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世界史としての「大東亜戦争」 の商品レビュー

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6件のお客様レビュー

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2024/06/27

大きな問いとして、「かの戦争」の呼称が挙げられる。大東亜戦争、太平洋戦争… どの呼び方が正しいかの検証ではなく、多角的視点で、どの立場ならどの呼び方かを検証するような新書である。 前半は各国の立場の論文か集められている。日独伊三国同盟、ハルノート、真珠湾…。ポイントオブノーリター...

大きな問いとして、「かの戦争」の呼称が挙げられる。大東亜戦争、太平洋戦争… どの呼び方が正しいかの検証ではなく、多角的視点で、どの立場ならどの呼び方かを検証するような新書である。 前半は各国の立場の論文か集められている。日独伊三国同盟、ハルノート、真珠湾…。ポイントオブノーリターンとなる出来事を複数の論文から複数の視点で振り返る。 後半は、民主主義、ファシズム、インテリジェンスなどテーマごとに振り返る。 同じ出来事を複数の論文クロスオーバーする際に知的好奇心を刺激される。

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2023/02/18

「先の大戦」としか言いようがない。 太平洋を跨いだ日米戦争、東南アジアでは日英戦争、面倒くさい支那事変、最後のととどめ日ソ戦争。確かに、「太平洋戦争」と言ってしまうのは事実を表していない。 だからこその大東亜戦争。 まさに全世界を敵に回したんや。負けたんは、対米だけやけどな。...

「先の大戦」としか言いようがない。 太平洋を跨いだ日米戦争、東南アジアでは日英戦争、面倒くさい支那事変、最後のととどめ日ソ戦争。確かに、「太平洋戦争」と言ってしまうのは事実を表していない。 だからこその大東亜戦争。 まさに全世界を敵に回したんや。負けたんは、対米だけやけどな。 世界史の中で見れば、いろんな国の色んな思惑に振り回されていた、日本。その日本に確固たる方針がなく、縦割り完了社会で、しかも下手に現場が優秀だったから、完膚なきまでに霧散した。 結局、明治の元勲が残っている間だけがまともな国だったわけだ。 上が無能でも現場が優秀でなんとかしてしまって、出来るじゃんてもっと無茶を押し付けられて結局最悪な状況で破綻するのが、宿痾なんか。

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2022/10/04

研究者の間では「アジア・太平洋戦争」が定着しつつあるように思えるが、天皇陛下や総理大臣は「先の大戦」を使っているという事実には気が付いていなかったので、あらためて呼称問題の難しさを再認識。 本書は「大東亜戦争」を肯定・否定の史観から解放し、世界史の中に位置付けるという、相対的かつ...

研究者の間では「アジア・太平洋戦争」が定着しつつあるように思えるが、天皇陛下や総理大臣は「先の大戦」を使っているという事実には気が付いていなかったので、あらためて呼称問題の難しさを再認識。 本書は「大東亜戦争」を肯定・否定の史観から解放し、世界史の中に位置付けるという、相対的かつ多角的な視点で15名による専門家により再解釈・再評価するもの。雑誌連載の小論を集めたものであり、各々10数ページの分量しかなく、掘り下げも弱くて少々物足りなさはあるものの、視野が広がるという意味では大変有意義な論考集である。 本書からの教訓は「あなたのアクションを他者(他国)がどうみているかを意識・自覚するべきだ」に尽きると言えるだろう。

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2022/09/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 今の、ロシアウクライナ戦争を考える意味でも、よい示唆を与えてくれる好著。 ”「先の大戦」の起点を、その戦争の侵略性を強調することで「1931年」(=満州事変)に設定するのではなく、むしろ世界史的な意義から「1890年」に設定することで、われわれは新しい視野を手に入れることができるだろう。”  となると、2022年2月24日を起点とするのではなく、2014年のクリミア併合か、いや、もっと前からその因果は含まれていた?  おそらく2001年9月11日あたりが、その始点となるのだろう。  いずれ、中台戦争、米中戦争となれば、日本も巻き込まれることになる。 「先の大戦」から学べる教訓があるなら活用して、なるべく多く思考訓練をして、その時に備えたい。

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2022/09/21

先の大戦を縦と横の様々な視点で議論している。 日本に関する考察では避決定、縦割り、責任の所在など現在の日本的組織に当てはまる点が多く、教訓とすべきだと感じた。 外国に関しては米英とソの一枚岩でない様子は世界史でも感じられるが、中華民国と米英ソの関係や仏とその植民地の関係、伊が世界...

先の大戦を縦と横の様々な視点で議論している。 日本に関する考察では避決定、縦割り、責任の所在など現在の日本的組織に当てはまる点が多く、教訓とすべきだと感じた。 外国に関しては米英とソの一枚岩でない様子は世界史でも感じられるが、中華民国と米英ソの関係や仏とその植民地の関係、伊が世界に与えた影響など複雑な当時の世界情勢が垣間見えて興味深かった。

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2022/08/05

「先の大戦」と曖昧に呼ばれることの多い「大東亜戦争」をグローバルな観点から「複合戦争」として捉え、戦争の全体像を把握しようとした本書は、もともと月刊『Voice』の2022年1月号、4〜6月号に掲載された諸論考を編集したものである(第1章と13章、14章は書き下ろし)。レビュアー...

「先の大戦」と曖昧に呼ばれることの多い「大東亜戦争」をグローバルな観点から「複合戦争」として捉え、戦争の全体像を把握しようとした本書は、もともと月刊『Voice』の2022年1月号、4〜6月号に掲載された諸論考を編集したものである(第1章と13章、14章は書き下ろし)。レビュアーは『Voice』未見のため、どの論考も初見である。 「複合戦争」という視点は、本書への寄稿はないが、内閣府アジア歴史資料センター長の波多野澄雄氏らが主張しているものであり、真珠湾攻撃に始まる日米戦争、主に東南アジアを舞台とした日英戦争、1937年に始まる日中戦争、そして終戦間際の日ソ戦争という4つの戦争の複合戦争という意味である(p.7)。 第1章の中西寛氏による「20世紀史のなかの第2次世界大戦と日本」はこの戦争の始点を1890年に置き、半世紀余りに及ぶ大きな秩序変動過程のなかに位置付けようとしている。1890年は地球規模の国際的秩序の転機となった年であり、象徴的には、ドイツ帝国が帝国主義競争に本格参入したこと、マハンが「海上権力史論」を書いたこと、シベリア鉄道が開通したことなどが挙げられている。慧眼かと思う。同年、日本でも大日本帝国憲法が施行され、教育勅語が出され、維新以来の国家体制が整う。以後、1925年をヨーロッパの修正帝国主義秩序の安定をみた中間点としつつ、1945年の終点までにそれが急速に崩壊するという流れである。日本経済史を専攻するレビュアーにとっては、日本の「1890年頃に設立された体制は、西洋立憲主義の体裁をとり、天皇を君主として位置付ける大日本帝国憲法と、教育勅語に表現される、万世一系の神聖な天皇を中心とした伝統的な倫理的共同体意識が融合しないままに接着された点で脆弱性を内包していた」(p.29)という点がとくに重要な指摘かと思う。日本主義とアジア主義の緊張もそこに胚胎していたという指摘も然りである。また日本国内で「憲政の常道」が確立し、産業帝国の地位が確立した時点を1925年に取るのも賛成である。 と、この調子で紹介していくとえらく長くなりそうなので詳細な紹介はやめておくが、第2章松浦正孝氏の「日本にとって大東亜戦争とは」での満洲の位置付けに関する指摘(pp.48-49)や、すでに牧野邦昭氏の『経済学者たちの日米開戦』でも指摘されていることだが、第3章の森山優氏の「日米開戦という選択」での「真の対立軸は臥薪嘗胆(避決定)か外交・戦争(決定)かだったのである」(p.69)という指摘、などなど鋭い指摘が多い興味深い論考が並んでいる。 第4章の村田晃嗣氏の論考から第10章の加藤聖文氏の論考までの7章分は、それぞれアメリカ、イギリス、中華民国、ドイツ、ソ連、フランス、戦後の東アジアとの連続性、という観点から「大東亜戦争」を照射しようとするもので、いわば主要なプレーヤーから観た「大東亜戦争」論である。第11章は、インテリジェンスという視点から、さらに第12章と第13章はいわゆる民主主義対ファシズムの戦いと言われた第2次世界大戦を今一度最新の研究成果を踏まえてそれぞれ論じられている。最後の第14章は、地域主義にもとづく国際協調の試みが広域秩序論に意味転換していく過程で、知識人たちがいかに思想的な格闘を続けていくかの様子を垣間見ている。 それぞれの論考から刺戟を受けるものの、全体像としてはややまとまりに欠くきらいがあるのは確かだが、編者の細谷雄一氏が簡潔にまとめている序章の問題意識に立ち戻ることで本書の重要性は確認されよう。

Posted byブクログ