短歌と俳句の五十番勝負 の商品レビュー
穂村弘(1962年~)氏は、札幌市生まれ、上智大学文学部卒、1986年に連作「シンジケート」で角川短歌賞次席(同年の受賞作は俵万智の『サラダ記念日』)、1990年代には加藤治郎、荻原裕幸らとともに「ニューウェーブ短歌」運動を推進した、現代短歌界を代表する歌人の一人。歌誌「かばん」...
穂村弘(1962年~)氏は、札幌市生まれ、上智大学文学部卒、1986年に連作「シンジケート」で角川短歌賞次席(同年の受賞作は俵万智の『サラダ記念日』)、1990年代には加藤治郎、荻原裕幸らとともに「ニューウェーブ短歌」運動を推進した、現代短歌界を代表する歌人の一人。歌誌「かばん」所属。エッセイスト、絵本の翻訳家等としても活動している。 堀本裕樹(1974年~)氏は、和歌山市生まれ、國學院大学法学部卒、出版社勤務、コピーライターを経て、角川春樹が主宰する俳句結社「河」に参加し、結社賞の各賞を受賞。3年間編集長を務めた後、2010年に独立。俳句結社「蒼海俳句会」を主宰。創作のほか、句会やイベントを行うなど、老若男女幅広い層へ俳句の楽しさを広げる活動を行っている。 本書は、作家、タレント、写真家、整体師、牧師、料理店主、幼稚園教諭、大学生、小学生ほか、50人が選んだお題で、穂村氏と堀本氏が一作品ずつを作り、それぞれの歌と句を読み解くショートエッセイを加えたものである。初出は新潮社の文化雑誌「波」の2013~17年の連載で、2018年に出版、2022年に文庫化された。 私は、数年前に短歌に興味を持ちはじめ、穂村氏ほかの現代歌人の歌集を読むとともに、ときどき新聞歌壇に投稿している。従って、本書についても、基本的に短歌に対する関心から手に取ったが、同時に、短歌よりはるかに字数の少ない俳句で、どのように情景や思いを表現するのかにも大いに興味があった。 そして、一読してみて、随分違うものだ、というのが率直な感想である。 短歌は短いとはいえ、31文字あるので、情景や思いがなんとか説明できるのに対して、俳句の17文字ではそれはほぼ不可能である(尤も、短歌作りにおいても、「お話しするな」、「説明するな」というのが鉄則なのだが。。。)。そういう意味では、俳句においては、作り手も読み手も、想像力の優劣が大きな影響を与えると感じた。 また、短歌の世界では、俵万智や穂村弘らの世代が、それまでの近代短歌とは異なる、現代・口語短歌を作り、広げたが、この変革は短歌だからできたのであって、17文字かつ季語が必須という俳句では難しかったのかもしれない(俳句の世界でも、現代俳句のようなものがあるのか、私は寡聞にして知らないが)。近年若者の間で短歌がブーム化していると言われているが、短歌というものに対し、作り手にとっても読み手にとっても、ハードルが低くなったためであることは間違いないだろう。 (2024年6月了)
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歌人の穂村弘さんと俳人の堀本裕樹さんが、50人の出題者からお題を頂戴して、短歌と俳句の五十番勝負をします。 50人の出題者は著名人から一般の12歳の少女まで。 歌や句を説明する文章だけでも、ショートエッセイのようで面白かったです。 読みながら好きな短歌と俳句のセットになってい...
歌人の穂村弘さんと俳人の堀本裕樹さんが、50人の出題者からお題を頂戴して、短歌と俳句の五十番勝負をします。 50人の出題者は著名人から一般の12歳の少女まで。 歌や句を説明する文章だけでも、ショートエッセイのようで面白かったです。 読みながら好きな短歌と俳句のセットになっているもののみに付箋を貼っていったら、あとがき対談という穂村さんと堀本さんの対談で、お二人がお互いにお好きだというお互いの短歌と俳句のセットには、私も付箋を貼っていたところが多く、嬉しく思いました。 ーーーーーー お題 カルピス 出題者 高橋久美子・作詞家・作家・32歳・女性 <虫籠にみっしりセミを詰めこんでカルピス凍らせた夏休み> 穂村弘 <カルピスの氷ぴしぴし鳴り夕立> 堀本裕樹 お題 黒 出題者 千田朝子・小学生・12歳・女性 <水泳の後の授業の光のなかに溶ける文字たち> 穂村弘 <点描の黒猫の眼の夜寒かな> 堀本裕樹 お題 ロール 出題者 寺島さやか・「本屋B&B」店長・30歳・女性 <青空にエンドロールが流れだす蝉が鳴いているだけだった夏> 穂村弘 <つやつやのバターロールや秋の湖> 堀本裕樹 お題 うらはら 出題者 五戸真理枝・「文学座」劇作・演出・36歳・女性 <カラスカラスその賢さとうらはらに愛されなくて目を光らせる> 穂村弘 <花桐や夕ごころとはうらはらの> 堀本裕樹 お題 共謀者 出題者 藤田直哉・文芸評論家・34歳・男性 <友だちがひとりもいない僕の目の中に煌く共謀者よ> 穂村弘 <喰らい合ふ夜食共謀罪めけり> 堀本裕樹 ※煌くは漢字変換が、私のPCではできず違う字を当てました。
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異化とリアリティ。31文字という長さが異化を許容するのか。17文字だと現実にチューニングするしかないか。
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なんか、掲載順が 短歌→俳句 なのって、不公平ではないのだろうか。 同じお題なんだから、文字数少なくて制約条件がきつい 短歌 を先に持ってきてあげるべきなのでは?
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「波」に連載されていたらしい。対談含め、勉強になるし面白い内容だった。 好きだったやつ。 火星移民選抜適性検査プログラム「杜子春」及び「犍陀多」 穂村弘
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まだ最初の数ページしか読んでいませんが、すでにおもしろいです。穂村弘✖️堀本裕樹の短歌俳句勝負、最後まで楽しみたいと思います!与えられたお題に向き合っている2人の様子が目に浮かび、ふふっと笑みが溢れますよ〜
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短歌や俳句に明るくない人にも楽しめる一冊だと思う。それぞれの句に書かれたエッセイのような解説もとても面白い。日本語って、奥深いなあ、素晴らしい言葉だなあ、と改めて思わされる。この共著の二人の他の作品ももっと読んでみたいと思う。そして、願わくばこのお二人のような句を私も詠めたらなあ...
短歌や俳句に明るくない人にも楽しめる一冊だと思う。それぞれの句に書かれたエッセイのような解説もとても面白い。日本語って、奥深いなあ、素晴らしい言葉だなあ、と改めて思わされる。この共著の二人の他の作品ももっと読んでみたいと思う。そして、願わくばこのお二人のような句を私も詠めたらなあ… 日常のなんでもない風景を、ただ見過ごすのではなく、その時々、大切にする。その時の自分の感情を忘れないようにする。それだけで日々がもっと豊かになると思う。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
五十番勝負だから、1日一番ずつ読もうかなーなんて思っていたが、面白すぎて、さくさく読めてしまいました。 「俳句」と「短歌」って、同じようなものだと思っていたけれど、全然違うことに驚き、短い中に込められたいろいろなものが湧いてくるようで、浸りきりました。
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新潮社のPR誌「波」の連載。 お友達からお題を募って、ふたりで題詠したもの(本来すべてがいいわけではないので、玉石混淆はやむなし)を、エッセイ風に自作解説した上で、二度にわたって対談で褒めそやす。 なんという企画。 でも本来歌界や句会ってそんなもんだろうし、作品性の違いというか世...
新潮社のPR誌「波」の連載。 お友達からお題を募って、ふたりで題詠したもの(本来すべてがいいわけではないので、玉石混淆はやむなし)を、エッセイ風に自作解説した上で、二度にわたって対談で褒めそやす。 なんという企画。 でも本来歌界や句会ってそんなもんだろうし、作品性の違いというか世界の捉え方の違いみたいなものが見えて、結構面白い。 穂村さんはファンタジーや架空の夏を設定。 堀本さんは自身の体験や季語から発展。 もちろんそれぞれ幅はあるけど。 短歌と俳句の違い、それぞれにフィットした味方なんだろうな、とも。 出題者ー作者ーもうひとりの作者ー読者という関係の中で生まれる・立ち上がる場。 おおっと思ったのは、 ・街師走信じられない多情の日 ・秋蝉(しゅうせん)の尿(しと)きらきらと健次の忌 ※8月12日中上健次没。堀本は和歌山生まれ。 題詠ではない、エッセイ中での自作引用。 ・切り口の楕円うつくし胡瓜漬 ・妹の寝顔の上の蟻を吹くおいてけぼりのアリスの姉は 解説の壇蜜もナイス。 (1)椅子 穂村弘 歌人 (2)動く 堀本裕樹 俳人 (3)たまゆら 北村暁子 編集者 (4)信じられない 藤野可織 作家 (5)風見鶏 竹本健治 作家 (6)まぶた 松家文子 大学生 (7)唾つば 又吉直樹 芸人 (8)かわいい 名久井直子 装丁家 (9)挿入 荒木経惟 写真家 (10)流れ 鏡リュウジ 占星術研究家 (11)カルピス 高橋久美子 作詞家 (12)謀叛むほん 北村薫 作家 (13)たしなめる 柴崎友香 作家 (14)ゆとり 朝井リョウ 小説家 (15)黒 千田朝子 小学生 (16)水際 中江有里 女優 (17)ぴたぴた 谷川俊太郎 詩人 (18)背骨 菱刈チ力 整体師 (19)四十八 道尾秀介 作家 (20)放射線 新妻香織 相馬市議会議員 (21)夢精 ビートたけし コメディアン (22)客 柳本あかね 「茜夜」店主 (23)塗る 堀江敏幸 作家 (24)文鳥 梅崎実奈 書店員 (25)罪 北村篤生 牧師 (26)ロール 寺島さやか 「本屋B&B」店長 (27)はにかむ 石田ゆうすけ 旅行作家 (28)古本屋 広瀨洋一 古書店主 (29)ゲーム 米光一成 ゲーム作家 (30)誕生日 千野帽子 文筆業 (31)部長 長嶋有 作家 (32)稲荷 布上智範 イタリア料理店店長 (33)逃げる リヒト モデル (34)適性 西崎憲 作家 (35)舞台 柳家喬太郎 落語家 (36)楕円 竹内亜弥 女子七人制ラグビー日本代表 (37)着る 祐真朋樹 スタイリスト (38)腹 佐藤隆信 出版社社長 (39)描く 師岡とおる イラストレーター (40)歌う 大住憲生 ファッションディレクター (41)やわらかい 会田朋代 幼稚園教論 (42)安普請 壇蜜 タレント (43)ふるえる 青柳いづみ 女優 (44)瀬戸内海 田丸雅智 ショートショート作家 (45)おいてけぼり 小松孝知 運送業 (46)愛嬌 山田邦子 出版社受付係 (47)うらはら 五戸真理枝 「文学座」劇作 (48)忖度そんたく 迫田朋子 ジャーナリスト (49)共謀罪 藤田直哉 文芸評論家 (50)ぴょんぴょん 馬場あき子 歌人 【穂村弘×堀本裕樹】あとがき対談 【穂村弘×堀本裕樹】対決! 短歌と俳句 公開勝負 解説 壇蜜
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お題を出す人の人選と、その人がどんなお題を出すのかも見どころ。 壇蜜の安普請とかアラーキーの挿入とか…
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