闘う図書館 の商品レビュー
序章 図書館がつくる民主主義 第1章 地域変革の触媒としての図書館 第2章 博物館・図書館サービス機構の誕生 第3章 インターネット時代の図書館 第4章 博物館・図書館サービス機構の発展 第5章 国と地方をつなぐ州図書館局 第6章 トランプvsアメリカ図書館
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格差拡大という社会問題に直面している現代において、図書館の持つ役割は多様化してきている。アメリカの図書館が理想を求めるなか、どのような障害と闘い、どのように現実と折り合いをつけてきたかが描かれている。 本を提供するという図書館の概念にとらわれず、「場」としての図書館の役割が重要性...
格差拡大という社会問題に直面している現代において、図書館の持つ役割は多様化してきている。アメリカの図書館が理想を求めるなか、どのような障害と闘い、どのように現実と折り合いをつけてきたかが描かれている。 本を提供するという図書館の概念にとらわれず、「場」としての図書館の役割が重要性であることが、具体的事例を添えて挙げられている。伝統的な読書活動や情報提供サービスの枠を超えて、地域や社会の問題に取り組もうとする図書館を支える思想と仕組み、これらがどのように作り上げられたのかがまとめられている。 特に第5章のアメリカ図書館の辿ってきた歴史を見ると、図書館のあり方がよく分かる。図書館が地域に必要な施設であると考えらるようになるのに、ライブラリアンが従来の役割を越えて、様々な組織の接着点として活躍してきたことが大きいと感じた。過渡期において、役割が増大するにつれ、新たな専門性を身につけなければならないライブラリアンのストレスは大変なものであったであろう。 経済的、文化的そして政治的な社会の分断が進行してきている現状に、今後図書館がどのような役割を果たすのか注視していきたい。
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アメリカの図書館活動を日本に紹介し続けてきた豊田氏の集大成。 アメリカの図書館界は恵まれているなと思っていたが、それがライブラリアンたちの不断の努力によって勝ち取られていたことを知り、これまでの考えを改めた。あきらめなければ、夢は叶う。
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アメリカの図書館の、矜持と、使命感と、闘い。そしてその結果。 もちろん、社会構造が全く違うので簡単に比較はできないが、地域情報のインフラたるべく、明確に目標を持ち、政治に働きかけ、結果を出してきた事実は素晴らしい。 とにかくあたしゃあ、図書館に足を向けて眠れません。
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分断されるコミュニティの結節点となることで、その存在意義と機能を発揮していこうとする米国の公立図書館と協会。 日本でのコミュニティの結節点となると、公民館も含まれるだろうか。 しかし発信力となるとどうだろう。公民館や図書館は、市民にリーチできているだろうか。あるいは、公民館や...
分断されるコミュニティの結節点となることで、その存在意義と機能を発揮していこうとする米国の公立図書館と協会。 日本でのコミュニティの結節点となると、公民館も含まれるだろうか。 しかし発信力となるとどうだろう。公民館や図書館は、市民にリーチできているだろうか。あるいは、公民館や図書館を市民に結びつけるとともに、福祉サービスを含めて、それぞれの市民に必要なサービスを提示し、容易に市民からアクセスさせる機能を発揮する行政部門はどこだろうか。闇バイトに手を伸ばす前に、コミュニティに支援を求めればそれが得られる体制があるだろうか。
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2019-2020年にかけて米国の図書館を舞台にする2つの映画――『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』と『パブリック 図書館の奇跡』――が公開された。本書を読んでまず感じたことは、読者がこの2つのどちらの図書館像をイメージしながら読むかによって、読者へのインパクトが異なる...
2019-2020年にかけて米国の図書館を舞台にする2つの映画――『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』と『パブリック 図書館の奇跡』――が公開された。本書を読んでまず感じたことは、読者がこの2つのどちらの図書館像をイメージしながら読むかによって、読者へのインパクトが異なるものになるのではないか、ということだった。 本書の「おわりに」で、著者は、2019年に公開された『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』への反響に触れ「…『なんとも羨ましい限り』という感想に終わりがちなことには、残念な思いが残った」(p.241)と述べ、そのような反応のありかたへのある種の「抗い」として本書が記されたと述べている。しかし、それでもなお「なんとも羨ましい限り」という感想を持つ人たちには、その憧憬の念がそのまま残ってしまうのではないかと思ったのも事実だ。もちろん、本書はこの映画に「なんとも羨ましい限り」と思う人たちにその裏側にあるライブラリアンたちの志の高さや地道な闘いや運動の実態を突き付けるものではある。が、一方でそのようなライブラリアンのありかた含めて、自分とは遠い存在であるかのように感じる人々は存在し続けるのではないか、と思わずにいられない。 一方、『パブリック 図書館の奇跡』で、図書館内のインターネットをフル活用してアダルトサイトを見まくるホームレスのおっちゃんたちを、それでも守ろうとするライブラリアンを思い描きながら、本書を読んでみると、ここで描き出されようとしている「闘い」が、会議室に閉じられた「きれいごと」でないことがありありと伝わってくる。事実、第6章「トランプVSアメリカ図書館」で報告されるスリリングとすらいえるライブラリアンたちの直接民主主義的な闘いっぷり(ロビイングはもちろんのこと、SNSを使った政治的メッセージの発信や、地元議員へのアプローチなど)は、路上デモへの参加すら二の足を踏んでしまう人々にとっては、”過剰に”政治的なものに映るのではないか、とすら思う。「なんとも羨ましい」どころか「そこまでやるの!?」という感じなのではないか。 もちろんこのどちらもが、民主主義的価値観が徹底的に浸透し、民主主義であることが良しとされる米国の風土や制度に支えられていることは確かだ。そうであるとすれば「なんとも羨ましい」部分も「そこまでやるの!?」の部分も含めて、現代の日本の(歴史的に形成された)社会・文化、そして制度のなかで「ライブラリアンシップ」なるものをどのように位置づけ、それを守り、育む仕組みをいかに構築するのかを考えていく必要があるだろう。 本書に書かれている、米国のライブラリアンたちの具体的な政治的な闘いかた、その戦略や戦術のありかたは、現代の日本における戦略・戦術のありかたを考えていくための礎となるだろう。
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日経新聞2022123掲載 評者:中野明(ノンフィクション作家) 読売新聞20221127掲載 評者:中島隆博(哲学者,東洋哲学wiki)
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豊田恭子著『闘う図書館:アメリカのライブラリシップ(筑摩選書)』(筑摩書房) 2022年10月発行 図書館事情のあまりもの違いに驚いた。米国は図書館予算獲得のためのロビー活動が盛んで、ロビー活動専門の部局があるくらいである。デジタル時代への移行期に差し掛かり、「図書館不要論」...
豊田恭子著『闘う図書館:アメリカのライブラリシップ(筑摩選書)』(筑摩書房) 2022年10月発行 図書館事情のあまりもの違いに驚いた。米国は図書館予算獲得のためのロビー活動が盛んで、ロビー活動専門の部局があるくらいである。デジタル時代への移行期に差し掛かり、「図書館不要論」をうまく乗り切ったことが最大の成果だろう。米国の図書館は、インターネット接続の割引サービスが受けられるそうだ。これは大きな成果だと思う。 ただ、とにかく金がなければ何もできないと言わんばかりの態度で、さすが米国だなあという印象も受けた。しかし、投資するだけの成果を上げているわけだから文句も言えないだろう。日本の公共図書館に勤める図書館員は政治運動ができないので、代わりに日本図書館協会がロビー活動を請け負ってくれればいいのだがいかがだろうか。 2022.12.1読了 【目次】 序章 図書館がつくる民主主義 第1章 地域変革の触媒としての図書館 第2章 博物館・図書館サービス機構の誕生 第3章 インターネット時代の図書館 第4章 博物館・図書館サービス機構の発展 第5章 国と地方をつなぐ州図書館局 第6章 トランプvsアメリカ図書館 URL:https://id.ndl.go.jp/bib/032411502
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アメリカの図書館活動を支える思想や仕組みを、その歴史や政策を通して解明した図書。何よりも驚くのはアメリカの図書館が情報の拠点としての図書館像をきちんと描き、議会に働きかけ、予算を獲得し、サービスをきちんと行ってきたこと。また補助金を得て、新たな図書館サービスを生み出し、その効果が...
アメリカの図書館活動を支える思想や仕組みを、その歴史や政策を通して解明した図書。何よりも驚くのはアメリカの図書館が情報の拠点としての図書館像をきちんと描き、議会に働きかけ、予算を獲得し、サービスをきちんと行ってきたこと。また補助金を得て、新たな図書館サービスを生み出し、その効果が実証できれば、次年度の予算に反映させる。この成功事例によって図書館自体が発展していく流れは日本も学びたい。21世紀の図書館像も個人的に意識したい。評価は何を変革したか。仕事の仕方は連携。サービス対象は地域コミュニティ。図書館像を描きぶれないようにしないと…。
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文句なしの星5。 「アメリカの図書館はいま、伝統的な読書活動や情報提供サービスの枠をはるかに越えて、分断化された社会に風穴を開け、排斥し合っている人々をつなぎ、崩壊しそうなコミュニティをなんとか再建しようと奮闘している。」(P18) これを読んだときには、ちょっと何を言っているの...
文句なしの星5。 「アメリカの図書館はいま、伝統的な読書活動や情報提供サービスの枠をはるかに越えて、分断化された社会に風穴を開け、排斥し合っている人々をつなぎ、崩壊しそうなコミュニティをなんとか再建しようと奮闘している。」(P18) これを読んだときには、ちょっと何を言っているのか理解出来なかった。図書館が?え?どうゆう事?他にやる事あるんじゃないの? 読み終えた後には、アメリカと日本の図書館の差に打ちのめされた。アメリカの図書館は、上記を担える可能性のあるものに成っていたのだ。日本の図書館の常識では測れない、全く違う新しい図書館に。長い時間をかけ闘い抜いた末に。 なんということでしょう。言葉もない。そんな世界があったとは。 与えられたことを漫然とやるのではなく、自ら掴みに行く。 それを、公共機関が、だ。 敬意を表します。
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