「推し」の科学 プロジェクション・サイエンスとは何か の商品レビュー
第120回アワヒニビブリオバトル テーマ「音楽」で紹介された本です。ハイブリッド開催。チャンプ本。 2024.11.5
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「プロジェクション」という認知科学の概念を、推し活を通じて分かりやすく説明した本。プロジェクションは2015年にはじめて提唱された新しい概念で、「作り出した意味、表象を世界に投射し、物理世界と心理世界に重ね合わせる心の働き」を指すのだという。このプロジェクションという概念を用いて...
「プロジェクション」という認知科学の概念を、推し活を通じて分かりやすく説明した本。プロジェクションは2015年にはじめて提唱された新しい概念で、「作り出した意味、表象を世界に投射し、物理世界と心理世界に重ね合わせる心の働き」を指すのだという。このプロジェクションという概念を用いて、腐女子たちがいかにして既存作品を元に異投射を行い(プロジェクション)、作品から立てた仮説的推論(アブダクション)を元にした二次創作を共有するかという説明は今まで見たことがなくて、とても興味深かった。そこにないものを見るだけでなくそれを他人とも共有するという人間の心の働きはそれを共有しない者にとっては奇妙に映るかもしれないが、人間の社会と文化に欠かせない働きなのだ。
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いつからかファンという言葉よりも「推し」という言葉が使われるようになったなぁと思いつつ、「推し」という言葉について理解を深めるために拝読。これまで認知科学というものを知らなかったため、そのいったんであるプロジェクションサイエンスがよりいっそう面白く感じました。 本作では「推し」...
いつからかファンという言葉よりも「推し」という言葉が使われるようになったなぁと思いつつ、「推し」という言葉について理解を深めるために拝読。これまで認知科学というものを知らなかったため、そのいったんであるプロジェクションサイエンスがよりいっそう面白く感じました。 本作では「推し」という概念を、能動的な主体が伴ったファン活動と定義し、好きなもののグッズを集めたり、アクスタと旅行先で写真を撮るなどを例に挙げておりました。この「推し」という概念について、認知科学の観点から、自身のイメージを投射することであると述べております。そして、そのイメージの投射にどのようなものがあるかをタイプ分けしたり、身の回りにどういった投射があるか述べられておりました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
個人的に堂々と「推し」と言えるものがないのに、〇〇の科学というタイトルにつられて読み始めた。冒頭のプロジェクションの説明はわかるが、コミケなど行かない身としてはエピソードが入ってこない。「腐女子の2次創作」なんておもしろい表現使うなあと感心はするが、あまり読んでいても??だった。 だが折り返してくらいから少しずつ面白くなり、第四章「ヒトの知性とプロジェクションー未来」でそういうことか!と展開が変わった。虚構を信じて宗教や集団のパーパスを産んだホモ・サピエンスは虚投影することこそが特徴なのだろう。 P229で引用されるダニエル・デネットの言葉は染み入った。 人間の神経システムに入力される情報は「時間の経過に伴って、これらは1つの物語のようなまとまりを持ち、それは脳内の多くのプロセスによって継続的に編集され続ける」 「私たちのお話は紡ぎ出されるものであるが、概して言えば、私たちがお話を紡ぎ出すのではない。逆に、私たちのお話の方が私たちを紡ぎ出すのである」 233ページの筆者の表現もジワリきた。 「自分には自分のプロジェクションがある。あの人はその人にはそれぞれのプロジェクションがある。それを知るとは多様性を知ること。 その人のプロジェクションを受け止める事は、その人そのものを受け止めることと同じあるならば、その人のプロジェクションによって見えている世界を否定する事は、その人を否定することも同じです ある人には見える世界が自分には見えない時、重要なのはそれは見えるかどうかではありません。その話が本当かどうかでもありません。ある人には見えたと言うことを受け止めることです。そしたら日に取ってみたと言う事実の「意味」を大切なせことです。」 仮説を形成しで推論するアブダクションはもともと気になっていた概念であり、アプローチだ。プロジェクション・サイエンスにも極めて近い存在であることを知り嬉しくなった。 最後に、全く理解できない推し活をしている後輩と対話しようと心に誓った。
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プロジェクションサイエンスについては、こないだオーディブルで聴き終わった「心と現実」でなんとなく理解し、面白いな、と思ったので「推し」に特化したこの本を手に取りました。なんと作者さんが、「心と現実」を引き継いで刊行させた方の配偶者さんということが最後に明かされて、それがいちばんの...
プロジェクションサイエンスについては、こないだオーディブルで聴き終わった「心と現実」でなんとなく理解し、面白いな、と思ったので「推し」に特化したこの本を手に取りました。なんと作者さんが、「心と現実」を引き継いで刊行させた方の配偶者さんということが最後に明かされて、それがいちばんの衝撃でした。この事実を先にプロジェクションしてからこの本を読んでいたらどんな感じだったかなー、と思います。自分はこういう学際的な分野に興味があるので、これからの類書の発刊を注視します。あと、プロジェクションって、某レンガ本の新書ミステリィ作者の第1作のメイントリックに使われているよね?とも思いました。場合によっては人によって見えるものは全く違ってくるのですね。
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序盤の「あしたのジョー」の実験結果が1番興味深く読めたくらいで、あとは延々ページ内に「プロジェクション」という言葉の羅列が続き、しんどい。 様々な研究者の名前が出てくるなか、「先生」とほぼすべてに書いてあるのも読みづらさ、分かりづらさを助長していた。 あとがきを読むに、この分...
序盤の「あしたのジョー」の実験結果が1番興味深く読めたくらいで、あとは延々ページ内に「プロジェクション」という言葉の羅列が続き、しんどい。 様々な研究者の名前が出てくるなか、「先生」とほぼすべてに書いてあるのも読みづらさ、分かりづらさを助長していた。 あとがきを読むに、この分野のガチの専門家では無いのはわかるが、文字ベースでの謙遜は読書体験の心地よさを損なう。
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全てが興味深いのは前提として、第6章とおわりにテンションが上がった 初めは自分と推しの2人しか語られない話だと思ったのに、終わってみたら周りに人がいっぱいいる。プロジェクション・サイエンスはそういうとこがある あとこういう本で大切なのは作者さんがオタクなことよね。安心感すごい
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I could understand the concept of the projection in the psychology.
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「推し」についての心理学からのアプローチ。 主に「プロジェクション」についての論考。「投影」とは違うようだ。どちらかというと「共同幻想」に近いものかもしれない。 宗教もある種の「推し活」なのだなあ。 キーワードは「一体感」。 <アンダーライン> ★★★ 「推し」に救われたという...
「推し」についての心理学からのアプローチ。 主に「プロジェクション」についての論考。「投影」とは違うようだ。どちらかというと「共同幻想」に近いものかもしれない。 宗教もある種の「推し活」なのだなあ。 キーワードは「一体感」。 <アンダーライン> ★★★ 「推し」に救われたという経験は、自分をとりまく世界のとらえ方が変わったということなのでしょう。 ★★★★ 「推し」を応援すると、行動でも感情でも「推し」との一体感が生じる ★★★★★ プロジェクションとは、作り出した意味、表象を世界に投射し、物理世界と心理世界に重ね合わせる心の動き ★★★ 二次創作は創造的誤読 ★★★ プログラムどおりに動かないのは、現実世界はノイズだらけだから ★★★★★ 洞窟の中の壁画や彫刻は、仲間たちと物語を共有することで、集団としての絆をより強固なものにしたのではないか。この物語がプロジェクション。 ★★★ サードマン現象 ★★★★ ぼんやりした投射はその場にいる人に共有される。それが「マナー」です。 ★★★★★ お守りはプロジェクション ★★★★★ 物語とは不条理な出来事を受け入れるために、秩序を正しくしたい気持ちからできるのではないか ★★★★★ その人のプロジェクションによって見えているものを否定するのは、その人を否定すること
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「推し」を科学的視点からみるってなんて新しくておもしろい! 「プロジェクション」という言葉、初めて知りました。 著者の視点がおもしろく、推し活、二次創作、腐女子、モノマネ、応援上映、コスプレなどからプロジェクションということを学ぶことができました。 私は子供の頃から常に何かに「...
「推し」を科学的視点からみるってなんて新しくておもしろい! 「プロジェクション」という言葉、初めて知りました。 著者の視点がおもしろく、推し活、二次創作、腐女子、モノマネ、応援上映、コスプレなどからプロジェクションということを学ぶことができました。 私は子供の頃から常に何かに「はまり」、いわゆる「推し」がいて、世界が広がったり人生をキラキラ彩ってくれています。 本を読みながら、共感ポイント多数、この気持ちは認知科学的にそういうことなのね!という納得ポイント多数。 楽しめました。 特に、二次創作と研究活動の共通点の話、マンガやアニメの実写化におけるプロジェクションがおもしろかったです。 「『推し』に自分の時間や労力、時にお金をつぎこんで、直接的な見返りがあるわけではありません。けれど、そんなことはまったく問題ではないのです。そうすることが人間としての幸せであり、その行為だけでもう十分な見返りをもらっているのですから。」
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