郵便局 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
最近、ブコウスキーの長編が河出文庫で一気に復刊して入手しやすくなり、ひととおり備蓄できたが、本作は少し前に光文社で新訳となったもの。最初のブコウスキーとするのに程よい分量と内容。読むまではアウトロー的なイメージを持っていたが、勤務状況は真面目な反面、当時の〇ハラ行為が当然な中への怒りや反攻が多く、現状、ブコウスキーの分身たるチナスキーを応援したくなってしまう。ハラスメントが当たり前の時代の読者と現代のそれとでは、明らかに読み方も違うのだろうが、彼の無頼な生き方にはどこか憧れるし目を離せないし、求心力のある物語だった。チナスキーの物語はたくさんあり、今度は「くそったれ少年時代」を読むつもり(しかし原題に比べタイトルひどいね)。
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これは傑作。 酒に女にギャンブルと、いつものダメ男チナスキー。 配達なんて楽勝。何なら女ともヤれて俺にピッタリの仕事じゃね? と始めた郵便局の仕事。 だが、そんな簡単にいくはずもなくて労働はめちゃくちゃキツい。しかも上司はクソ野郎で、キツい区域を任されたりする。 最悪、辞めちまっ...
これは傑作。 酒に女にギャンブルと、いつものダメ男チナスキー。 配達なんて楽勝。何なら女ともヤれて俺にピッタリの仕事じゃね? と始めた郵便局の仕事。 だが、そんな簡単にいくはずもなくて労働はめちゃくちゃキツい。しかも上司はクソ野郎で、キツい区域を任されたりする。 最悪、辞めちまったらいいんだ。なんて思いながらも、10年以上もそんな仕事を続けてしまう。 かつてはこんなダメな奴もいるんだ、なんて思いながら読んでいたブコウスキー作品。 だが、いつの間にかチナスキーは俺なんじゃねえか? と思いながら読んでいる。 それもあって訳者である都甲幸治の解説も自分ごとのように刺さった。 ブコウスキーは齢50にして運良く抜け出せた。だが、そうでないものは8時間労働から抜け出せない。生活のために死ぬまで働き続けないといけない。 その苦しさが『郵便局』には描かれている。
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8/17 自虐的なユーモアで笑える小説家なのだけど、作者の言葉を深く読み解こうとすると苦しくなってくるね。 厳しい条件に張りつけらられて有無を言わさずこき使われる労働。そんな労働に対するチナスキーの戦いはいつも頼りなく有耶無耶に空に消えていく。もう少しで労働者の仲間入りするっての...
8/17 自虐的なユーモアで笑える小説家なのだけど、作者の言葉を深く読み解こうとすると苦しくなってくるね。 厳しい条件に張りつけらられて有無を言わさずこき使われる労働。そんな労働に対するチナスキーの戦いはいつも頼りなく有耶無耶に空に消えていく。もう少しで労働者の仲間入りするってのに、この本を読んだら嫌になっちゃうよ。でも、自分はブロウスキーのように詩や小説は書けない。ピアノで皆が楽しむ曲をかけない。持たざる者は一日中8時間の労働を衰える迄続けるしかないんだよ。
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俺はブコウスキー氏の本は全部好きだけど、トコウという翻訳家のやつが特に好きだと気付いたんだ。 だから、俺はこれから彼が推してる本を追って読んでくとするよ(ブコウスキー風に)
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大好き ひたすら労働に人生を奪われる話なんだけど、そこから完全に抜け出すこともなく大きな何かを成し遂げるわけでもないけど、ただひたすら働いてるだけだけど、チナスキーがずっとチナスキーらしく生きてるのがすごく好きだった
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90年代後半だろうか、日本でもブコウスキーの本が次々に出ていた時期があって評判だったとの記憶があるが、酒と女、無頼派的作家という先入観があり、当時読もうとは思わなかった。古典新訳文庫入りということで、初めてブコウスキーを読んだ。 “無頼”と言えば確かに無頼の生活をしていると...
90年代後半だろうか、日本でもブコウスキーの本が次々に出ていた時期があって評判だったとの記憶があるが、酒と女、無頼派的作家という先入観があり、当時読もうとは思わなかった。古典新訳文庫入りということで、初めてブコウスキーを読んだ。 “無頼”と言えば確かに無頼の生活をしているということになるだろう。酒、煙草、女、競馬。それらが(訳文のせいもあるだろうが)余計な修飾もなく荒っぽい文章で書かれているため、主人公は、好きなときに好きなように暮らしているように見える。 それはある面その通りなのだが、生活をしていくためには人間は仕事を持ち、働かざるを得ない。その仕事の在りよう、特にその理不尽さを、具体的に生々しく描いている。 主人公が勤めるのは、初めは代用の郵便配達人から正規職員に。一度退職した後仕分け係に。何せ本書は、アメリカ合衆国ロサンゼルスの郵便局長事務所事務連絡文書「倫理綱領」から始まる。どれだけ配達や仕分けの量があろうが関係なく、時間に追われる毎日の労働。何かあればすぐ警告書(これは主人公チナスキーだけかもしれないが)。そうして働く者たちは日々疲弊していき、本書でも何人かがそうして倒れていく。そこには労働者間の連帯も何もない。ただただ働かされ、多くの者は辞めていき、ごく幸運な者が管理部門へと回される。チナスキー自身も、遂には目眩に襲われ精神的にも不安定になり、退職することに。 しかし、彼には文学があった。本書は、次のように終わる。 「朝になると朝になってて、おれはまだ生きてた。 ひょっとしたら、小説を書けるかも、とおれは思った。 そして書いた。」 主人公チナスキーは何人もの女と寝て、生活を一緒にしながらも別れを繰り返す。子どもまでできたのにその母娘とも別れてしまう。そんな状況なのだが、本書は読んでいて実に面白い。自分の生きたいように生きる、そんな主人公の破天荒さが、読む者に爽快感を与えてくれるから。
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ダメさがいい。 安定のダメなやつチナスキー。 いっつも酒とタバコと女とギャンブル。 それらと淋しさが同居してる。 たまにブコウスキーが欲しくなる。
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誰にも捧げられないフィクション。とはいえ著者チャールズ・ブコウスキーの体験を元にしている。主人公チナスキーは楽勝な仕事と勘違いして郵便局の非正規職員になる。ところが配達の大変な雨の日は正規職員が休み、どんなに配達量が多い日でも規則の時間厳守を言い渡される、とても厳しい環境だった。...
誰にも捧げられないフィクション。とはいえ著者チャールズ・ブコウスキーの体験を元にしている。主人公チナスキーは楽勝な仕事と勘違いして郵便局の非正規職員になる。ところが配達の大変な雨の日は正規職員が休み、どんなに配達量が多い日でも規則の時間厳守を言い渡される、とても厳しい環境だった。そんな状況でも上司からの警告、指導を無視してなんとか生きるチナスキーはとても面白い。ただ時々、日々の仕事に擦り切れ、歳をただただ取ってしまった人物への同情、悲哀が出てきてどきっとさせられる。日々のつらさ、逃れられなさ、そしてその偉大さをわかりやすい言葉で書いた文学。
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