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妻の終活 の商品レビュー

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22件のお客様レビュー

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2022/11/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

こちらの本は、近所の図書館で「書き出し小説」特集をやっており、前情報は書き出しだけで手に取り読んだという珍し本。 昭和生まれの私にとってはとても勉強になる本だった。 タイトルのとおり、 主人公の奥さんが虫垂がんという珍しい病気にかかり、 なくなるまでの時間の物語。 主人公はいかにも団塊の世代という男性。 仕事命、権力命、見栄っ張り、自分は常に正しいと思い込んでいる。よき父ではないが、娘二人を大学までやったので、良い父親だと思い込んでいる。 家族には疎まれている。 「〇〇すべき」が強く、人に押し付ける。 すでに定年退職の年齢はすぎているが、 嘱託として工場勤務をしている。 しかし家族や通勤電車で一緒になるひとには「必要とされている男」を演じるべく、スーツで出勤している。 The 昭和の亭主関白。 そんな人物像だ。 かたや奥さんは、 「はいはい」「お父さんのいうとおりですね」 という感じで、腹がたっても波風立てず、 旦那さんを常に立て、自分の機嫌は自分でとるタイプ。 仕事しかできない主人公、 そして奥さんから病院につきそってほしいといわれても、仕事だと嘘をついてやり過ごしたら、妻が治らないがんにかかっていることがわかった。 娘に病院につきそってもらい、 そこから数日娘の家にとまり自宅を開けただけで、 主人公の家は崩壊する。 つまり、家事が一切できないことをしらされ、 奥さんの存在の大きさに気が付く。 杏子は「私のせいですね」 だんなさんが何もできないことを自分のせいにする。 そこから、杏子は自分の運命をうけいれ、 残された時間で主人公が一人になっても生きていけるように教育していく。 炊事、洗濯、掃除、そして杏子が手入れをしていた 庭の薔薇。 妻との遺された時間を共に過ごすことで、 主人公も自分の悪いところに気が付いたり、 周りの人間の態度がきびしいのは、自分の過去の態度がよくなかったと、改めはじめる。 この本から学んだことは「やり過ごす」スキルだ。 今の時代の女性は、これを「パワハラだ」といったり、「言葉の暴力」がつづくと離婚の原因になると思う。 どんなに男性が稼ぎやしなってくれたとしても・・・ しかし、この小説にでてくる奥さん:杏子は芯が強い女性で、主人公を理解し、何があってもやりすごす、そして強くあたられても、こどもには当たらないという、 素晴らしい女性像だと思う。 今の自分の生活を考えたときに、 旦那さんにたいしてこんな風に強い気持ちをもったことはなかったと思う。 何があってもやり過ごすスキルを自分で身に着け、 いま一緒にいてくれる旦那さんと頑張っていきたいなと思った。

Posted byブクログ

2022/11/07

がんで余命宣告された妻に、現実感を持てないピンとこない夫。娘二人に罵倒されながらでも、徐々に近付いていくその日を迎える。 夫の感情の変化に自分を写し、やはり切ない思いに。自分の現実から逃げない様に、心させられる意味で大切な一冊となった。

Posted byブクログ