世界インフレの謎 の商品レビュー
大地震とパンデミックは経済的インパクトの質がまるで違う。パンデミックによる経済停滞は政府の介入ではなく人々の情報交換による恐怖心の伝播により生じた。経済学のモデルにおける供給サイドの分析が必要。
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人生の大半をデフレ社会の中で生きてきた40代の自分にとって、経済成長に望ましいとされる「緩やかなインフレ」とはどのようなものか勉強したかった。 今後も物価上昇が継続していくと見込まれる中、インフレ・デフレが起きる考え方やメカニズムを知っておくことは大切なことだと思う。全体的にとて...
人生の大半をデフレ社会の中で生きてきた40代の自分にとって、経済成長に望ましいとされる「緩やかなインフレ」とはどのようなものか勉強したかった。 今後も物価上昇が継続していくと見込まれる中、インフレ・デフレが起きる考え方やメカニズムを知っておくことは大切なことだと思う。全体的にとても読みやすく、参考になった。 著者の新刊「物価を考える」も手に取ってみたい。 [読了後メモ] 賃金・物価スパイラルを引き起こすための3つの条件。まず、スパイラルが起こるための基本的な要件は、インフレ予想の不安定化。 それ以外にもいくつかの条件が必要で、それらが揃った時、スパイラルが起こることが知られている。 第1の条件、 労働需要が旺盛であること。そして、それにもかかわらず労働供給が増えずに労働需給が逼迫し、労働者の交渉力が強くなっていること。 第2、企業に関するもの。 企業の価格決定力が強く、人件費の増加分を価格に転嫁する能力を持つこと。 第3の条件、 企業が人件費増を価格に転嫁するか否かを考える際に、ライバル企業も価格転嫁を行うと確信できること。 以上の3つの条件が揃った時、労働者は賃上げを要求し、 企業は賃上げを受け入れた上で人件費増を価格に転嫁し、スパイラルが生じる。 日本社会におけるノルム値上げ嫌いと価格据え置き慣行に起こっている変化。 いわばウイルスが日本にもたらしたチャンス。 低すぎるインフレ予想、値上げ嫌い、価格据え置き慣行という日本のノルムを構成するいくつかの要素に、いずれも変化の兆しが現れている。 安倍政権からずっと試みられていながら果たされなかったことが、少しずつではあるが実現しつつある。 ノルム問題の抜本的解決には、「価格も賃金も動かない」というノルムから、「価格も賃金も上昇する」というノルムへの乗り換えが必要。
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遅ればせながら「物価とは何か」に続いて一気に読んだ。新型コロナ禍の終盤に書かれた本で若干エピソードの記述は古い印象はあるが、トランプが再選し世界経済が身構えている2024年末に読んでも十分。世界インフレ、および日本だけ立ち遅れていることを構造的に理解できる好著だった。 著者は出...
遅ればせながら「物価とは何か」に続いて一気に読んだ。新型コロナ禍の終盤に書かれた本で若干エピソードの記述は古い印象はあるが、トランプが再選し世界経済が身構えている2024年末に読んでも十分。世界インフレ、および日本だけ立ち遅れていることを構造的に理解できる好著だった。 著者は出だしで、現在の世界インフレはロシアのウクライナ侵攻によるものだというマスコミなどの論調は違うと指摘する。ウクライナ侵攻以前に物価は上昇し始めており、それは新型コロナ禍の「後遺症」に起因し、ウクライナ侵攻はその傾向に拍車をかけたのだという。 具体的には、消費者、労働者、企業の3社の行動変容だ。消費者はパンデミックで行動が制限される中、モノ消費の傾向を強めた。これは長く続いてきた対面型に代表されるサービス経済化のトレンドを反転させたという。モノとサービスには価格硬直性の違いがあり、前者は値上げしやすいが校舎は差にあらず。結果、マクロ的にも物価は上昇していった。 供給面ではどうか。労働者は「大離職時代」と呼ばれるような状況に入り、職場に戻ってこなくなった。このため工場などで人員が足りない状況になっている。また、企業のとりわけ製造業の外部環境も変わった。コロナ禍で港湾機能の一時停滞や米中対立により、「脱グローバル化」が進み、コスト高でも安定を優先したリショアリング(米国内の生産拠点の回帰)した企業も増えている。このため供給不足に陥っている。 モノ消費のシフトで需要は増えているが、供給力はもとに戻らず、企業マインドしても同業他社が値上げするだろうと予測しやすい環境になった。著者はこの状況を「新しい価格体系」と呼ぶ。むずかしいのは中央銀行の金融政策は需要を刺激できるが供給力の回復には手が打てない点だ。これが事態を複雑にしている。 では日本は?日本は2022年のCPI(消費者物価指数)インフレ率はIMF加盟192カ国中最下位。原油や穀物などの輸入品インフレが進んでいても物価が上がらないという状況だ。いわゆる「安いニッポン」は世界で取り残されている。物価も賃金も上昇しない状況を消費者、労働者、企業が受け入れてきたからだ。 だが、これが「国民性」というのは間違い。1970年代まで日本は物価上昇を受け入れてきた。そしてコロナ禍で日本の状況は変わりつつある。官製賃上げで名目賃金は上昇し(実質はまだ)、凍っていた賃金は「解凍」されるかが焦点という。団塊世代の大量退職を過ぎ、生産年齢人口は減っている日本。中小企業を取りこぼさずに底上げできるか。好循環に持っていければ日本は世界に追いつけそうだが、ここで躓くと本当に将来に禍根を残すのだろうとの印象を抱いた。 改めて物価・賃金の世界と日本の置かれた構造を理解する好著であった。
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経済についてあまりにも知識がないので読んでみました。すごくわかりやすく書かれていて、わかった気にさせてくれる本です。
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日本経済の長期のデフレについて、消費者目線では価格の据置を前提として賃金の上昇を我慢し、企業目線では賃金の据置を前提に価格への転嫁を控える、という点に原因を見出し、今がデフレにとどまるか脱却するかの分かれ目であり、ゆるやかなインフレ予想とその状態に対応した行動、つまり消費者が物価...
日本経済の長期のデフレについて、消費者目線では価格の据置を前提として賃金の上昇を我慢し、企業目線では賃金の据置を前提に価格への転嫁を控える、という点に原因を見出し、今がデフレにとどまるか脱却するかの分かれ目であり、ゆるやかなインフレ予想とその状態に対応した行動、つまり消費者が物価上昇を受け入れ企業は賃金を上昇させるということを日本人が受け入れられるかどうか、という点にその判断を委ねています。 その意味では、デフレから抜け出すためには心理の変化も大いに必要なのかと。
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時間ができたら必要なものだけを置いて、すっきりとした部屋で過ごしたいと思ってきました。この数ヶ月間、読み終わった本を中心に処分をしてきましたが、部屋が気持ちよくならない元凶は「読みかけの本」が多数あることと、それにも関わらず興味のある本を買ってしまうことでした。 まずは購入して...
時間ができたら必要なものだけを置いて、すっきりとした部屋で過ごしたいと思ってきました。この数ヶ月間、読み終わった本を中心に処分をしてきましたが、部屋が気持ちよくならない元凶は「読みかけの本」が多数あることと、それにも関わらず興味のある本を買ってしまうことでした。 まずは購入してから1ヶ月経過したにも拘らず読破できていない本は、途中で打ち切ることにしました。読破していないということで本の評価は「★1つ」としていますが、内容が悪かったわけではありません。 この本で気になったポイントは以下です。 ・世界経済を変えた3つの要因、1)グローバル化、製品の価格は極めて上がりにくくなる、2)少子高齢化による、将来の所得の減少、3)技術革新の頭打ち、生産性の伸びが停滞(p11) ・ロシアのウクライナ侵攻がインフレの大きな理由と言われているが、これはインフレを生じさせた理由の一端ではあっても最大の理由でない。米英欧州のインフレは、実は2021年春から始まっていた(p16)パンデミックは急速に進展したグローバリゼーションによって構築された世界の物流ネットワークが寸断された(p22) ・今回のインフレに対して世界の中央銀行が後手に回り右往左往してしまったのは、彼らが極めて高く信頼し、判断の拠り所としていたフィリップ曲線の神宮力が落ちてしまった(p40)インフレの原因が、需要の過多ではなく、供給の縮小にある(p41) ・2020年5月時点での死者数は世界人口の0.005%で、スペイン風邪の時(2%)には到底及んでいない。しかも今回は高齢者が中心で、この点もスペイン風邪の働き盛りの世代が多く亡くなったのと事情が異なる(p60) ・対照的な対策をとった、スウェーデン(るい行動制限)とデンマーク(厳しいロックダウン)でしたが、結果として経済被害に大きな差は出なかった、政府の介入の強さと、経済被害の規模には関係がない(p69) ・日米とも、人々は外出半減させたこと、そしてその外出半減はもっぱら情報効果によるもの、つまり、政府に命じられたからステイホームしたわけでなく、自ら情報を入手し、それを踏まえて自分で考えて自主的に行動を変化させた(p78) ・パンデミック2年目の米国のインフレは、経済最下位で労働に対する需要が増加する中、自発的離職が増えるので人手不足が起こる、人手が足りないのでモノ・サービスの生産が十分にできずに供給不足に陥る(p88) 未読破(144/269ページ) 2024年8月16日作成
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勉強になりました。人々が歴史的にどう戦ってきたのかがよく分かりました。今の政府(岸田、茂木、河野)と日銀(黒田)あとトランプが経済的にどれだけ酷いかが分かります。
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本書の紹介文に「学者も中央銀行も読み間違えた!」とあるように、経済理論はギャンブル要素が多い。 地震、台風、洪水などの自然災害や、パンデミック、戦争などが起きる時期や規模や影響度など予測できない。 ここ数年間の世界的インフレについては、今まで頼りにしていた経済理論では説明できな...
本書の紹介文に「学者も中央銀行も読み間違えた!」とあるように、経済理論はギャンブル要素が多い。 地震、台風、洪水などの自然災害や、パンデミック、戦争などが起きる時期や規模や影響度など予測できない。 ここ数年間の世界的インフレについては、今まで頼りにしていた経済理論では説明できないらしい。 そこで、なぞの要因"ファクターⅩ"を見つけようとしたのが本書の内容みたいだ。 経済活動なんて、人の気分次第で変動するもの。 行動経済学が注目されているように、人間の欲望や思考の癖が大きく経済活動に関係していると思う。 今のインフレは、パンデミックと戦争が供給網の寸断を招いた結果のものだと思う。 性善説を前提としたグローバル化の行き過ぎによる弊害だと思う。 何が原因でインフレになっているのか? 今の経済理論で説明がつかないなら、これを見つけ出すことは重要だ。 コロナ禍が収束していない2021年の6月ごろから欧米でインフレが始まった。 パンデミックがインフレの主犯であるなら、この時期に何をすべきだったかの答えを出しておく必要がある。 だが、どの国も政府の介入策は経済にあまり影響を与えなかったようだ。 ロックダウンした国も、規制をかけず自由な行動を容認した国も、その後の経済状況の変化に差異はなかった。 コロナによる死者数の違いも関係ない。 パンデミックが収束すれば、経済も元に戻ると多くの人が考えていたが、2024年になった現在もそうはなっていない。 ウクライナ戦争でインフレ率が1.5%上がっていると試算されているが、それを差し引いても高いインフレ率が続いている。 結局、今のインフレの理由がわかっていないので、どう対処すればよいかも分かっていない。 日本以外の中央銀行は、利上げで対処しその効果を様子見しながら次の手を打とうとしている。 インフレは供給不足により生じる。 供給不足は、供給が足りないか需要が強すぎるかのいずれか。 今回のインフレは供給の過少にある。 中央銀行は供給の過少を解決する能力は持っていない。 だから、増えていない需要を下げて、少ない供給とのバランスを取ろうとしているらしい。 渡辺努さんは、マクロ経済学の専門家だ。 マクロ経済学は全体としてどうかという見方優先で、個人の生活実感と異なるのでピンとこない。 高いインフレ率を問題にしているが、そもそも適切な物価上昇率なんて定義されているの? 分からないことだらけ。 日本の実態に近い0%じゃダメなのか? 私のこの疑問の答えが書かれていたが、0%じゃ成り立たない今の資本主義に基づいた経済理論によるものだった。 「経済理論の基礎も知らないの?」と言う人達の思考回路を変える必要がありそう。 インフレになるとその国の通貨は価値が下がり安くなるはず。 だから、日本では価格が不変で、アメリカでは価格が上昇なら、円高になるはず。 日本100円、米国1ドルだったものが、日本100円、米国2ドルになれば、1ドル50円になるはずなんだけど、そうなっていない。 データを見ると、2012年を境に円高に向かっていた為替レートが一転急激に円安に向かっている。 何があったか。 アベノミクス政策による日銀の異次元金融緩和だ。 目論見どおり1ドル80円から120円へと円安に振れ、今は150円も超えた。 国民の正常な経済活動によらず、学術的な経済理論による力づくの金融緩和政策の結果がこれだ。 私には、こうなったからくりがよく分からないが、アベノミクス政策を続けてこうなった。 輸出で儲けが出る企業や、資産家の大株主には嬉しい成果だ。 円安株高で今まで恩恵を受けた人がどれだけいるか知らないが、その結果何が起こるか今後が不安だ。 国債を大量に抱えているので安易に利上げもできない、円安介入の資金も不足してきた。 アベノミクスの失敗の後始末が使命となった植田和男日銀総裁は、打つ手がほぼない中で今のところよくやってると思っている。 銀行の金利は上げられないから株で資産形成を国が推奨しているが、損しても自己責任だからこの方針は心配だ。 政治家さんには、庶民にマネーゲームを進めるのではなく、地道に働けばそれなりの暮らしができる社会を作ることに頭を使って欲しい。
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現在、世界が、日本が置かれているインフレ状況を、分かりやすく解説してくれる良書。はじめはグラフのマジック、数字のマジックではないかと、疑って読んでいたが、大袈裟ではない姿が見えてくる。日本はアベノミクスで中央銀行にあたる日本銀行が、「独立性」と「透明性」を失ったことが、国民のイン...
現在、世界が、日本が置かれているインフレ状況を、分かりやすく解説してくれる良書。はじめはグラフのマジック、数字のマジックではないかと、疑って読んでいたが、大袈裟ではない姿が見えてくる。日本はアベノミクスで中央銀行にあたる日本銀行が、「独立性」と「透明性」を失ったことが、国民のインフラ予測の上昇に寄与出来なかったのではないかと、感じている。ショッキングではあるが、国にはまだ間に合う政策を、慎重にそれでいて大胆に行なってほしい。
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現在(2023年)、世界で起こっているインフレの解説書。数式はほぼなく、読みやすく、分かりやすい。著者の仮説(パンデミック→消費者・労働者の行動変容、グローバル供給網に隘路が発生→経済全体の需給が釣り合わない→世界インフレ)は、合理的であり腑に落ちた。
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