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会社という迷宮 の商品レビュー

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13件のお客様レビュー

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2022/10/25
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ビジネス用語として広く用いられている「戦略」「市場」「組織」等の言葉を題材に、これらが本来内包する意味合いに改めて焦点を当て、現状との乖離に警鐘を鳴らす一冊。 コンサルタントとして企業経営に携わる立場として、半ば無意識に「事実に基づく客観的な分析を行えば、適切な戦略を導出できる」ことを念頭に置き、検討を進めている自分の思考の癖を自覚した(改めて、SCP/RBV/DC等の経営理論を「知っている」ことと、その知識をダイナミックに「活用する」ことの断絶を認識した次第)。 個人的に最も印象的であったのは、「「主観」から逃避する誘惑」(p.242)という小見出し。本来会社とは、その存在目的からして「主観」的な存在であり、その目的に共鳴する人材の「主観」的な判断に基づいて組織化されているものである。この本質論から目を背け、個々の意思決定の「(社内外から見た)正しさ」を担保するべく「客観」性を重視しているのが、大多数の現状ではないかと、この小見出しから解釈した。もちろん、全く客観性のない意見を述べているだけでは、社内外の人材を巻き混み、コトを成すことは難しいだろう。しかし、こと「戦略」等の会社の方針に係るレイヤーの話においては、あくまでも主観>客観の主従関係にあり、本質的な主観をないがしろにしてはならない。このことを強く実感した。 特に印象的であった箇所は以下の通り ・「「人材」の価値を決めるのが特定の「会社」「組織」と「人材」の固有の関係であるとすれば、それは本来、個別的で、相互依存的なものである。その「組織」におけるその「人材」の価値、しか定義することはできないのである」(p.187) ⇒ 人材の「市場価値」とは?を改めて問う ・「そもそも「組織」が「組織」であるシンプルな理由は「1+1>2」であるからだとすると、逆に同じことを「人材」側から見れば、「組織」にいることで自分が「1」以上の働きができるからこそ、その「組織」に留まっているのである」(p.188) ⇒ 常に自分に問いたい ・「コンサルタントは、「使う」ものではない、ということである。医者に対して、医者を使う、という言い方(捉え方)をしないのと同じことである」(p.212) ⇒ 自分は使われていないか?また使われるように「自分から仕向けて」いないか? ・「経営者が最終判断において背負っているものは、その「会社」の全存在であり、関連するあらゆる背景事象である(中略)コンサルタントとは、本質的には、その統合的判断をクライアントの立場から手助けする仕事(プロフェッション)なのである。あえて「専門家」と呼ぶなら、その統合的判断の手助けの「専門家」と呼ぶよりない」(p.216) ⇒ 本質的なコンサルタントの役割。何の専門家か?と問われた際の1つの解釈

Posted byブクログ

2022/10/02

私自身、7年近く経営戦略コンサルティングという仕事に従事していたが、つくづくとコンサルティングという仕事は極めて特殊であり面白い仕事だったと思う。そもそも職種名にもなっている”戦略”というワード1つ取ったところで、その意味するところは千差万別であるし、ビジネススクールで習うような...

私自身、7年近く経営戦略コンサルティングという仕事に従事していたが、つくづくとコンサルティングという仕事は極めて特殊であり面白い仕事だったと思う。そもそも職種名にもなっている”戦略”というワード1つ取ったところで、その意味するところは千差万別であるし、ビジネススクールで習うような辞書的な定義を覚えたところで全く意味はない。自分にとっては、自らがひたすらにその意味するところを考えながら、それを実プロジェクトの中で形にしていく、というプロセスを通じて、ようやく自分なりの理解が定まっていった、という気がしている。 さて、外資系戦略コンサルティングファームの代表格であるボストンコンサルティンググループを経て、内資系戦略コンサルティングファームのこれまた代表格であるコーポレートディレクションで長らく戦略コンサルティングに従事した著者が、経営とは、戦略とは、などという極めてオーソドックスなテーマに対して与える問題提起の書が本書である。 あまりにもうなづく箇所が多く、自身としても深く内省させられることが多かった。コンサルタントとして多くの経営者や上位幹部と付き合ってきた著者が、経営者に対して投げかける極めて真摯な問題提起である本書。その価値は経営者でなくとも経営というものを真摯に考えようとする人にとって、確実に良質な内政の機会を与えてくれるであろうことを私は保証する。

Posted byブクログ

2022/07/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

経営について、本質的な考察をした本。(本質的ゆえ抽象度がかなり高く、具体的な企業事例などは一切出てこない) 会社は時価総額やらガバナンスやら、外から求められることを我先にと達成する存在ではなく、その会社の主観で信じている価値を軸に経営すべしという主張は、確かにその通りと思う。ただ最後の寄稿文にもある通り、会社規模が大きくなって経営と現場が乖離したり、創業者が引退したりするうちに、その主観は薄れ、会社も「主観を実現する手段」から「客観的な尺度で高評価を目指す装置」となり、経営者も従業員もそのための道具となっていく(いわゆる疎外)のは、ある種仕方ないことかとも思う。 なので、本書で語られていることは理想像でしかなく現実は違うという批判もあるかもしれないが、進むべき方向性を知るためにも、理想像を示すことには価値があるし、その意味でも良書と感じた。

Posted byブクログ