シン・サークルクラッシャー麻紀 の商品レビュー
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過激なタイトルで興味をそそったが、それと同時に奇を衒い過ぎてると思って手に取りつつ棚に戻したら次に来たときにはなくて残念だった。 昨日ゆっくり書店で本棚を眺める時間的余裕があったので本当にじっくりと目を滑らせていたら、合った。 これが気というものだろうと思い、買った。 なんというか・・・「世界を売った男」だった。 いや「世界を売った男」だった。 つまり上手くやれてないし、この先も何も成すということも無さそうだが心にはともしびが有る者。 些末なことに触れれば、童貞を失望させる小説。 京大を卒業してるのに色恋も就職も家庭も上手くいってない。京大卒なのだからもっとよろしくやってくれて羨望させてほしいのに、そうはなってない。それが辛い。しかしこういう人は多いのではないか?と思わせる熱がある。 サークルクラッシュの有様は「サユリ1号」を彷彿させる。 砕け散ったサークルが光を浴びて虚空に輝く。 再会したときにかつてその輝きに触れたことに気づく。 ここが好きだったな。 村上春樹「イエスタディ」みたいで。 (表面上の関わりはそうとは思えなくても常に意識してる人であり指定席は空席だけど在を意識してる人。 実は互いに気にかけ続けている人たち。) 濃厚な関係といえるし、互いが互いを自分自身の一部といっても過言ではない関係。 そういう話とも言える。 一皮むけば純愛の話だ。 研ぎ澄まされた純愛は大抵の人には猛毒。 この猛毒がドラマや映画になって蔓延する未来を想像する。 クラッシュするサークルなどきっかけに過ぎず、 巻物が転がって地平線の先まで延びるフリーウェイようなみちのり。その端緒。 とは言えサークラや風俗の表現があるので、恋愛や性体験にわだかまりがある人は読みにくい所もかもしれない。 とても良い作品だけど正直さや誠実さは時に人を遠ざけてしまいかねない。 向き合って苦しんでほしい。一緒に。
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京大文学、というか、京大作家というか… 森見登美彦氏や万城目氏や、学生というと必ず京大生で、キャンパスというと百万遍のそばという感じで、京大のコンテキストを省くと多くの作品が成立しなくなる作家さんがいる気がする。 この本も始めの方はそれに近く、おおあの方向か、と思った。 関西方面の人間には一部、受験生の頃、京大に強烈に惹かれる人間がいるんだろうと思う。 自分もその一人だったと思う。 森毅さんという人がいて、この病を亢進させる文章を書く人だった。 ちょと前お亡くなりになったのを期に、久々にお書きになったものを読んだが、まぁ若いときは、手の届かないものに果敢に憧れ、気軽に自分もその世界の人になれると思うものだと、怖いような気持ちを持つと同時に、あの頃の自分を少し可愛くも思った。 この本の最初の部分はそれで、懐かしく、恥ずかしい思いで、読みすすめた。 なかなか尖ってて、バカバカしくてよい感じだった。 が、受賞第一作が、冗長。だんだん読むのが面倒に。 何度か読み返しても、人が代わってるみたいで分からなくて気になったりして、最後に回収されるのかと思って読みすすめても、結局分からなかったりして、だいぶ悶々としてしまった。 挙句、終わりが、なんかいい話みたいな終わり方で、ちょっとそれもありきたりに感じて残念。 麻紀が、次々に冴えない童貞をやりまくる動機も、なんか書かれてはいるが、イマイチピンと来ないし、物語の最初のキレ具合と、回収の普通具合の落差が受け入れられなかった。 しかし、これだけ沢山感想を書きたくなる、というのはやはり、自分にとっては面白い本だったとも言えるかもしれない。
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ギャグセン高いし、言葉選びのセンスも秀逸。古典的な純文学から昨今のSNSで見られるあるある的な文体まで踏襲していて、2022年今の有象無象が凝縮されたような作品。この一冊で著者の虜になってしまった。
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畳み掛けるような言葉に責め立てられるように一気に読んだ。何も考えずに読めてしまうし、一体どこへ向かいどんな結末になるのか全く分からないのに、読後はあれこれ考えてしまう。とにかく、純文学好きな人は読むべし。
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なんだかリアル過ぎ! 麻紀が主人公じゃなくて部長だったのも意外だったな。 今をどう生きるかも考えさせられる内容でした。
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30過ぎた子持ち人間が、小説で心底感動できるなんて思わなかった。最高。エンタメ小説の皮を被った骨太な芸術論や仕事論、家族論が詰め込まれた哲学的名著。主人公が見出した結末は、夢に敗れることすらできず、何ら挑戦をしないで終わってしまった20代を抱えた平凡すぎる多くの大学卒業生たちの日...
30過ぎた子持ち人間が、小説で心底感動できるなんて思わなかった。最高。エンタメ小説の皮を被った骨太な芸術論や仕事論、家族論が詰め込まれた哲学的名著。主人公が見出した結末は、夢に敗れることすらできず、何ら挑戦をしないで終わってしまった20代を抱えた平凡すぎる多くの大学卒業生たちの日々に、ワンチャンあるやんという希望を灯してくれる。 本旨ではないが、作中で描かれる意識高い系書籍たちの描写も最高だった。箕輪さん達が時代にもたらしたリアルをしっかり描いている。また、SNS時代ならではのパワーワードの提示スタイルや、関西弁だからこそ成り立つ軽快さにも、甚く感嘆した。
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いやいや、作者の佐川恭一って何者なの? めちゃくちゃ面白かった。 無尽蔵のボキャブラリーと移り変わる話のテンポの良さ。気づけばスタート地点から 遥か彼方の領域に連れ去られ、それが心地良い。ページの構成上、読むのに、それなりの時間がかかりそうですが、どっぷり浸かりサクサク進みました...
いやいや、作者の佐川恭一って何者なの? めちゃくちゃ面白かった。 無尽蔵のボキャブラリーと移り変わる話のテンポの良さ。気づけばスタート地点から 遥か彼方の領域に連れ去られ、それが心地良い。ページの構成上、読むのに、それなりの時間がかかりそうですが、どっぷり浸かりサクサク進みました。 全ての童貞は読んで下さい!ってキャッチコピーは頷けます。ただ、これ人によって面白いと感じない人いるんじゃないかなぁ。女性が読んだ感想も気になります。 私はこの本を読んで、佐川恭一恐るべし。 オルタナティブ文学という新しいジャンルとの出会いに震えました。
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佐川恭一さんは間違いなく強い作家だ。 タイトルにある「サークルクラッシャー」や「肉寿司」、「ゲットワイルド」、「クソワロリーヌ吉川」等、強力なパンチラインを持っているが、それをもって強いと言っているわけではない。 自身の醜さを包み隠さず発する事で、小説という嘘は強度を得る。(僕は...
佐川恭一さんは間違いなく強い作家だ。 タイトルにある「サークルクラッシャー」や「肉寿司」、「ゲットワイルド」、「クソワロリーヌ吉川」等、強力なパンチラインを持っているが、それをもって強いと言っているわけではない。 自身の醜さを包み隠さず発する事で、小説という嘘は強度を得る。(僕は、本作の作者と登場人物を同一視してしまうクソヤバ読者だ) 肉寿司と顰蹙で目眩しをしながら、その内には、主人公の心の中に微かに残る芸術・文学を奪還する小説の構造は、肉寿司を食らわせながら、芸術への同化を目論む麻紀そのものだ。 「耐えきれないような喪失が繰り返された先には、ロマンティシズムが蘇らざるを得ないのではないか?」わかるぞ、部長。 以前から佐川さんの作品は大好きだったが、本作はちょっと刺さりすぎた。
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烏滸がましくもわかったような口をきくならば、この小説は、すっごいリビドーに突き動かされて書かれたのではないでしょうか。 私もなにか書きたい、「私」を永久保存したい。そのような思いに、読んだ後しばらく震えるような作品でした。まちがいなく記憶に残る本です。笑った。そしてじーんときた!...
烏滸がましくもわかったような口をきくならば、この小説は、すっごいリビドーに突き動かされて書かれたのではないでしょうか。 私もなにか書きたい、「私」を永久保存したい。そのような思いに、読んだ後しばらく震えるような作品でした。まちがいなく記憶に残る本です。笑った。そしてじーんときた! 小説家として書いたものを公にするのは、性行為を人様にお披露目するくらい恥ずかしいと私は考えていて。心身を、インサイドアウトしては戻す、めくってはたたむ、みたいな覚悟がないと、小説家にはなれないような気がします。この小説は、その覚悟と決意に溢れていました。 古谷氏が述べていたように、作者の文学に対する思いをみることができる気宇壮大な作品です。私も文学部だったから、わかるわかるとなった箇所も多くて。より若い頃でしたら、自分の来し方行く末を色々考えてしまう読書体験となったことでしょう。
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著者過去作「サークルクラッシャー麻紀」と「受賞第一作」をかけ合わせて生まれ変わった文字通り「シン」サークルクラッシャー麻紀。 めちゃくちゃふざけてる不謹慎小説っぷりは相変わらずだけど、この人誰より真面目に文学に向き合ってんだろうな…とも思う。今回も笑わせてもらった。
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