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いずれすべては海の中に の商品レビュー

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26件のお客様レビュー

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2022/07/30

「いずれすべては海の中に」 13話からなる人間臭い不思議で静かなSF短編集。短編だけど、どの話もその世界観にするりと馴染めたので、読みやすかったなぁ。 「そして(Nマイナス1)人しかいなくなった」「死者との対話」「そしてわれらは暗闇の中」が特に好きかな。

Posted byブクログ

2023/05/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「一筋に伸びる二車線のハイウェイ」★★ 「そしてわれらは暗闇の中」★★★ 「記憶が戻る日」★★★★ 「いずれすべては海の中に」★★★ 「彼女の低いハム音」★★★ 「死者との対話」★★★★★ 「時間流民のためのシュウェル・ホーム」★★★ 「深淵をあとに歓喜して」★★★ 「孤独な船乗りはだれ一人」★★★ 「風はさまよう」★★★ 「オープン・ロードの聖母様」★★ 「イッカク」★★★ 「そして〈Nマイナス1〉人しかいなくなった」★★★

Posted byブクログ

2022/07/03

ジャケ買いした一冊。表紙からは想像もつかない奇想天外な内容の短編集です。1番目で度肝を抜かれ(笑)2番目でうーむと唸り、3番目から(何か面白いかも…?)となって後は引き込まれるように夢中で読みました。「彼女の低いハム音」「孤独な船乗りは誰一人」「風はさまよう」が好きです(選べなく...

ジャケ買いした一冊。表紙からは想像もつかない奇想天外な内容の短編集です。1番目で度肝を抜かれ(笑)2番目でうーむと唸り、3番目から(何か面白いかも…?)となって後は引き込まれるように夢中で読みました。「彼女の低いハム音」「孤独な船乗りは誰一人」「風はさまよう」が好きです(選べなくて3つになりました)

Posted byブクログ

2022/06/14

作風としては、メインストリームより。というか、頭の硬いコアSFマニアになら「これはSF的ガジェットを使った普通小説で、SFじゃない」ぐらいは言われるかも知れない。読者によっては、どこがSFなのか、理解できないかも知れない「深淵をあとに歓喜して」あたりではなく、むしろSF的奇想が炸...

作風としては、メインストリームより。というか、頭の硬いコアSFマニアになら「これはSF的ガジェットを使った普通小説で、SFじゃない」ぐらいは言われるかも知れない。読者によっては、どこがSFなのか、理解できないかも知れない「深淵をあとに歓喜して」あたりではなく、むしろSF的奇想が炸裂する作(たとえば「そして(Nマイナス1)人しかいなくなった」)でも、話のコアが奇想にはなく、普遍的な人間への興味がよりも重要なテーマとしてあることを言ってるんだけどね。そんな中にあって例外的な、奇想が物語を最後のところで吹き飛ばしてしまうような「イッカク」が個人的ベスト。

Posted byブクログ

2022/07/27

謎の新技術、理由のわからないディストピア、シンギュラリティのように見えるけどそこまでいかない何か……そんなもろもろと対峙しながら、カタストロフに至るでもなく、でも何かがあらわになる物語たち。すき。 一筋に伸びる二車線のハイウェイ コンバインの事故で腕を失い、義手とマイクロチップ...

謎の新技術、理由のわからないディストピア、シンギュラリティのように見えるけどそこまでいかない何か……そんなもろもろと対峙しながら、カタストロフに至るでもなく、でも何かがあらわになる物語たち。すき。 一筋に伸びる二車線のハイウェイ コンバインの事故で腕を失い、義手とマイクロチップを装着した青年。マイクロチップのせいなのか、義手が自分をコロラドの道路だと思っていることに気づく。移植したものがなにかの記憶を宿している話はけっこうある。でも義手で、コロラドの道路ってなんでやねん(笑) 奇想ここにきわまれりだけど追いつめられないのがいい。 そして我らは暗闇の中 夢で見たベビーが実体化し、南カリフォルニア沖合いの岩の上に現れる。 記憶が戻る日 むごい戦争のあと兵士たちの記憶が消され、年に一度だけ思い出すことができる。パパは戦争で亡くなり、ママは顔に火傷を負って車椅子に乗るようになった。でもふだんはその理由を思い出すこともできない。 いずれすべては海の中に 表題作。タイトルが詩ですわ。瀕死の状態で浜に流れ着いた女と助けた女。流れ着いた女は歌手で、助けた女は漂着物を漁って生活しているらしい。助けたと言っても積極的に介抱するでもなくむしろ邪魔にしているような……。そして世界はどうやら何かが起きたようで、つまりディストピアなんだけど、この場所はあまりにも切り離されていて状況もよくわからない。そんななか、ゆるーく何かが芽生えていく感じがよい。 彼女の低いハム音 これも状況のわからないディストピア。おばあちゃんが亡くなり、父親が代わりにロボットを作る。娘は受け入れない。そんなおり、突然親子は家を捨てて逃げなくてはならなくなり、ロボットのおばあちゃんを連れて逃避行へ。 難民になるとき、人はこうしてわけもわからぬまま逃げる羽目になるんじゃないのか。そしてここでもまたゆるく何かが芽生えていく。 死者との対話 惨劇の館に惹かれつづける友人と組んで、その家の精巧なモデルを作り、なかにあらゆる情報を集めたAIを組みこんで売りだすという商売をはじめた「わたし」。友人のイライザは成功者になるけれど……。 時間流民のためのシュウェル・ホーム temporary displaced を「時間流民」と訳してるんだ。temporary には「一時的に」という意味もあるし、「時間の上で、時間がらみで」という意味もあってなかなかやっかいだけど「流民」に「一時的」の意味も含ませていて高等技術。誰もがその場でタイムスリップしてるふしぎな人たちのホーム。やたらと"we"を使いたがるケースワーカーみたいな人よく小説に出てくるよね。多くの人をイラッとさせるしゃべり方なんだろうな。 深淵をあとに歓喜して これはすごく涙腺に来る物語。ひとつの過酷な仕事がもとで夢を捨ててしまい心も閉ざした夫。生涯寄り添ってはきたけれどずっともどかしさをかかえてきた妻。人生の最終盤に来て夫が抱えてきた苦悩の謎を少しでも解きたいとねがう……。何と重ね合わせるかは人それぞれだと思うけれど、なんかすごく刺さった。 孤独な船乗りはだれ一人 「坊主」と呼ばれ旅籠ではたらきながら生活する両性具有のアレックス。自分がどの範疇からもはずれていることを知っているが、おかみさんはそんなアレックスをつかずはなれず見まもっている。この村は港町だが少し前からセイレーンが岬に住みつき、だれも船を出せなくなっていた。そんなとき老船乗りがやってきて……。 なんの範疇にもはまらないこと。その孤独とその利点。それをつかずはなれず見まもる愛みたいなものが描かれていて胸を打つ。 風はさまよう 地球をはなれ何世代ものあいだ宇宙を旅している巨大宇宙船。その住民たちにとって、地球はもはや遠い記憶ですらなく、風も森も海もだれも見たことがない。そんな彼ら、彼女らにとって「歴史」とはなんの意味を持つのか? それを受けついでいくことに意味なんかあるのか。音楽はいったい何をもとにして作られ、うけつがれ、人の心を打つのか。根源的な問いかけがなされる短編。 オープン・ロードの聖母様 著者はミュージシャンでもあるのですね。ホログラムのライブが広まった世界のなかで、貧乏暮らしをしながら生身のライブにこだわるバンドを描く。熱い思いが伝わってくる作品。 イッカク 表紙にもなっている1編。クジラの形をした謎の車を運転してクライエントの目的地まで行くロードノベル。とある町で意外な事実が判明し……いや〜、これ最後の最後に謎の世界が広がってくる1編で楽しかった。 そして(Nマイナス1)人しかいなくなった マルチバースのサラ・ピンスカーが大集合するイベントで殺人事件が起こる話。ドクター・ストレンジも真っ青なくらいすごいカオス(笑) アイディアがすごかった。

Posted byブクログ

2022/06/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

13の短編が収められている。戦争・殺人事件・セイレーン・宇宙船・音楽・ジェンダーなど題材は多岐に渡りながら、そのどれもが人の心の深い部分に語りかけてくる。琴線に触れ、誰かにこの素敵な本のことを話したくてたまらなくなる。 様々な人生を読んでみて、人の数だけある未来が希望そのものに見えた。どう生きてきたか、これからどう生きるのか、悩み受け入れて進んでいく、人々のありのままの姿がそこにあったのが印象的だった。 特に好きなのは『いずれすべては海の中に』『彼女の低いハム音』『死者との対話』『深淵をあとに歓喜して』『風はさまよう』『そして(Nマイナス1)人しかいなくなった』の6話。約半数だ。 いつも最後に余地を残してあるのが想像を掻き立て、可能性を感じさせてくれるのが良かった。

Posted byブクログ