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水平線 の商品レビュー

4.1

18件のお客様レビュー

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2024/05/24

達身や忍、イクや皆子たちが経験した戦時の硫黄島や父島の状況は強く印象に残りました。 読み手の私に当時の硫黄島の知識が足りてなかったせいか、物語の進行が鈍く状況描写ばかりで動きが乏しく感じられました。 本書を読み進める中、その部分がストレスになって、うまく物語に入っていけなかった...

達身や忍、イクや皆子たちが経験した戦時の硫黄島や父島の状況は強く印象に残りました。 読み手の私に当時の硫黄島の知識が足りてなかったせいか、物語の進行が鈍く状況描写ばかりで動きが乏しく感じられました。 本書を読み進める中、その部分がストレスになって、うまく物語に入っていけなかったのは残念でした。 結末も読み手側の感性にゆだねられてますし、私には合わなかったです。 映画『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』を再度見返してみると、また本書も違った見方ができて感想も変わるような気がします。

Posted byブクログ

2023/11/20

時系列と語り手が移り変わるので、最初は戸惑うが、惹き込まれて読んだ。硫黄島、父島の戦中戦後の家族の物語。現代を生きる孫世代との謎の交信が不自然でなく描かれ、謎への興味に引っ張られて読めた。 硫黄島に米軍が上陸して戦場となっていたことを初めて知ったし、そもそも島の存在を知らなかった...

時系列と語り手が移り変わるので、最初は戸惑うが、惹き込まれて読んだ。硫黄島、父島の戦中戦後の家族の物語。現代を生きる孫世代との謎の交信が不自然でなく描かれ、謎への興味に引っ張られて読めた。 硫黄島に米軍が上陸して戦場となっていたことを初めて知ったし、そもそも島の存在を知らなかった。内地に引揚げる家族と別れ、島に残らなければいけなかった人達の悲惨な運命。描写は淡々としていながら、それぞれの人物が語り手として登場することで飾りのない心情が伝わる。終わっていない終わり方も良い。

Posted byブクログ

2023/11/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

親が離婚したことにより苗字の異なる兄妹である横多平と三森来未。平には祖母の妹から、来未には祖父の弟から、すでに亡くなったはずの人からなぜかメールや電話がくる。さらには平がいる2020年はコロナがなく東京オリンピックが開催されているが、来未のいる2020年はコロナが蔓延していてオリンピックも延期された。 海の水平線の向こうには見えなくても島や大陸が確かに存在しており、ということはすでに亡くなっいて目には見えなくてもその人の思いが残っていたり会話したりもできるのでは…というのが著者の言いたいことだったのかな? 皆子が突然失踪した理由が最後まで明かされず、平が大島まで行ったがそこに皆子が住んでいたのかどうかもわからずじまいで消化不良な読後感だった。

Posted byブクログ

2023/08/27

夏の季節に読めて良かったです。複数の本を同時並行で読み進める癖があるから、読み終わるのに1ヶ月くらいかかってしまったけど。 たとえば長い一日などで感じた、日常の中の些細なことの自分・他者の拡がりや、茄子の輝きで感じた、過去の自分の記憶の漂いみたいな、滝口さんの哲学たちが、時間軸や...

夏の季節に読めて良かったです。複数の本を同時並行で読み進める癖があるから、読み終わるのに1ヶ月くらいかかってしまったけど。 たとえば長い一日などで感じた、日常の中の些細なことの自分・他者の拡がりや、茄子の輝きで感じた、過去の自分の記憶の漂いみたいな、滝口さんの哲学たちが、時間軸や物理的にも拡張された壮大なスケールで展開されてゆきます。 壮大なスケールと言っても、SFみたいなあり得ない世界というわけではなく、まぁ見方によってはそうかもしれないけど、なんだか本当にあるような、ファンタジーとかって分類する意味がないような、日常のものとして語られていく。その語りが、悲哀に満ちた劇的な最期ではなく、硫黄島で死んでいった人たちの生活そのものを私たちの生活の地続きとして感じさせます。 過去の遠い出来事として薄れつつある戦争も実際にはあって、私たちと変わらない、語られない、残らない人たちが、それぞれあっけなく簡単に死んでいったということを実感として持っておきたい。 ただ目の前のことを受け入れる、理解しようとせず、疑おうとせず、そのまま受け入れる自分を受け入れたい。なにせ、確かなものなど、本当の一つもないのだから、と思いました。 もっといろいろなことを考え、想ったのだけど、すぐどこかへいってしまう。けど、そんなもんだよな、人の感情や記憶なんて。どこかにいってるだけで、確かにあって、確かに想ったことだけおぼえていれば、そのうち何かのきっかけでふわっと思い出すでしょう。

Posted byブクログ

2024/07/14

 傑作!  スマホにかかってくる電話って、どこから聞こえてきているのでしょうね?  そういうことに疑いを持たないまま、現代社会は過去を見失って行きつつあると感じるのは、当方が70を越えた老人だからでしょうか?  ある日、自分自身以上に自分のこと、出自・来歴をよく知っているおじさん...

 傑作!  スマホにかかってくる電話って、どこから聞こえてきているのでしょうね?  そういうことに疑いを持たないまま、現代社会は過去を見失って行きつつあると感じるのは、当方が70を越えた老人だからでしょうか?  ある日、自分自身以上に自分のこと、出自・来歴をよく知っているおじさんやおばさんからスマホを通じて語りかけられ始める。それも、あの、硫黄島から!  滝口悠生という作家の卓抜さ!ですね。  水平線の向うに、のんきに忘れられつつある、笑い事ではなかった過去があることを小説として書くことに挑んだ滝口悠生君に拍手!  アホブログにも感想書き連ねました。  https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202405110000/

Posted byブクログ

2023/06/24

好きな滝口悠生さんの長編小説。文章がいい。「これは対話と呼ぶに足ル、と重ルは思っていル。」 ここ好き。 いつもの軽妙で誠実な語り口から広がる世界。過去と今、未来。現実と空想、縦横無尽。 硫黄島で生活していた人たちは私の頭の中にいるし私の頭の中からどこかへ呼びかけている。

Posted byブクログ

2023/06/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

作者の思いや調査結果が削ぎ落とされることなくここでもかと盛り込まれていると感じた。 同じエピソードが繰り返し挿入され、語る人物は違えど語り口が同じなのでずいぶん退屈してしまった。 中編くらいに纏まってるともっと濃い物語になったように思う。

Posted byブクログ

2023/04/30

硫黄島の島民の記録を軸に,敗戦前に疎開した人々とその家族を少しオカルト交えて描いている.そして軍隊に徴用された人々が全員死んだ事実には,改めて胸が塞がれる思いがする.硫黄島からの疎開者の孫である来未に死んだはずの祖父の弟忍からかかってくる電話と横多兄に行方不明の祖母の妹からのメー...

硫黄島の島民の記録を軸に,敗戦前に疎開した人々とその家族を少しオカルト交えて描いている.そして軍隊に徴用された人々が全員死んだ事実には,改めて胸が塞がれる思いがする.硫黄島からの疎開者の孫である来未に死んだはずの祖父の弟忍からかかってくる電話と横多兄に行方不明の祖母の妹からのメール.夢ではなく現実に過去が混ざり合ったような場の異空間の表現が自然で,読みながらも受け入れていて,でもそれはおかしな事. 硫黄島といえば,戦争の激しさばかりが強調され兵隊さんたちの悲劇がクローズアップされるけれど,島中犠牲になった人々のことを思うと,どこかサバサバと綴られた物語の中に深い哀しみを感じました.

Posted byブクログ

2023/04/22

読み終えて、ぽろぽろぽろとしばらく涙が止まらなかった。 完璧に本の世界に入り込み、読んだ後もあれこれと考えを巡らせてしまう小説は、ああ、本当に読んでよかった、と心から思える小説で、まさにこれはそんな1冊だった。かつて硫黄島で暮らした人々の声を聴き、平穏だった日々を共に懐かしく想...

読み終えて、ぽろぽろぽろとしばらく涙が止まらなかった。 完璧に本の世界に入り込み、読んだ後もあれこれと考えを巡らせてしまう小説は、ああ、本当に読んでよかった、と心から思える小説で、まさにこれはそんな1冊だった。かつて硫黄島で暮らした人々の声を聴き、平穏だった日々を共に懐かしく想い、辛くて悲しくてたまらなくなった。そして、本の中の彼らは今、どうしているんだろう、と思っている。 恥ずかしながら硫黄島については、ニノが出ていた映画も観ていないし、激しい戦場だった、くらいのことしか知らなかった。 この分厚い本の1/3ほどを読み終えた時、私の伯父が亡くなった。たぶんこの本を読んでいる最中でなかったら、こんなに伯父のことを思い出すことはなかったかもな、というくらい、幼い頃の鮮明な記憶をたどった。(硫黄島に住んでいた祖父母やその兄弟たちを思う登場人物たちの思いが重なっていたからかもしれない。)伯父は優しくていつもニコニコしていて、おしゃべりではないが、小さな冗談を言う人であった。90歳だった。 告別式の朝、持ち歩くには重たいな、と一度は薄い文庫本を黒いバッグに入れたのだけど、いや、やっぱり続きを読みたいな、と入れ替えた。久しぶりの新幹線で移りゆく景色を横目にぐんぐんと読み進めた。 伯父は両手では収まりきらないほどの理数系の資格を持っていて、体調を崩すまで現役で仕事をしていた。勤勉で人望が厚かったのだろう、両手が2つあっても足りない程の見事な献花が並べられていた。 私の従姉妹の息子でもある伯父の孫、Sくんが「じいちゃん、」と遺影に語りかけるように、何のメモを見ずに弔辞を述べた。じいちゃんの血を濃く受け継いだと言う彼と伯父の想い出は、羨ましくなるようなアカデミックなものばかりで、あまりの立派さにクラクラしそうになったが、その中で「じいちゃんがいなかったら硫黄島に行くこともなかった」という言葉を聞いた時、声が出そうになった。戦争のこと、歴史のことを伯父から多く学んだという。式が終わりロビーへ出ると、入る時には気づかなかった、受付横に並べられた写真が目に飛び込んできた。伯父が大切にしていた品々と共に並べられたその写真には「日米硫黄島戦没者合同慰霊顕彰式」とあった。Sくんを見つけて、これ読んだ?とバッグの中から本を取り出して見せた。「読みました」と嬉しそうに言ったように見えたSくんとは、いい小説だよね、と軽い会話を交わすことしかできなかったけれど(私がその時全部読み終えてなかったせいもある)、なぜ伯父が硫黄島へ行っていたのか、近々きいてみようと思う。 そんな偶然みたいなこともあって。硫黄島のこと、そこで暮らした人々が確かにいたことや、親戚付き合いがあまり盛んではない家系だけど私にも祖先がいて、彼らにも暮らしがあり、ご飯を食べ、笑ったり泣いたりしながら誰かを想い、生き、死んでいったことを思った。 中学や高校の国語や総合の時間は、1年を通じて『水平線』を読む、みたいなことをしてもいいんじゃないかしら。ホントに。 忘れてはいけない大切な過去を、素晴らしい作家さんの手腕で私たちの身近な物語として届けてくれる。小説を読む醍醐味だ。

Posted byブクログ

2023/03/29

 現在と過去、今を生きている人と昔を生きた人、それが対比されるわけではなく、緩やかに気がつかないうちに、交わって物語が進んでいく。  最初は戸惑うが、次第にその時間が混ざる感覚というか、頭の中、もしくは夢の中でとめどなく考えていることが現実となるような感覚が文字化され、自分もこの...

 現在と過去、今を生きている人と昔を生きた人、それが対比されるわけではなく、緩やかに気がつかないうちに、交わって物語が進んでいく。  最初は戸惑うが、次第にその時間が混ざる感覚というか、頭の中、もしくは夢の中でとめどなく考えていることが現実となるような感覚が文字化され、自分もこの物語に漂っている気分になった。

Posted byブクログ