私たちはどう学んでいるのか の商品レビュー
学習と知識の転移について、たまたま同じタイミングで読んだマンガ「アオアシ」29巻がまさにこの回とリンクした。 知識は簡単に転移しない。意識的に考えることはもちろんだが、無意識が勝手に蓄え続けた他の知識や意識が棄却したさまざまなパターンとの結びつきも存在する。だから認知パターンを増...
学習と知識の転移について、たまたま同じタイミングで読んだマンガ「アオアシ」29巻がまさにこの回とリンクした。 知識は簡単に転移しない。意識的に考えることはもちろんだが、無意識が勝手に蓄え続けた他の知識や意識が棄却したさまざまなパターンとの結びつきも存在する。だから認知パターンを増やすことはとても重要。揺らぎが創発を誘発する。 何度も例題を解けば転移の可能性は高まるが、限定的。望ましい状態と現状を一致させるため、原因系を探り、自ら問題自体を創発していく。こうすることで知識が得られる。 アオアシ29巻。ただ先輩の意見を聞くだけでも、質問をするだけでも真の成長にはつながらない。ひよっ子でも自分の意見を臆せず伝えられる選手であることで、創発が生まれる。頭を作り替える瞬間が描かれている。 それを受け止める選手たちも、チームメンバーがより良い動きをする事が結局人のためでなく自分のためになるから、話を聞き、より良い方法を提示する。環境が創発に影響する場面。 これは攻殻機動隊の荒巻課長の名言、「我々の間には、チームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。 有るとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ」にも繋がるなと。
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・キーワードは「認知的変化」「無意識的メカニズム」「創発」 ・能力とは「人の内部に存在する潜在的なパワー」という力のメタファーでとらえがち。いつでも同じようにその力を発揮できるのではなくて、「文脈依存性」によってできるときとできない時が生じる。不安定で揺らぎがあるもの。 ・ポラン...
・キーワードは「認知的変化」「無意識的メカニズム」「創発」 ・能力とは「人の内部に存在する潜在的なパワー」という力のメタファーでとらえがち。いつでも同じようにその力を発揮できるのではなくて、「文脈依存性」によってできるときとできない時が生じる。不安定で揺らぎがあるもの。 ・ポランニーの「暗黙知」概念の理解が一段深まった。ポランニーが使う杖の例の意味合いがようやくわかった。「近接項」は「兆し・兆候」のこと、「遠隔項」は「原因系」のこと。盲人が杖で何かをつついたとき、近接項は手のひらの刺激、遠隔項は杖の先にある障害物。包括的理解とは近接項と遠隔項が結びついたときに起きるもので、そのとき近接項は意識の上にのぼらなくなるので暗黙化されて身体化される。自己は遠隔項の中に投げ出され、その世界の中に住み込むようになる。 ・リンク https://booklog.jp/users/takeshimouri?keyword=%E9%A1%9E%E4%BC%BC%E3%81%A8%E6%80%9D%E8%80%83&display=front
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平易な言葉で、人間の学びの仕組みを教えてくれる良書でした。この本を読んだ事は、今後何かを習熟する際に役に立つと感じた。テーマ毎の末尾に、より深く知りたい場合の図書が紹介されているのも親切。
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第2章の「知識は構築される」が特に面白かった。3章の上達と5章のひらめきを読むと、これからの学習もがんばろうという気になる。 6章にあるさまざまな教育批判に対する、「それらにはまったく共感を覚えないが、一定の理屈があることには同意する」という著者のスタンスが好きだ。
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知識の獲得、上達、発達、ひらめきのメカニズムやプロセスが語られ、教育や教師の役割について論じられている。人が成長する仕組みに興味があったため、こういうことだったのかとたくさんの発見があった。が、まだ「身体化」されるほどには「認知の変化」が起こっていない。再読し、他の角度からも理解...
知識の獲得、上達、発達、ひらめきのメカニズムやプロセスが語られ、教育や教師の役割について論じられている。人が成長する仕組みに興味があったため、こういうことだったのかとたくさんの発見があった。が、まだ「身体化」されるほどには「認知の変化」が起こっていない。再読し、他の角度からも理解を深めたい。
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認知的変化に働く無意識的なメカニズムを創発という観点から検討。能力は虚構だとか知識は伝わらないとか、常識を覆す興味深い内容。練習・発達・洞察の各々による認知的変化は複数の認知リソース(考え方)によって引き起こされることが説明されている。 言いたい事はわかるのだが、達成したい目標に...
認知的変化に働く無意識的なメカニズムを創発という観点から検討。能力は虚構だとか知識は伝わらないとか、常識を覆す興味深い内容。練習・発達・洞察の各々による認知的変化は複数の認知リソース(考え方)によって引き起こされることが説明されている。 言いたい事はわかるのだが、達成したい目標によってパターンが異なるのではないかという印象を持った。例えば、歌が上手くなるとか、サッカーが上手くなるとか、計算が得意になるとか、文章が上手くなるとか、ではやはり違いがあるのではないだろうか。また学校教育における素朴教育理論を否定しているが、創発という観点からはそうだとしても、では模倣したくなるような教師の存在や、教師と学生が平等に学べる環境があるのかと言えば甚だ疑問である。という意味においては、政策や制度云々の前に教師としてやるべきことがあるのではないだろうか。
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とても面白かったです。要素還元的で固定的な学びの概念を覆し、還元不能かつ流動的な創発のメカニズムやダイナミズムを、平易な言葉でコンパクトに解説しています。各章にある参考文献も充実しているのも良いですね。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
従来的な学びや発達の考え方を否定し、創発という観点から捉えなおすことの重要性を説く内容。 私たちが何かを学んだり習得しようとしたりするときは、自分が持っているリソースをあれこれと使用して試行錯誤しながら目的を果たそうとする。そうしながら自分の中で意識的・無意識的に「こうすれば良い、ああすればもっと良くなる」と自分が使用しているリソースを調整して深い学びへとつなげていく。物事の習得は簡単なことではなく、停滞しながらも手や頭を働かせて模索しながら行うことが必須である。自分だけではなく、身を置く環境との相互関係により進歩したりしなかったりもする。 そういった面で学校教育を見てみるとどうだろうか。巻末には学びの実際を学校教育に反映させていくにはどうすべきかが書かれている。直接的な答えはなく、教育現場に普及させていくには時間のかかる内容ではあるが、継続的に考え実践していくことが少なくとも大切なのではないだろうか。
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2022.07.24 一般の人の教育に関する常識を良い意味で覆してくれる示唆に富んだ内容でとても参考になった。教える機会が多いが、もう一度よく考えてみたい。
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久しぶりにちょっと興奮しながら後半を一気に読んだ。ツイートをたどっていこう。能力は虚構なのだ。思考力、判断力、表現力や非認知能力など、~力をあまり安易に使うべきではなかったのだ。文脈依存性が強く、安定もしていない。算数・数学の授業をしていると例題をすぐ再現できる子と、そうでない子...
久しぶりにちょっと興奮しながら後半を一気に読んだ。ツイートをたどっていこう。能力は虚構なのだ。思考力、判断力、表現力や非認知能力など、~力をあまり安易に使うべきではなかったのだ。文脈依存性が強く、安定もしていない。算数・数学の授業をしていると例題をすぐ再現できる子と、そうでない子がいる。どうして数値を変えるだけなのにできないのかと思っていたが、自分なりの考えに基づいて試行錯誤しながらやっているのかもしれない。結果的にはその方がしっかり身に付くのかもしれない。すぐできる子は真似(結果マネ)をしているだけで長続きしないとも言える。このあたりはちゃんと経過を見ていかないといけない。というか、いろんなパターンがあるのであって、このタイプはこうだなどと安易には決められないということなのだろうなあ。「平均は発達過程の揺らぎを平準化し、1つの数値へと還元してしまう。そして還元されてしまったあとには、その数字以外何も残らない。次の段階への発達の芽は平均値の算出過程でごみとして捨てられてしまったのである。揺らぎを捨てされば、発達がわからなくなる。」その通りだと思う。形と型、近接項と遠隔項、表コンセプトと裏コンセプト、結果マネと原因マネ。この図6.2はなんかよくわかる、しっくりくるなあ。宮台真司の感染動機、齋藤孝のあこがれの連鎖。他にもいろんな人がいろんな言い方をしていると思うが、まあみんなだいたい同じことだろうなあ。「教師自身が探求を愛する探求者そのものでなくてはならない。」私は「学問のファンクラブ会長」であり続けたい。教育とは知っていることを整理して伝えることではない。教師と学習者の知的協力、相互作用が必要なのだ。ところで、著者の師匠である佐伯胖が寝るという話でおもいっきり吹き出してしまった。1対1で研究報告を聞いているときにだ。ただし、そのあとの注がいい。自分自身がおもしろいと思った場合は、何が素晴らしいかを1時間くらいかけて独演状態で話し続けた。師匠って感じだな。ところで、どうしてこの著者のことを見逃していたのだろうかと思っていたのだが、ちゃんとブルーバックスの「認知バイアス」も読んでいた。意識にのぼっていなかっただけか。今回の本の方が圧倒的に自分には強い印象を与えた。プリマーだからって中高生にだけ読ませておくのはもったいない。
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