1,800円以上の注文で送料無料

ここはとても速い川 の商品レビュー

3.4

33件のお客様レビュー

  1. 5つ

    5

  2. 4つ

    5

  3. 3つ

    14

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2025/12/14

「ここはとても速い川」 施設で暮らす主人公「集」は5年生。 一緒に生活している一つ下の親友「ひじり」とのやり取りや、ひょんな事から知り合う若者「モツモツ」と決行したある作戦、夏休みの宿泊訓練など、日々の出来事が集の目線で語られます。 ダダーっと一気にしかも次々に話題が移っていくこ...

「ここはとても速い川」 施設で暮らす主人公「集」は5年生。 一緒に生活している一つ下の親友「ひじり」とのやり取りや、ひょんな事から知り合う若者「モツモツ」と決行したある作戦、夏休みの宿泊訓練など、日々の出来事が集の目線で語られます。 ダダーっと一気にしかも次々に話題が移っていくこの文体がすごくいい。整っていなくて子どもが話しているそのままの感じ。あっちこっちに飛びながら時々フッと出てくる言い回しや比喩によって、この世界にググッと近づく感覚が読んでいておもしろい。 子どもらしい文章の中に急に差し込まれる、集やひじりの抱える問題にギクッとしたり。集の心境が垣間見えて切なくなったり。出てくるアイテム(亀ゼリー、スライム、アガパンサス、絶品チーズバーガー…他多数)もいちいち情緒的。 「膨張」 主人公「あいり」は特定の定住する住居を持たず、ゲストハウスやホテルなどを転々としています。 こちらもあいり目線で心情がつらつら移り変わっていく文体。そこに乗っかってあいりを追体験しようとするのですが、掴みどころがない。なんとかくらいつくもラストでは見事に振り落とされました。えーっ?何なに!? これは、他の井戸川作品も気になる〜

Posted byブクログ

2025/08/12

本のタイトルになっている「ここはとても速い川」と著書のデビュー作である「膨張」の2編を収録。 「ここは-」は主人公の少年の関西弁による1人語りの形式ですが、方言で書いてあることに加えて、子どもならではの話の飛躍も多く、話の筋がよくわからなくなるところがあちこちにありました。 た...

本のタイトルになっている「ここはとても速い川」と著書のデビュー作である「膨張」の2編を収録。 「ここは-」は主人公の少年の関西弁による1人語りの形式ですが、方言で書いてあることに加えて、子どもならではの話の飛躍も多く、話の筋がよくわからなくなるところがあちこちにありました。 ただこれが、第三者目線で筋道立てて展開される物語であれば、全く印象は変わっていたはずです。 これまであまり小説をたくさん読んできた方ではないですが、「わからなさ」をラッピングで包まず、そのままわからないものとして差し出す潔さ。それをアリとして受け入れる小説という表現の懐の深さを改めて感じました。

Posted byブクログ

2025/08/05

◼️ 井戸川射子「ここはとても速い川」 連ね続けられる文章、別れが、刺さる。野間文芸新人賞。 井戸川射子は芥川賞を取り、書評も見かけたので興味を持っていた。地元の人らしく、関西弁がからむ文章。詩人でもあるそうで、表題作と小説処女作の「膨張」、どちらも80ページくらいの作品が収...

◼️ 井戸川射子「ここはとても速い川」 連ね続けられる文章、別れが、刺さる。野間文芸新人賞。 井戸川射子は芥川賞を取り、書評も見かけたので興味を持っていた。地元の人らしく、関西弁がからむ文章。詩人でもあるそうで、表題作と小説処女作の「膨張」、どちらも80ページくらいの作品が収録されている。 さまざまな事情により親と暮らせない子どもたちの施設。小学5年生の集は1つ下のひじりと仲が良い。無邪気なひじりと、淀川の亀にエサをやったり、ボロアパートに住む大学生モツモツと知り合ったりと活動的に暮らしている。集は入院先の祖母の元へ通い、ひじりは病気が快方に向かう父親と会っている。親のこと、先生のこと、大人の世界は必ずしも、正しいとは限らないー。 なんか尻切れのあらすじ紹介となった。というのが、集のモノローグのこの作品、日々目にすることや出来事、友人のことを関西弁で連ね連ねて書くスタイルで種々のシーンが現れては消える。もちろん多少大きな動きであったり、集が気に病むことはあるが、基本は少し重たくずっと流れていく感覚だ。 そして喪失が訪れる。ここもさらり、だから余計に刺さる。幼い児童には自分でできることが限られていることを痛切に感じさせるラストになっている。 スタイルは「膨張」も同じでアドレスホッパー、決まった住処を持たずに日々共同ベッドのゲストハウスなどに泊まっている若い女性塾講師の話。ある性癖を持つ同性の恋人がいる。 まあその、読みやすいか、といえばそうではない。でも、「速い川」で感じたように人が暮らす世界には日々何かが関係し屈託も喜びもあるという感覚を伝える手法としては有効かもしれない、と思った。読みにくいが分かりにくいわけではない。また、この書き方に出会ったのは初めてでもない。 これも読書の1つできちんと立っている作品、ふむ、と読み終えたのでした。

Posted byブクログ

2025/01/13

表題作は児童養護施設の小学生の視点でそっけない関西弁で綴られる。なんとなく泣けちゃうんだよー 『膨張』はアドレスホッパーの物語。アドレスホッパーって初めて知った。

Posted byブクログ

2024/12/12

読み始めは中々内容が理解しづらく感じる文体であるが、読み進めていくと著者が作り出す物語の中にまるで沈んでいくようにして浸っていける。そしてそれは現実と離れすぎた内容だからわからないとかではなく、あまりにも現実すぎて物語と認識しづらいような感覚が読者に与えられる。その繊細且つ濃密な...

読み始めは中々内容が理解しづらく感じる文体であるが、読み進めていくと著者が作り出す物語の中にまるで沈んでいくようにして浸っていける。そしてそれは現実と離れすぎた内容だからわからないとかではなく、あまりにも現実すぎて物語と認識しづらいような感覚が読者に与えられる。その繊細且つ濃密な語りは、詩人でもある作者の言葉へのひたむきさと忠誠心だと捉えても良いのかもしれない。ちなみに本の詳細のページ数が288になっているが、手元の2022年12月15日第1刷発行の文庫本はどう見ても162でノンブルが終わっている。

Posted byブクログ

2024/11/07

詩的。文章の密度は濃いが、独特な柔らかいことば遣いの表現は心にしみ入るように伝わってくる。 子どもの心情を深く描き出していると感じた。劇的な展開のある物語ではないが、語り口の柔らかさと伸びやかさが、タイトルに反するように、緩やかな大河の流れを想起させる。

Posted byブクログ

2024/07/21

作者は井戸川射子さん。1987年生まれ。詩集『する、されるユートピア』で中原中也賞、小説である本作で野間文芸新人賞、小説『この世の喜びよ』で芥川賞を受賞。 表題作『ここはとても速い川』は、児童養護施設で暮らす小学生・集(しゅう)が主人公。彼の周囲に存在する、施設や学校の友だち、...

作者は井戸川射子さん。1987年生まれ。詩集『する、されるユートピア』で中原中也賞、小説である本作で野間文芸新人賞、小説『この世の喜びよ』で芥川賞を受賞。 表題作『ここはとても速い川』は、児童養護施設で暮らす小学生・集(しゅう)が主人公。彼の周囲に存在する、施設や学校の友だち、先生、近所の大人らとの関わりや出来事が、彼の視点で描かれる。 本作ではとびきり大きな事件が展開することはない。でも、それがかえって登場人物たちの日常的な欲望、悲しみ、やるせなさを強く印象づけることになっている気がする。集が、施設の園長先生に思いの丈をぶつけ、でもうまく伝わらずに「集は優しいな」と頭を撫でられる場面が良かった。 また、本書に収録されている作品『膨脹』では、定住せずにいろんな場所を転々として暮らす「アドレスホッパー」の津高あいりの視点で、『ここはとても~』と同じく、やはり主人公の思考プロセスがダダ漏れするような感じで話が進んでいく。登場人物がみんな必死に生きている感じなのはどちらの作品にも共通しているが、『膨脹』はフェミニズム的視点がより強い印象で、大切な作品だと思った。 自分の頭の中をのぞいた時、私の思考はいつも複数のことを同時並行的に考えていると常々感じている。たった今、目の前で起っている事象について、仕事で次にやるべきことについて、社会問題や抽象的・哲学的問題について・・・など。それぞれ別チャンネルで、短い時間で次々に頭の中で切り替えながら、時には絡み合ってメタ的な新たな視点を思いついたりして。そういう思考の過程をぜんぶ言葉に起こしたような文章。私は本作を読んでいてそのように感じた。 とても特徴のある文体なので、スキマ時間で流し読みすることは難しかった。ある程度まとまった時間を取って、主人公の視点で、主人公の思考をそのまま受け取るつもりで読むことをおすすめする。

Posted byブクログ

2024/07/04

読みにくい文章と言えばそうなる。描写や会話や独り言などが区別されずに書かれる。書かれる内容の展開も、気が散らかっているように、書かれている。意識が一処に留まらず浮ついているような印象も受ける。今の人たちが、どのように何を意識しているかを、意識が捉えたままに、羅列して、意識散漫にあ...

読みにくい文章と言えばそうなる。描写や会話や独り言などが区別されずに書かれる。書かれる内容の展開も、気が散らかっているように、書かれている。意識が一処に留まらず浮ついているような印象も受ける。今の人たちが、どのように何を意識しているかを、意識が捉えたままに、羅列して、意識散漫にありのままに描こうとしているのだなぁと思った。その人となりの意識に沿わせるようにして没入出来るかと言えば、自分は難しかった。

Posted byブクログ

2024/07/03

2つの物語は繊細で、むなしさが残りました。 全てが報われるとは思っていませんし、自分の価値観を押し付けるのは違いますが、やっぱりどこかで報われていてほしいなと思いました。

Posted byブクログ

2024/06/24

二作品収録の細くて薄いそれでいて濃いまるでカルピスの原液のような作品。 まずはじめに、ここはとても速い川ですが、これだけならよかった。少年期の目まぐるしいほど環境の移り変わりが速いなかで彼らはあまり変わることなく過ごしている感じが流されてくように感じて文学としての表現が素晴らしい...

二作品収録の細くて薄いそれでいて濃いまるでカルピスの原液のような作品。 まずはじめに、ここはとても速い川ですが、これだけならよかった。少年期の目まぐるしいほど環境の移り変わりが速いなかで彼らはあまり変わることなく過ごしている感じが流されてくように感じて文学としての表現が素晴らしいと思いました。その刹那さに心がグッときます。 ただ最後の膨張に関して言えばなんだかよくわからない、どう消化すればいいのか、あるいは噛み砕けばいいのか、終わり方もパッとしません。共感が持てないのも原因かもしれませんが、おそらく概念にない話なので僕は読んでも何も思いませんでした。ただよく書けている。と言った具合です。文学としては完成していると思います、ただ好きじゃない。それだけですので総合的に星3つです。

Posted byブクログ