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人薬 の商品レビュー

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5件のお客様レビュー

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2024/10/14

同業の友人から、「精神」というドキュメンタリー映画(※釜山国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞受賞作品)を教えてもらった。 仕事で相談援助技術の未熟さを日々感じており、精神疾患しかりどのように患者さんと対峙しているのか知りたいと思い映画を見たのだが、映画の中では山本医師はほとん...

同業の友人から、「精神」というドキュメンタリー映画(※釜山国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞受賞作品)を教えてもらった。 仕事で相談援助技術の未熟さを日々感じており、精神疾患しかりどのように患者さんと対峙しているのか知りたいと思い映画を見たのだが、映画の中では山本医師はほとんど何も話さない。ただ眠そうな顔で話を聞き、それであたなどう思ったの?と聞き、それはせつないわなと、肯定するのみ。それでも、患者さんは満足して感謝して帰っていく。今までの信頼関係もあるかと思うが、その光景が衝撃的だった。 その映画の監督と医師との対談本が出ているそうなので読んでみた。 「助けると言っても、何もせんでもええ、患者さんの所へ話を聞きに行くだけでいい。苦しいとか、死にたいとか、暴れればそこへ行くだけ行って、そこで温かい関心を持って、そこにおってくれさえすれば、患者さんは自分でバランスをとっていく。欠けているのは専門的な技術を持った人ではなくて、時と場所を共にしてくれる人が必要ですな。 最初からすべて教えてもらう。僕には指導する力がない。これは確かだから指導できるというものを持ち合わせていない。すべて受け身。おかしいところがあるのではなく、何か意味がある。その人にとっては正しい行動で必然的な形の行動。その人の世界では」 (本からの引用、気になったフレーズ) 相談援助の仕事をしていて、とかく援助者側が自分達の常識、型にはめてそのベクトルへ向かって対象者を引っ張っていってしまう事が多い。沢山のケースを持っていると、1人1人にかける時間がなく、何か意味があるのかも…という事を考える余裕もなくなっていた。 忙しすぎて書類も追いつかず、何のためにやっているのかもわからなくなる事が度々ある。そんな今、この本を読んで考えさせられる事が沢山あった。 経験した事、学んだ事をすべてリセットして、 受け身で、相手の話を聞く事、 もう一度原点に戻って頑張りたいという気づきを沢山もらえた本だった。

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2023/08/19

1936年生まれの山本先生は、引退された。 想田監督との対談で、運営されていた「こらーる」は3年無給で、その後は月給10万円だったと話されていた。悲しいけど、後を引き継げる人はなかなかいない… 想田監督は、いつもにこやかな方だけど、そのにこやかさも攻撃の対象になるって、なんなのか...

1936年生まれの山本先生は、引退された。 想田監督との対談で、運営されていた「こらーる」は3年無給で、その後は月給10万円だったと話されていた。悲しいけど、後を引き継げる人はなかなかいない… 想田監督は、いつもにこやかな方だけど、そのにこやかさも攻撃の対象になるって、なんなのか。

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2022/10/28

どこまでも生きるプロセスを大切にした先生だったと思います。答えは、自分の中から出てくることを信じて、待ち続けた先生でした。

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2022/08/23

生活するのに十分の十必要で、本人に十分の一しかなければ、周囲が足していくしかないわけですよ。 生活していくために必要なものを生活の場で補うための、いろんな人的支援がいるわけやな。 それが「人薬」だと思う。 本人の意向を聞いて、それに沿うこと。本人がよくなろう、五分の一を五分の二...

生活するのに十分の十必要で、本人に十分の一しかなければ、周囲が足していくしかないわけですよ。 生活していくために必要なものを生活の場で補うための、いろんな人的支援がいるわけやな。 それが「人薬」だと思う。 本人の意向を聞いて、それに沿うこと。本人がよくなろう、五分の一を五分の二にしようという本人の意欲、それを育ててだんだん社会復帰していく、力をつけていく。 「病気でなく人を看る」 「本人の話に耳を傾ける」 「患者さんとの共生」 長年患者と向き合い続けてこられた山本先生が紡ぐ言葉が温かい。 人薬の大切さを知ることができた。

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2022/06/30

第一章 歩 み ◎山本昌知の歩み いじめられる人に対して優しかった父のこと/頑張り屋だった母の教訓話/山奥の村に生まれて――“わが家が医者だったら”/精神科の医者になる/病室の鍵を開けて ……ほか ◎想田和弘の歩み 凝り性だった子供時代/郊外型の近代社会に生まれ育って/リクルート...

第一章 歩 み ◎山本昌知の歩み いじめられる人に対して優しかった父のこと/頑張り屋だった母の教訓話/山奥の村に生まれて――“わが家が医者だったら”/精神科の医者になる/病室の鍵を開けて ……ほか ◎想田和弘の歩み 凝り性だった子供時代/郊外型の近代社会に生まれ育って/リクルートスーツで埋め尽くされた就職説明会/ニューヨークで学ぶ/自分のドキュメンタリー映画を撮りたい ……ほか 第二章 「鍵」をはずす 地域に出ること――医者と患者の関係を変える/閉鎖病棟の「鍵」をはずす/人間として、挨拶から/責任回答方式――根っこは病んでいない/患者さんと看護する側の話し合いで、「鍵」を開ける/映画『精神』ができるまで/〈こらーる〉はみんなでつくる組織にしよう/「目の前の現実をよく見て、よく聞いて、その結果を素直に映画に」/誰のためにモザイクをかけるのか/世界の精神病院のベッド数の二〇%は、日本にある ……ほか 第三章 「人 薬」 施設が良い、悪いではなく「行きたいかどうか」/「人薬」――技術でなく、時と場所をともにしてくれる人がいること/介護は「システム」になじまない/世話をする、してもらうのが人間の本質 ……ほか 第四章 地つづきの世界 「参ったな」/落ちこぼれとして/責任はとれないから、謝るしかない/自分で治す、それに従ってアドバイスする/心と身は縄のようになっている/心と体は分けられない/患者さんの世界とつながっている/幻聴も幻視もそこに「ある」/「他人はみんな“磨き砂”」 ……ほか 第五章 〈こらーる〉という場 一生懸命やれば、周囲がつられることがある/「本人が目的意識をもてない入院は反対」/患者体験者を含む支援チームでの医療/患者さんを中心に置く/「システム」の中で人間は交換可能/一人一人の違いに喜びを感じる/個と個が、網の目のように/目的が正しすぎると、逆におっかない/排除ではなく、折り合いをどうつけるか/お互いに「ご親戚様」――みんな「命」で考える/「ノー」は意思表示 ……ほか

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