グッドバイ の商品レビュー
大浦慶の話。この人実在の人だけど全然知らなかった。とてもやり手の女将さん。そしてとても面白かった。外国人と対等にビジネスしたり、幕末の偉人(坂本竜馬とか大隈重信とか)たちとやり取りがあったり。引退した番頭さんがピンチの時に帰ってきたのはかっこよかった。
Posted by
女性が主要視点人物となる時代モノで、大変に愉しく読了した。 幕末期の長崎、更に明治期を舞台とした物語ということになる。長崎の女性、油問屋大浦屋の主であった大浦慶が本作の主要視点人物となる。当初は「希以」(けい)で、慶応年間に入って「慶」(けい)に改めたのだという。作中でも最初は「...
女性が主要視点人物となる時代モノで、大変に愉しく読了した。 幕末期の長崎、更に明治期を舞台とした物語ということになる。長崎の女性、油問屋大浦屋の主であった大浦慶が本作の主要視点人物となる。当初は「希以」(けい)で、慶応年間に入って「慶」(けい)に改めたのだという。作中でも最初は「希以」で登場し、慶応年間に入って以降は「慶」というようになっている。 大浦屋の店は女性である「希以」が受継いでいた。油問屋の業界内で然程大きな存在であったという程でもなかった。が、或る時出逢った外国船員に商品見本ともなる“茶”を贈り、購入希望者が在れば御伝え願うということをした。そういう話しから3年程経って、多量の茶を購入するという外国人が現れた。一般的な取引量を大きく超えるような茶を納入すべく、「希以」は奮闘する。 この一件を契機に、大浦屋は茶の輸出を主要業務とするようになって成功する。そして声望も高まり、「大浦慶」を名乗るようになって行く。この大浦慶の成功、思わぬ失敗とそこからの立ち直り、さらなる前進と彼女の歩みが描かれる物語である。 大浦慶は長崎を駆け抜けた様々な志士達との関りも在った。そういうような様子も交えて幕末期の部分は進み、明治期に入ってからは相変わらずの激動の中での奮戦ということになる。結局、商人としての信義を飽くまでも護ろうと努力する様子だが、何か「真直ぐで熱い生き様」というような感でもある、大浦慶の姿だと思った。 更に言えば、「長崎」の変遷というようなことも滲む物語で興味深い。幕末期から明治期、長崎の様子も色々と変わるのだ。そして物語の後段の一部は、横浜で活動するという場面も在った。 個人的には、何度か長崎を訪ねた経過も在る。その際の見聞も想い起しながら、本作を愉しく読んだ。そして「長崎ことば」というようなもので発話する劇中人物達が多く、大浦慶の居る長崎に入り込んだかのように物語を読み進めた。 非常に愉しいので広く御薦めしたい。
Posted by
幕末の長崎、油商・大浦屋のあるじはお希以(けい)。自分の「やりたいこと」を見据えて突き進む。潤沢なエネルギーを存分に使いこなすその勢いがまぶしい。 窮地でさえ蹴散らす感じがする。時にはあきれる事もあるけれど、他人の思惑など気にしないんだろうな。
Posted by
傑作。熱い展開に何度も涙し、大河ドラマを見終わったような読後感がある。 幕末〜明治の有名人が多数出てくるのも楽しいが、おそらく創作であろう、お店の奉公人たちの造形が実に魅力的。
Posted by
幕末、長崎の地で異人との交易を始めて時代を切り開いた女傑の波乱万丈。 既得権と仕来りの中で細る家業に飽き足らず、世の流れを嘆くばかりで旧弊から抜け出せない同業者組合や家業大事の番頭に囲まれながらも世界を相手の交易に乗り出す大浦希以。わずかな絆と信義を手掛かりに、茶葉の輸出で一時...
幕末、長崎の地で異人との交易を始めて時代を切り開いた女傑の波乱万丈。 既得権と仕来りの中で細る家業に飽き足らず、世の流れを嘆くばかりで旧弊から抜け出せない同業者組合や家業大事の番頭に囲まれながらも世界を相手の交易に乗り出す大浦希以。わずかな絆と信義を手掛かりに、茶葉の輸出で一時代を築き上げる。 詐欺に会わなければ、もっと胸のすく活躍をなさったのではないだろうかと思うと惜しくてならない。こずるい悪党、ホント嫌い。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
幕末の動乱が目の前で起きている感じ、ただし、通信手段が今のようでないなかでの時代の変化、すごい時を過ごした気分になった。 ビジネスのために、勘を磨くこと、信を得ること、心に刻まれた。 そして、この時代なのに女ではなく、大浦慶として生きていることがすごいと感じた。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
長崎の油商・大浦屋の女あるじのお希以(けい)は女だてらに海外との交易をしたいと願う女商人。 時代は浦賀に黒船がたどり着いた時期、彼女はこれを機会と思い、通詞(通訳)の品川という武士を通じて、テキストルという青年と交易をおこなうことになる。 油を売るはずの油商が油ではないものを売る、ということで周囲の反対や反発を受けながら、お希以は自分の求める自由交易へと突き進んでいく。 長崎女性三女傑(という方がいるのですね、知らなかった)の一人である大浦慶人生を描いた一代記です。 まず、思ったのがとんでもない女性があの幕末の混乱期にいたものだということでした。 そして、何よりも彼女の周囲にものすごい人がいすぎてΣ(゚Д゚;≡;゚д゚) それは一旦、置きまして、仕事に対して自分だったらどれぐらいの情熱を傾けることが出来るだろうかと読みながら思っていました。 おそらく、彼女は交易という仕事に誇りを持ち、自分の作りあげた茶葉を自信を持って海外へ売ったのだと思います。 それは誰にでもできることではなかったはず。 時代は尊王攘夷で混乱。海外との取引をしている店には天誅を下すというビラがまかれているような状態。そして、交易がうまくいっていることやお希以が女性であることから、同じ商人仲間からは誹謗中傷を受ける。 決して楽なことではなかったはず、でも、それを超えて自分の見た夢を現実にしていく彼女の姿はものすっごくかっこいい! 読みながら、なんでこんな凄い人を知らなかったんだろうと思うことしばしば。 そんなお希以は慶応になった時に名前を慶とあらためることに。 時代は西洋に追いつけ追い越せとなりますが、ここでお慶は大きな落とし穴に落ちることに……。 詐欺にあってしまうのですよ(;^_^A そして抱えた借金も莫大な金額になりますが、彼女は自ら荷車に茶箱を載せて、店に運び、女衆と一緒に暑い中で竈で茶を炒ると主人であればしないこともすることに。 そして、借財は全額返金! 強い女性ですね。 現在も日本の女性の地位は低いです。ですが、同じように女性の地位が低い時にこれだけのことをしてのけた人物がいると思うと読み終わった時に胸がすくような気持になりました。 勿論、彼女だったからできたのかもしれませんが、でも、どんな女性でも同じ可能性を秘めているのではないかと思うとなんだか口元がにやにやしてしまう私でした。 今年の文庫は朝井まかてさんに作品ばかりに嵌っているような、『落花狼藉』も素晴らしい作品でしたし、この『グットバイ』も心に残る素敵な作品でした。 次はどんな作品を読ませてくれるのかと思うととても楽しみです! *長崎三女傑:シーボルトの娘・楠本イネ 女商人・大浦慶 ホテル業でロシア海軍兵に慕われた・道永栄 因みに私が知っていたのはおイネさんだけでした。今も道永栄さんのことはわかりません(;^_^A
Posted by
- 1
- 2