古代の人・ひと・ヒト の商品レビュー
古代の日本人の主観的な世界認識である環世界を読み解くヒントを諸史料から得る試み。 戸籍に記された国家が個人を識別するための記号である特徴と地域社会で生きていた個別認識には差があり、村落共同体の幻想の中で姓名が重要ではなかった。日本の実名忌避は中国の礼制とは異なる言霊社会の発想を背...
古代の日本人の主観的な世界認識である環世界を読み解くヒントを諸史料から得る試み。 戸籍に記された国家が個人を識別するための記号である特徴と地域社会で生きていた個別認識には差があり、村落共同体の幻想の中で姓名が重要ではなかった。日本の実名忌避は中国の礼制とは異なる言霊社会の発想を背景とするもの。身長の大小による「異形」「異界」の表現。その心性に今も変わらない源泉を見る。 古代に「名もなきひと」はいなかった。名もなき者は現代社会が生んだ存在であるという関和彦の指摘の紹介は新鮮だった。
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<目次> プロローグ 古代の人・ひと・ヒト 第1章 古代の人々と人名 第2章 古代の人々と障害者・病者 第3章 古代の人々と身長 エピローグ 古代の人々と顔 <内容> 史料の実証ばかりでなく、また教科書的な事件や人物ばかりではなく、歴史を作っているのは各時代の人々である、という視点から、古代史を読み解こうとした本。エピローグは魅力的だったが、必ずしも成功していない。それは史料の不足が最たるものだろう。基本が『日本霊異記』であり、それに戸籍や計帳などを交えての分析なので、致し方ない。もともと史料はないのだから。
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