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シンクロと自由 の商品レビュー

4.1

21件のお客様レビュー

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2022/12/03

後半にいくにつれどんどん面白くなっていった。 (実は半分くらい読んで、しばらく放置していた) 途中から、作者のお年寄りたちとの関わりの誠実さに、読者の私がまさしく「シンクロ」していった感じだ。 最初は警戒モード(笑)だった。 介護や福祉の本を書く人(しかも男性)なんて、どこかウ...

後半にいくにつれどんどん面白くなっていった。 (実は半分くらい読んで、しばらく放置していた) 途中から、作者のお年寄りたちとの関わりの誠実さに、読者の私がまさしく「シンクロ」していった感じだ。 最初は警戒モード(笑)だった。 介護や福祉の本を書く人(しかも男性)なんて、どこかウソがあるだろ。身を晒してないに違いない。 そう思って読む。 でも、だんだん、おや?この人本気かも。 いやいや、なかなかいいじゃん。 このサラシっぷり。 男の人にありがちな「マンスプレイニング」がない。 実体験の話がこの人の汗を感じる。 そんな感じで、この著書が信じられる人だと思ってからが、楽しい! 半径200メートルの範囲の住民にミツコさんが一人で歩いていたら連絡くださいとお願いした話。 みんな「たまたま」見つけてくれる。 そして「たまたま」ヒマだから送り届けてくれる。 この「たまたま」がミソ。 こういう協力者の気持ちの感触は、現場にいる人だからこその感覚なんだろうなと思う。 朝の申し送り。 職業倫理上、口に出すわけにはいかない言葉がある。「○回目で叩きたくなった」とか。その言葉を成仏させずに闇に葬ることはとても危険だと村瀬さんは言う。 それからなんと言っても、お年寄りたちの「おはなし」の面白さ! 「ありもしないことに付き合っても一銭の利益も生まれない。けれど、人間の面白さに出会うことができる。」 こうやって、介助者たちが、面白いなあと思って空気を抜きながら接してくれるといいなあ。 ここにいるお年寄りはいいなあ。 レイヤーを変えることで、介護の仕事はこんなにも人間らしくなるのだということがわかる。 この本が売れてるのは納得だし、うれしいことだ。

Posted byブクログ

2022/11/13

ケアに関する本はこれが初めてだ。NHKラジオの飛ぶ教室で紹介されていて、面白そうだと思ったのがきっかけ。 介護の大変さは想像を超えているのだろうが、専門の介護職の方が限界を超えそうになったらどうするか。まず助けを求める、それができないときは逃げる、ことを職員に周知されていて、と...

ケアに関する本はこれが初めてだ。NHKラジオの飛ぶ教室で紹介されていて、面白そうだと思ったのがきっかけ。 介護の大変さは想像を超えているのだろうが、専門の介護職の方が限界を超えそうになったらどうするか。まず助けを求める、それができないときは逃げる、ことを職員に周知されていて、とても実践的だと思った。そうしなければ、叩いてしまうのだ。 そして、朝の引き継ぎが如何に重要か。職員に起こったことと思いを慎重に掬い上げ、集団の知としていく。 現場では介護職の意図を超えたことが起こる。介護にある深みに触れてもらえたら、と著者あとがきにあるが、本年マイNo.1はこの本かもしれない。

Posted byブクログ

2022/11/12

「宅老所 よりあい」所長 村瀬孝生さん。村瀬さんの本を読むと、こんなふうに自分も老いることを尊重されたいな。 こんなふうにケアしてもらえるなら、老いることが怖くなくなる気がします。老いた体のなかで20代の意識が目覚めるタイムスリップの記述はスリリング! 著者の印象的な文...

「宅老所 よりあい」所長 村瀬孝生さん。村瀬さんの本を読むと、こんなふうに自分も老いることを尊重されたいな。 こんなふうにケアしてもらえるなら、老いることが怖くなくなる気がします。老いた体のなかで20代の意識が目覚めるタイムスリップの記述はスリリング! 著者の印象的な文章を以下に抜粋します。 はじめに 時の流れが速すぎてついていけません。(中略)そんなぼくが、これまで生きてこられたのは、老人介護のおかげです。決して大げさではなく本当にそう思います。 お年寄り一人ひとりの実感に、ぼくの実感をシンクロさせることが面白く感じられました。(中略)しかしその一方で、意図的にシンクロすることを目指すほど、お年寄りを支配しようとしているのではないか、という疑念が生じはじめてきました。シンクロすることで生活行為における不自由は免れるのですが、何かに拘束されてしまい、自由を失ってしまうようにも感じられたのです。 むしろ、お年寄りとうまくシンクロできなかったとき、万策が尽きて手段を失ったときにこそ、解放される。そんな感覚を得るようになりました。 (中略) 「する、される」を超えてお互いにケアしあう状況が生まれるのかもしれません。 本書は個人の実感と主観に満ちており、そこから生じた考えで成り立っています。よって、明日からの介護にすぐ役立つことはありません。エビデンス重視の地代に逆行する本だと思います。けれど、よく分からないことに、分からぬまま付き合い続ける実践があってもよいと思うのです。(抜粋おわり) ほんとにそんな実践があってもよい!村瀬さんたちスタッフの方たちの仕事が多くの方に知っていただけますように!! ブクログに書くことで『宅老所よりあい』の応援になるといいな。そして、老人介護に光があたるといいな。

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2022/10/16

前に購入して放置していたのだが、高橋源一郎さんの「飛ぶ教室」の書評を聞いて、俄然読む気になって一気読み。 現在、親の介護でいろいろ迷いが生じている自分には、示唆に富む内容だった。 老人とのやりとりは、時に笑えて時に深刻。介護する側も精神的に追い詰められることもある。ただ、追い詰め...

前に購入して放置していたのだが、高橋源一郎さんの「飛ぶ教室」の書評を聞いて、俄然読む気になって一気読み。 現在、親の介護でいろいろ迷いが生じている自分には、示唆に富む内容だった。 老人とのやりとりは、時に笑えて時に深刻。介護する側も精神的に追い詰められることもある。ただ、追い詰められた人をふっと解放させる力を持っているのも老人。数々のエピソードから、私も楽になった気がする。 『社会からすれば支障にしかみえない混乱やバグを、排除することなく集団が器になってうけとめ、溜め込むことができれば、時間をかけて分解していく』 そんな大きな、ゆったりと時間が流れる器の中だったら。 社会に少しでもそういう側面があったら。 介護は個人でやらない方がいい。多くの人に関わってもらった方がいい。核家族の中では難しいのだ。 と、最後に考えたのでした。

Posted byブクログ

2022/10/12

職員の人たちは、本当に心が優しい。 こういう人たちのおかげで社会はなんとか回っているのだと、あらためて思った。 でも、みんなが老いに対してこんなに前向きに感じられるわけではない。 ぼけるのはすごく怖い。 『自分を保てないと感じた場合は、逃げていい』という言葉は、これからの支えにな...

職員の人たちは、本当に心が優しい。 こういう人たちのおかげで社会はなんとか回っているのだと、あらためて思った。 でも、みんなが老いに対してこんなに前向きに感じられるわけではない。 ぼけるのはすごく怖い。 『自分を保てないと感じた場合は、逃げていい』という言葉は、これからの支えになると思う。

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2022/11/27

介護に関する本、何を読んでも「そうは言ってもね…」という気持ちが残るが、あるていど数をこなしていくと、なるほどそういう受け止め方があったのかと腑に落ちる。結局、ひとによる、と言えばそれまでなのだが、それなら自分はどうしていくのか、という一助になればいい、このような読書が。

Posted byブクログ

2022/10/03

一つ一つのお話は現実としてみると大変なんだけど、こんなふうに考えることで愛おしくなるんだ。 なかなかすべての介護人がこの境地にならないだろうけれど、こんな温かな介護施設や人がいることに救われる。 タイトルの「シンクロする」、この行為は難しいがどんな局面でも救われると。 また...

一つ一つのお話は現実としてみると大変なんだけど、こんなふうに考えることで愛おしくなるんだ。 なかなかすべての介護人がこの境地にならないだろうけれど、こんな温かな介護施設や人がいることに救われる。 タイトルの「シンクロする」、この行為は難しいがどんな局面でも救われると。 また著者の本を読んでみたい。

Posted byブクログ

2022/09/25

認知症の介護の現場を見事に描く。 シンクロの先にみたものは? そして介護の現実と理想に違いがあって当たり前。 自分の両親の姿を見て尚更胸を突く。

Posted byブクログ

2022/09/11

老いてボケた人は社会から疎外され施設へ。これは個人が住み良い社会を目指してきた自由主義の軋みの一つだ 仕方ない、そう思うしかない 僕も仕事柄何人も施設に入れてきた その軋みの中にある、愛すべきナラティブな物語 老いとは「あるべき自分」からの解放なんだ

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2022/08/21

ご近所さんと連れ立って「よりあい」に帰ってきたミツコさんの「どういたしまして」には思わず吹き出してしまった。そう言えば、私自身も特養で実習中「家に帰らなくちゃ」と繰り返し訴える利用者さんに対してどうすれば良いのか分からず、ただ一緒に施設内をぐるぐる歩き続けた経験がある。終了時間の...

ご近所さんと連れ立って「よりあい」に帰ってきたミツコさんの「どういたしまして」には思わず吹き出してしまった。そう言えば、私自身も特養で実習中「家に帰らなくちゃ」と繰り返し訴える利用者さんに対してどうすれば良いのか分からず、ただ一緒に施設内をぐるぐる歩き続けた経験がある。終了時間の関係で途中で切り上げなければいけなくて、最後に「帰りますね。お気をつけて」と声をかけたら顔をあげて「どうもね」と言われ驚くやら嬉しいやら…。介護の現場ではこちらがお世話しているつもりが、逆に助けられていたことが何度もあった。絶対的な正解がないことをその都度ひとりひとりが考え続ける営みこそが生きるということなのかもしれない。迷ったり困ったりしてもいいんだ。どのエピソードも本当に心に沁みる。

Posted byブクログ