こうしてイギリスから熊がいなくなりました の商品レビュー
いやあ,なんて説明したらいいか分からないです.イギリスでの熊を描く8つの短編からなりますが,大人の童話,かな? 必読です.
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※このレビューにはネタバレを含みます
・あらすじ かつてイギリスにいたという、恐れられたりたまに敬われたり地下で下水道掃除してたり戦ってたりしてた熊たちのちょっと不思議な短編集。 ・感想 短編だけど世界観は繋がってる。 不思議な雰囲気のイラストが沢山収録されてた。
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1 精霊熊 2 罪食い熊 3 鎖につながれた熊 4 サーカスの熊 5 下水熊 6 市民熊 7 夜の熊 8 偉大なる熊 「先に読むことをお勧めする」というあとがきにある通り、8つの短編(真珠)が糸で繋がって首飾りになってるような。訳者は「中編小説」と評していたがまさにそんな感...
1 精霊熊 2 罪食い熊 3 鎖につながれた熊 4 サーカスの熊 5 下水熊 6 市民熊 7 夜の熊 8 偉大なる熊 「先に読むことをお勧めする」というあとがきにある通り、8つの短編(真珠)が糸で繋がって首飾りになってるような。訳者は「中編小説」と評していたがまさにそんな感じ。それぞれに異なる手触りの幻想性、ユーモラスさ、底冷えする恐怖、人間のいつもの身勝手さ、登場人物全ての生き物としての物悲しさがある。並べるとグラデーションをより楽しめるし、最も気に入った章が他の印象も引き上げる。 1000年前に国内の熊を絶滅させたイギリス人だからこそ書くテーマ、読み込める空気なんだろか。 身なりのいい下卑っていうか、こういうのは海外小説の味っていうんですかね。 8編どれもいいけれど、潜水夫の熊を書いた「市民熊」がいいなぁ。 デイヴィッドロバーツの陰鬱キュートなイラストも、熊の目には猜疑心や諦めが、人間には愚かさが見事に描かれていて文章とマッチしてる。
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短編集だけど順番に繋がってはいる。熊たちの漫画のような行動はさておき、一部ノンフィクションのような気もする。タイトルから連想されるようなおとぎ話というよりかは、どちらかと言えば神話めいている。「イギリスの熊神話」的な。ひょっとしたら世界中の神話も、こうやってフィクションとノンフィ...
短編集だけど順番に繋がってはいる。熊たちの漫画のような行動はさておき、一部ノンフィクションのような気もする。タイトルから連想されるようなおとぎ話というよりかは、どちらかと言えば神話めいている。「イギリスの熊神話」的な。ひょっとしたら世界中の神話も、こうやってフィクションとノンフィクションをミックスして出来ているのかな… とりあえず今掴めているのはこれくらい。あとは読んできた内容・情景が蜃気楼のように今も脳内でゆらめいている。自分の頭において、ここまでレビューに困る作品は久々かもしれない。 現にイギリスには野生の熊が生息しておらず、本書では彼らがいなくなるまでの経緯を時代ごとに辿っている。語りのスタイルが(恐らく)著者の想像に史実を加えたものであるため、神話めいて見えるのはそのせいかもしれない。 灯りが発達していなかった時代に夜の悪魔として恐れられていた「精霊熊」、人間の格好で危険なパフォーマンスを強いられていた「サーカス熊」、ロンドンの下水で雨水などを川に流す労役につかされていた「下水熊」など、本書では8種のイギリス熊が登場する。 全体的な印象としてはみんな賢くて、獰猛で、静か。 知恵が回り、時には非情に手を下す。ラスト2章の「夜の熊」「偉大なる熊」においては、どこからともなく現れ人間にすら気配を感じさせない静けさをたたえていた。こうやって振り返ると、彼らはグレートブリテン島にしばし降り立っていた神の化身とすら思えてくる。 化身でいうと、人間のフリをして生きていた「市民熊」が自分にとっては強烈だった。 そのシチュエーションはさることながら、何でそうなったのかが読んでも分からず…。思わず訳者あとがきと解説に助けを求めてしまった。(ある程度助けになったので、他のお話でも混乱した際はここに駆け込むことをお勧めしたい) 「市民熊」は終始潜水服に身を包み、素顔を見せなかったという潜水士(あるいは潜水熊?)ヘンリー・ハクスリーと、人間の相棒ジム・ストゥーリーの物語。潜水士をしながら、いったい彼は何を見てどう感じていたのか…。挿絵を参考にしても、潜水ヘルメットをされていては何も伝わってこない。 人間のフリをしていたというのはあくまで推測みたいだが、熊が熊で在れなくなった原因から考えていく必要がありそうだ。 昨年日本国内でも、熊が住宅街で発見されたり住民を襲撃するといった事件が多発していた。熊と人間との共生を巡って、人間同士の意見が対立する様子もメディアでよく報じられていた。 動物園くらいでしか熊に会ったことがない自分には何も意見が出せず、読後の今もどうすれば良いのか分からずにいる。 ただ一つ。 本書を通して伝わってきたのは、天下の大英帝国でも共生に四苦八苦していたこと。 国中から熊がいなくなるとはどういうことなのか…。そう思いを巡らす読者の心に影を落としていくことだろう。
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文学とか漫画での熊の表象に興味をもって手に取った本なので、訳者あとがきでの、イギリスにおいて熊を取り巻いていた状況の解説と、作者の姿勢を考察しているくだりになるほどなあとおもった。とりわけ前半の作品では、熊を「わたしたち」(便宜上)の風刺のために擬人化するだけでなく、熊をそんなふ...
文学とか漫画での熊の表象に興味をもって手に取った本なので、訳者あとがきでの、イギリスにおいて熊を取り巻いていた状況の解説と、作者の姿勢を考察しているくだりになるほどなあとおもった。とりわけ前半の作品では、熊を「わたしたち」(便宜上)の風刺のために擬人化するだけでなく、熊をそんなふうにまなざす「わたしたち」とは何かというメタ的な視線が前景化していたようにおもう。後半は話の軸足が「わたしたち」から熊に移った印象がある(特に最後の2篇)けれど、熊を共感の対象として描くのではなくて、あくまでも異質な存在であるとした上で熊にとっての解放を書く、というのが一貫している。訳題は『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』で、他者との差異によってアイデンティティが規定・確認・強化されていくのだとすれば、熊という他者を失った「わたしたち」のアイデンティティ自体も失われるのかも。
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イラストのおかげか、ちょっと文字の多い絵本のように感じた。挿絵は苦手なことが多いのだが、この本では話にぴったりだったせいか読了して振り返るとなかったら物足りなかったかもしれない あと、巻末の訳者あとがきによる熊史もためになる内容でお得感が高かった
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哀愁を感じる熊たちの物語だった。 数世紀前の動物に対する残酷な扱いが物語の背景にあって皮肉めいた寓話。 デイビッド・ロバーツの挿絵が世界観にピッタリ。 解説を読んでイギリスには実際に熊がいないことを知った。最後の話はタイトルに繋がっていて、子どもの頃にこの物語を聞かされたら本当...
哀愁を感じる熊たちの物語だった。 数世紀前の動物に対する残酷な扱いが物語の背景にあって皮肉めいた寓話。 デイビッド・ロバーツの挿絵が世界観にピッタリ。 解説を読んでイギリスには実際に熊がいないことを知った。最後の話はタイトルに繋がっていて、子どもの頃にこの物語を聞かされたら本当のことと信じてしまうかもしれないと思った。
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タイトルどおりの結末へ導かれる八篇。 挿絵があるので、奇妙なお伽話のような読み心地でした。 どうして熊が愛されるのか。人間性を見出そうと試み続けられ、古今東西あらゆるキャラクターになっているのか。 考えてみると確かに不思議です。
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初読。挿絵が多くてびっくり。「サーカスの熊」「市民熊」がよかった。あとがきと解説ですこしわかったような気になった。
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なんとも不思議な本である。 イギリス人は熊を絶滅させてしまったと言う話は聞いていたので、熊絶滅に至る物語を時代を追ってやや幻想風に書いた連作かな、と思って読みはじめたのだが。 どうも、必ずしもそうではなさそうだ。 どこまでが史実で、どこが寓話で、どこからが伝説なのか、奇妙にぼやけ...
なんとも不思議な本である。 イギリス人は熊を絶滅させてしまったと言う話は聞いていたので、熊絶滅に至る物語を時代を追ってやや幻想風に書いた連作かな、と思って読みはじめたのだが。 どうも、必ずしもそうではなさそうだ。 どこまでが史実で、どこが寓話で、どこからが伝説なのか、奇妙にぼやけてわからない。 途中までは、たしかに伝承に基づいた実話だろう。熊は森では恐れられ、サーカスでは虐待されてきたのだろう。だが、その先は? 史実として熊が下水掃除をしたり、潜水士をしていたわけがないと思う。 この辺は寓話なのだろう。 だが、その光景は妙に心に届く。 たぶんこの本は、伝承であり、史実であり、寓話であり、伝説であり、幻想なのだろう。 それにしても、熊たちが受けてきた理不尽な虐待には心が痛み、暗い気持ちになる。 イギリスを去っていく熊たちの姿が見えるような。 そんな気持ちになる一冊でした。
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