13900ドル 最小限の装備と食料で荒野に放り出す 死亡を含む多数の事故 建築家クリストファー・アレグザンダー 1985年 設計は現地で 建築を進めながら修正し続ける 盈進学園 東野高等学校校舎 大地の生と美のための建築 せめぎ合いからの創造 良い建物は生きている ゴシック様式教会 日本の寺 アルプスの山村 パタン・ランゲージ 1977年
Posted by
自然と人との驚くべきノンフィクション短編集です。ビックウェーブを求めるサーファー、世界最高峰エベレストで働くシェルパ達、問題を抱えた青少年を荒野に放り出す更生プログラムなど、死と隣り合わせの状況が克明に書かれています。その原因は厳しい自然と人為的なものでした。
Posted by
山と渓谷社の山の本ってとことん山!!!みっちり山!!!って感じで、正直読んでて飽きてしまうことが多い。エヴェレスト、K2、難攻不落の北壁、、、などと言われてもイメージ出来ない。土地勘ないしそこまで山詳しくないし、そもそも海外の山とか環境とか文化とか全くの異世界すぎて分からない。写...
山と渓谷社の山の本ってとことん山!!!みっちり山!!!って感じで、正直読んでて飽きてしまうことが多い。エヴェレスト、K2、難攻不落の北壁、、、などと言われてもイメージ出来ない。土地勘ないしそこまで山詳しくないし、そもそも海外の山とか環境とか文化とか全くの異世界すぎて分からない。写真を見ても、綺麗だなぁーとしか思えないし、そもそも知らない山が多すぎて調べるの疲れるし、、、。 ただ、この本はとことん山って感じの本ではなかった。 なんか山と渓谷社発刊の新聞の社説って感じ?笑笑 アウトドアに関連した社会問題全般を取り扱う本で、決して登攀だけに焦点を当てたものではなかった。私的には集中力が続きやすくてGOOD。またなんせ火山の噴火や荒野療法など興味の湧く内容ばかりだった。 ジョン・クラカワーが一編を読者を物語に引き込むように文をとても綺麗に構成していたのも魅力の1つだと感じた。一番最初に時系列が現在から始まって、そこに至るまでの過去に遡る。最初は意味のわからなかった現在の物語に段々と色が付いていく感じ。そして最後はその現在からこの文が書かれた瞬間まで進む。 最後の章にあった、『苦しみを抱きしめて』。 意味のないことに意味を見出すことの大切さを改めて実感したように感じた。
Posted by
- 1