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韓国文学の中心にあるもの の商品レビュー

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20件のお客様レビュー

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2023/02/13

各誌における年末のまとめで取り上げられているのを複数回目にして、これは読んどかないとってことで。気持ち的にはブックガイドとして手に取ったものなんだけど、その実、初心者向けの韓国現代史の良い教科書。セウォル号事件はじめ、自分がほとんど知らないあれこれが提示されていて、隣国のことなの...

各誌における年末のまとめで取り上げられているのを複数回目にして、これは読んどかないとってことで。気持ち的にはブックガイドとして手に取ったものなんだけど、その実、初心者向けの韓国現代史の良い教科書。セウォル号事件はじめ、自分がほとんど知らないあれこれが提示されていて、隣国のことなのに…と忸怩たる思いにかられた次第。特に気になった下記著作からまずは手に取ってみて、少しずつでも理解を深めていきたい。 キムジヨン こびとが打ち上げた小さなボール 少年が来る

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2023/01/29

『少年が来る』で光州事件についてあまりに知らなさすぎたので、こちらでお勉強を。 ⁡ 『82年生まれ、キム・ジヨン』が書かれる背景となった江南女性殺人事件、韓国におけるフェミニズム文学に始まり、セウォル号、IMF危機、光州事件、朝鮮戦争へ、韓国現代史を遡りながら文学との関わりを解説...

『少年が来る』で光州事件についてあまりに知らなさすぎたので、こちらでお勉強を。 ⁡ 『82年生まれ、キム・ジヨン』が書かれる背景となった江南女性殺人事件、韓国におけるフェミニズム文学に始まり、セウォル号、IMF危機、光州事件、朝鮮戦争へ、韓国現代史を遡りながら文学との関わりを解説している。 ⁡ 著者の斎藤真理子さんは韓国文学を読む人なら知らない人はいない翻訳者で、日本における韓国文学ブーム立役者のひとり。ハン・ガンの文章の美しさは原文はもちろん翻訳の力も大きいのだと思う。本書でも、非常に重く、複雑な韓国の歴史を読みやすい文章で解説してくれている。 ⁡ 梨泰院の事件のときも感じたことだが、韓国で起こる事件は突発的なものではなく、そこに社会の矛盾だったり、歪みみたいなものが関係している。少なくとも韓国の人たちは何か事件が起きたとき、それを運の悪い人に起きた他人事とはとらえていない。 ⁡ 本書が時系列ではなく、遡る形で現代史を追っているのも象徴的で、現代の韓国は朝鮮戦争、さらに日本の占領時代から続く死者の蓄積の上に成り立っているという意識がどこかにある。韓国文学は直接に歴史を扱っていない作品でもそれを忘れていない。BTSが歌詞の中に光州事件を象徴する「518」を入れてくるように、現代の若者たちにとっても遠い昔の話ではないのだろう。 ⁡ 朝鮮戦争は日本の占領とは無関係ではありえないのに、朝鮮特需という後ろめたさもあり、日本はその後に続く韓国の困難な歴史から目を逸らしてきたという部分も納得。しかし、本当に私たちは隣の国に対して無関心すぎたのではないか。 ⁡ 韓国文学になぜ惹かれるのか、韓国文学のもつ力の源泉とは何かがよくわかる一冊です。 図書館で借りて読みましたが、ブックリストだけでも手元に欲しいので新たに購入しました。 以下、引用。 ⁡ 41 私はそこに、個人の中の社会と社会の中の個人を浮き彫りにする韓国文学の底力を感じる。 ⁡ 57 「誰かの苦痛に共感することと不幸を見物することとはまったく違う」 ⁡ 95 この本を読むことは、今まで知らなかったスポーツをする体験に似ている。身体にかかる負荷が独特なのだ。たとえていうなら、水の中でやるべきではない動作を水の中でやっているような、異様に重い食器で食事をするような、今までにない感覚である。それは、死に一歩踏み込んだ状態でハン・ガンが書いており、それを追体験する形になるからではないかと思う。 ⁡ 189 韓国で、開戦の日付によって戦争が記憶され、語られていることは重要だ。 ⁡ 逆に韓国では、戦争の入り口である六・二五を絶対重視し、休戦協定が成立した七月十七日には関心を寄せない。それはもちろん戦争が終わっていないからである。 ⁡ 212 わたしだけが見ているのなら、そこに何か意味があるのではないか。 わたし一人だけが見ているのなら、それを証明する責任があるはずだ。 ⁡ 226 日本の植民地にされ、第二次世界大戦に何の責任もなかった朝鮮がアメリカとソ連によって分割占領され、五年後、全土が分断されたまま大きな戦争が始まり、第二次世界大戦による日本の死者数よりずっと多くの人々が死んだことは何度でも思い出すべきだろう。 ⁡ 231 若いときに最初の戦争を経験した彼女らは、人生の中でいつ何時でも二度めの戦争が起こりうると思い、それは思うというよりほとんど無意識の確信と予感であり、それを抱えて生きてきたため、ときおり、知らず知らずのうちに同じようにして過去が今でもここに現存していると認めるしかないことがあり、そう考えると自分たちの人生の内側では……つまり心の中では……戦争が完全に中断されたことはないみたいだ、と言った。 ⁡ 267 「儒教やシャーマニズムに由来する伝統的な死生観のゆえに、韓国の現代史は無数の死者たちが突き動かしてきたといっても過言ではない。時代と時代の裂け目に既成社会の矛盾を露呈する衝撃的な大量死、または個人の死が発生するごとに、もとより人びとのなかに積もっていた鬱憤が一気に噴き出し、それが社会を一新するような大規模な地殻変動をもたらしてきたのである」 ⁡ 291 私たちは未だに分断が現実である世界に、韓流ドラマやK-POP人気とヘイトスピーチが同時に渦巻く日本に生きている。 ⁡ 302 「良い小説とはたいがい、価値ある失敗の記録だったりします」 ⁡

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2022/11/22

まず声を大にして言いたい事は、タイトルと装丁はシンプルだけど中身は濃厚てんこ盛り!時系列を遡るかたちなのもわかりやすいし情報量が凄い。これまで漠然と聞き流していたニュースや両親から聞いていた時代のことが次々に繋がり出す感覚に圧倒され、基本的に本は図書館で借りる派だけど読了後即、発...

まず声を大にして言いたい事は、タイトルと装丁はシンプルだけど中身は濃厚てんこ盛り!時系列を遡るかたちなのもわかりやすいし情報量が凄い。これまで漠然と聞き流していたニュースや両親から聞いていた時代のことが次々に繋がり出す感覚に圧倒され、基本的に本は図書館で借りる派だけど読了後即、発注しました。巻末の年表はこれから資料としても何度も見直すと思う。 ポリタス 石井千湖さん推薦本

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2023/01/08

韓国の文学について、韓国の歴史の中での大きなできごとを織り交ぜながら記述されている本。 セウォル号事件は知っていたが、ほかの事件やIMF危機、朝鮮戦争など、知らないことが多すぎた。ここまで悲惨なことが起きていたとは。 国の主導権を国自身が握れないことの恐怖、そして今なお戦争が...

韓国の文学について、韓国の歴史の中での大きなできごとを織り交ぜながら記述されている本。 セウォル号事件は知っていたが、ほかの事件やIMF危機、朝鮮戦争など、知らないことが多すぎた。ここまで悲惨なことが起きていたとは。 国の主導権を国自身が握れないことの恐怖、そして今なお戦争が終わっていないことの重大さ、 日本人はもう少し関心を持つべきだと思った。

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2022/11/17

大げさにではなく、いままで抱いていた戦後のイメージが180度変わった。 通り一遍の韓国の歴史の本も読んでいたけれど、韓国と日本とでは、経験してきた歴史やそこから見える景色がこんなに違うのかと愕然とした。 この先、ドラマを見たりアイドルが兵役に行ったりするたびに、きっと本書の内容を...

大げさにではなく、いままで抱いていた戦後のイメージが180度変わった。 通り一遍の韓国の歴史の本も読んでいたけれど、韓国と日本とでは、経験してきた歴史やそこから見える景色がこんなに違うのかと愕然とした。 この先、ドラマを見たりアイドルが兵役に行ったりするたびに、きっと本書の内容を思い出すと思う。 戦後、朝鮮特需や韓国への罪悪感とともに戦後を乗り越えてきたという日本人の姿は、ヘイト渦巻く現代には見えなくなってしまっているけれど、たしかにもう少し昔の人たちは日本の戦争責任や反省をもっと普通に口にしたり書いたりしていた気がする。ごく最近読んだ茨木のり子さんのエッセイでも、日本が朝鮮を植民地化していたことを失念していて恥じ入る記述があったけれど、今あんなことを書こうものなら叩かれかねないもの… セウォル号に関しては、政治や社会が正常に機能しなくなりつつある今の日本を予見しているかのような内容でゾッとした。民営化によって人命救助が十分にできなかったとか、船長は非正規雇用せだったとか、当時操縦していたのは新人だったとか。知床遊覧船の事故も、これを読み終えた直後に起きた梨泰院の事故も、根っこは同じな気がする。

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2022/09/30

なぜ韓国文学に惹かれるのか今までうまく言語化出来ていなかったが、『修復』という単語を見てなるほどと思った

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2022/09/28

東アジアで隣同士の国。日本と韓国。似た風土であるが、過去からの文化も違い、また歴史も違っている。その韓国の文学を最近から遡って日本からの解放までの時間軸で文学を論じている。沢山の読んでみたい本を紹介された。それらの本で少しでも韓国の風に触れたいと思う。 第一章:キム・ジヨンが私...

東アジアで隣同士の国。日本と韓国。似た風土であるが、過去からの文化も違い、また歴史も違っている。その韓国の文学を最近から遡って日本からの解放までの時間軸で文学を論じている。沢山の読んでみたい本を紹介された。それらの本で少しでも韓国の風に触れたいと思う。 第一章:キム・ジヨンが私たちにくれたもの、第二章:セウォル号以後文学とキャンドル革命、第三章:IMF危機という未曽有の体験、第四章:光州事件は生きている、第五章:維新の時代と「こびとが打ち上げた小さなボール」、第六章:「分断文学」の代表「広場」、第七章:朝鮮戦争は韓国文学の背骨である、第八章:「解放空間」を生きた文学者たち、終章:ある日本の小説を読み直しながら。

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2022/09/24

隣国を知ることで、自国の特徴を知ってみようと、本書を取る。 が、本当にここまで悲惨な状況なのだろうか。文学では過剰に表現されるためなのか。 彼我の差を感じずにはいられない。

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2022/08/11

韓国社会が経験する苦難に作家はどう向き合い、そうして生まれる作品を読者はどう受容してきたか、の一端が見えてくる。 また、1960年は日本と韓国にとって分水嶺だったんだな、と。市民運動の成功体験と失敗体験は、その後の両社会における主権者意識にも根深い影響を与えたことが、比較によっ...

韓国社会が経験する苦難に作家はどう向き合い、そうして生まれる作品を読者はどう受容してきたか、の一端が見えてくる。 また、1960年は日本と韓国にとって分水嶺だったんだな、と。市民運動の成功体験と失敗体験は、その後の両社会における主権者意識にも根深い影響を与えたことが、比較によって鮮やかにわかる。 そして、知れば知るほど日本について、自分について考えることを余儀なくされる。韓国社会の痛みや苦しみを「よその国」の出来事とするには、日本の関わりはあまりに深い。 個人的に物心ついたとき既に日本は経済大国だったし、それを享受してきた自覚もあるが、その発展の礎には隣国の悲惨な戦争が含まれ、その戦争が今も終わっていないということ、しかも日本においてそのことはほとんど意識されないということ。意識せずにいられる状況の中で、価値観や歴史認識が形成されているということ。そういったことと否応なく向き合うことになる本だ。

Posted byブクログ

2022/07/29

私だけかどうかわからないが、いやー、相当にヘヴィだった。 斎藤真理子が出てくるまで韓国の文学は金芝河くらいしか知らなかった。それが『カステラ』以降、なんでこんなに面白いの、力があるの、とぐいぐい読まされてきたが、いかに表面的だったことか。セウォル号事件や光州事件、そして朝鮮戦争...

私だけかどうかわからないが、いやー、相当にヘヴィだった。 斎藤真理子が出てくるまで韓国の文学は金芝河くらいしか知らなかった。それが『カステラ』以降、なんでこんなに面白いの、力があるの、とぐいぐい読まされてきたが、いかに表面的だったことか。セウォル号事件や光州事件、そして朝鮮戦争などを今に至るまで背負い続けその影響下にあるからこそ(若い世代の作家まで含めて)の、力だったんだな、と思い至る。その重さ。読み終えて、ぐったりくたびれてしまった。面白いけど、重い本だと思います。そして確認したい本、読みたい本が増える。

Posted byブクログ