喪を明ける の商品レビュー
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作中では詳細な描写はないが、「東京変災」による東京が壊滅的な被害を受けた近未来が舞台となっている。東京には人が住むことができず、日本は、アメリカの51番目の州になるか、中国に支配されるかの選択に迫られている。そんな世界が舞台となっている。 そのような世界で、東京を離れ、仮設住宅での生活の中で一人娘のカヤを1歳半で失い、妻、来香と別れた元漫画家、優斗。優斗は、名古屋の実家に帰り、靴職人の父、卓弥との生活を始める。 卓弥は、東日本大震災に遭い、靴職人を辞め、主夫として生活していた時期がある。妻である夏美は、不治の病により、この世界では許されている「安楽死」を選んでいる。卓弥は、夏美が自分を捨て、死を選んだことに、長年、わだかまりを感じていた。 優斗と卓弥についての、いくつかのエピソードが重ねられている作品で、ミステリ的な要素は薄い。 優斗のエピソードは、警備のバイト先で知り合ったクオンというベトナム人とのエピソード、海底のゴミ拾いのVRゲームの中で、「ケセラ」と名乗る人物に出会うエピソード、「タイガとナズナ」という漫画を描き始めるエピソードといったところ。 卓弥のエピソードは、革靴のスニーカーを直してほしいという依頼から井口隆史という作家と知り合うエピソード、那岐藤太という依頼主から子供の靴の作成を依頼されるエピソード、友人である、師である畠中に靴を渡すために三島に行くエピソードなど。 こういったエピソードを積み重ねる中で、優斗は来香とカヤとの関係を、卓弥は、夏美、優斗との関係を振り返っていく。 優斗のクオンとのエピソードでは、クオンが反社会的な危険人物で、何かの事件を起こすのではないか、といったミスリードを誘う。実際は、クオンは、自身の甥が巻き込まれた事件の捜査となる手がかりを警察に渡していた。また、畠中の娘、ケセラは、優斗のパートで、海底のゴミ拾いのVRで出会い、米軍基地を襲うような思想の持主ではないことが分かる。 このような若干のミスリードを入れつつ、物語全体はハッピーエンドの方向で決着がつく。 優斗は、「タイガとナズナ」の漫画を描き始め、来香と連絡を取り、卓弥は、夏美の最後の言葉の意味を知り、夏美との思い出に区切りをつけ、後継者となり得る少年「ノア」と出会う。 クオンやケセラとの関係では、若干の伏線も交え、ミステリらしさも少し感じさせるが、全般的に、思いついたエピソードが羅列されている。世界観の掘り下げも浅く、最後は、「これで終わり?」という印象だった。 つまらないという印象ではないが浅く、どこかで聞いたようなエピソードの集まりといった感じ。 総合してみても、評価としては★2程度か。
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2023.07.22 取り上げられているトピックひとつひとつは未来予想として非常に興味深い。しかし、ストーリーは何かピンとこないままに終わってしまった。
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最後まで読みましたが、 自分には難しかった 読みやすかったし展開が早かったが 理解するのに苦労しました
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尊厳死が認められる時代を描いた近未来小説。 闘病の末死を選んだ妻に「なぜ」と問い続ける靴職人の夫。東京で被災し、幼い娘を亡くして妻と別れ、名古屋の実家に戻ってきた、空っぽの息子。二人のぎこちない生活が始まり、それぞれの視点でそれぞれの生活が語られていく。 事情ははっきりとは語られず、父と息子の言葉から推測を重ねるしかない。ここで出来事は主要なことではなく、その出来事の受け止め方が問題となるのだろう。読み手それぞれが思い巡らす余地が大きい作品だと思う。
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近未来の日本。 もはやこれくらいではSFだとは感じないくらいに最近の技術の発展は速いので、普通に読めた。内容も、よかった。 ただ読後、「この展開は予想できない!」という帯が、かなり悪いと思った。
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伴侶に先立たれ、名古屋でひとり暮らしをする 老靴職人・楢原卓弥のもとに、一人息子の優斗が 東京から戻ってきた。親子のぎこちない共同生活が 始まるが…。近未来の日本を舞台に、模索する 人間を描いた物語。
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