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アタラクシア の商品レビュー

3.8

31件のお客様レビュー

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2023/11/16

アタラクシアとは、哲学で「心の平静・不動の状態」を指し、古代ギリシャの哲学者エピクロスは、この境地の実現が哲学の目標と説いたという。 そんな言葉とは真逆な内容。 最も幸せな瞬間を、夫とは別の男と過ごす翻訳者の由依。浮気する夫や文句ばかりの母親、反抗的な息子に、限界まで苛立つパ...

アタラクシアとは、哲学で「心の平静・不動の状態」を指し、古代ギリシャの哲学者エピクロスは、この境地の実現が哲学の目標と説いたという。 そんな言葉とは真逆な内容。 最も幸せな瞬間を、夫とは別の男と過ごす翻訳者の由依。浮気する夫や文句ばかりの母親、反抗的な息子に、限界まで苛立つパティシエの英美。妻に強く惹かれながらも、何をしたら彼女が幸せになるのか分からない作家の桂……。 望んで結婚したはずなのに、どうしてこんなに苦しいのだろう── 結婚=心の平静というような思いでその道を選んだはずなのに、その選択ゆえに心の平静からかえって遠ざかってしまう登場人物たち。 そのドロドロとした感情に飲み込まれて、読んでいるこちらも「アタラクシア」からは遠いところへ投げ出されたような読後感でした。 そしてラストが本当に衝撃的。 そこが繋がるの!?とつい読み直すはめに。 金原ひとみさんの本は初めて読んだけど、重たく苦しく、でもどこか刺さるので手元に置いておきたい一冊になりました。

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2023/05/13

蛇にピアス以来の金原ひとみ。デビュー作は宇多田ヒカルが出てきた時と同じような衝撃があった。色々な経験を経た今の彼女が書く物語に興味があって読んでみた。他の作品も読みたい。

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2023/03/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

金原ひとみさんというより小手鞠るいさんとか島本理生さんを読んでるような感覚になった。うまく言えないが。 「…素敵な旦那ゲットして人一人作り出せる作り出せる貴重な三十代の一年を不倫されてるかもって思いながら何もせずに過ごしたんだよあんたは。…」 「色々あって実現しなかっただけで、本来僕たちはこうなるはずだったって、どこかで信じてた。でもそれは自分の、っていうか自分と由依さんの思い込みだったのかもしれないって、あと少しでも距離が縮まれば二人とも気づいてしまいそうな気がするんだ」 自分の存在を否定するのに、結婚相手からセックスしたくないという言葉を聞く以上に効果的なやり方はないだろう。

Posted byブクログ

2022/10/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

金原ひとみによる不倫小説オムニバスみたいな一冊。色んな家庭事情(夫のDV・妻と上司の不倫からの妻のストーカー化・メンヘラによるパパ活・仕事上の付き合い・死産による虚無感)などから不倫を行う人たちの思惑絡み合う、漂う重さのようなものを一身に浴びせられる作品。全体的にあまり救いがないが、中盤過ぎたあたりから、何となくぐいぐい引き付けられるものがあって、最終章はほぼ一気読み状態。 「アタラクシア」というのは、心の不平不動のことらしい。これはそのまま結衣の状態を指すのだろうけど、作中でこの言葉は一回も出てこないという徹底っぷり。作者の言語や感覚センスとも相まって、全体的に読み終えたあとの虚無感が凄まじい一冊である。 個人的には圭がひたすら結衣に寄り添いながらも(最終章で結衣に調味料を分けてあげるような日々を続けたいというあたりに人としての温もりがある)、ともすれば結衣を殺しかねないような危ういまま終わっているところが何とも言えない。 不倫をしている人々も、皆一様に擦り切れていて悲壮感が漂い、あまり強く咎めたくなるような人物がいないような感じがただただ「文学」だなと思った。不倫とは自分を見てほしい心の弱さからくることもある、というようなメッセージも感じたが、そういう弱さを受け止めてくれるのがこういった作品なのだろう。 ああ、強く咎めたくなる人がいないと言ったが。ただし荒木、てめぇはダメだ。

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2022/10/30

結婚・離婚・不倫....男女の複雑に入り混じった群像劇とでもいうのだろうか。きっと共感できるような部分やそういう人いた気がする的な感覚。とにかく想像が追いつかない部分や謎を感じるところも含めてまるで生きている人間と接しているような文章が響いた。人物が全て描かれるのではなく過程で少...

結婚・離婚・不倫....男女の複雑に入り混じった群像劇とでもいうのだろうか。きっと共感できるような部分やそういう人いた気がする的な感覚。とにかく想像が追いつかない部分や謎を感じるところも含めてまるで生きている人間と接しているような文章が響いた。人物が全て描かれるのではなく過程で少しずつみえてくる感じは本当に人と触れ合っている感覚さえ感じる。読み手によっては期待すると何も見出せないのかもしれない作品。

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2022/10/17

様々な状況に置かれた男女視点の話。 登場人物が皆、自己分析と言語化が上手く、聡明で、そのため感情論の部分が少なく、とても「文学を読んでいる」という感覚を強く感じた一冊だった。 金原ひとみさんの本を読むといつも思うが、あと数年を経、男性経験を重ねたらたどり着く思想の境地なのだろ...

様々な状況に置かれた男女視点の話。 登場人物が皆、自己分析と言語化が上手く、聡明で、そのため感情論の部分が少なく、とても「文学を読んでいる」という感覚を強く感じた一冊だった。 金原ひとみさんの本を読むといつも思うが、あと数年を経、男性経験を重ねたらたどり着く思想の境地なのだろうなと。それがこの作品には特に色濃く出ていたように感じた。

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2022/09/18

由依、桂、真奈美、荒木、英美、瑛人 職場などで関わりのある人達がそれぞれの視点で書かれている。何だか読んでいて不快とまではいかないけれど苦手な描写。共感できる人もいない…掴みどころのない本だった。私には

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2022/09/10

金原ひとみの圧倒的筆力を感じさせる、渡辺淳一文学賞受賞の小説。 最初の章「由依」で描かれる、いま・この一瞬を味わう由依の甘美な多幸感、続く「英美」でのどうしようもない閉塞感と世界への呪詛に、金原ひとみの初読者として、たいへんに惹かれた。その後は、ゆっくり一章ずつ読み進め、楽しんだ...

金原ひとみの圧倒的筆力を感じさせる、渡辺淳一文学賞受賞の小説。 最初の章「由依」で描かれる、いま・この一瞬を味わう由依の甘美な多幸感、続く「英美」でのどうしようもない閉塞感と世界への呪詛に、金原ひとみの初読者として、たいへんに惹かれた。その後は、ゆっくり一章ずつ読み進め、楽しんだ。 上記の通り、タイトルの登場人物の視点で各章は描かれるので主役はいないのだけれど、ほぼ主役であろう由依というキャラクターは、恐ろしくも魅力的で。サイコパス的だと言えばわかりやすいのだけれど、そうではないのだろうと留保したくなる、そういう感触をもった。 彼女ほか、登場人物たちの織りなす人間関係の均衡が、ドミノのように繊細に崩壊することを予感させて終わるラストも絶妙。

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2022/09/03

冒頭、由依と瑛人の幸せな恋人同士の時間から始まる。それが、他の登場人物の目線による物語が進むにつれ、由依には夫がいることが分かり、さらに由依の掴みどころのない冷ややかともとれる人物像が浮かび上がってくる。 由依の語りの部分から受ける印象と、他の登場人物から見た由依の印象とのギャッ...

冒頭、由依と瑛人の幸せな恋人同士の時間から始まる。それが、他の登場人物の目線による物語が進むにつれ、由依には夫がいることが分かり、さらに由依の掴みどころのない冷ややかともとれる人物像が浮かび上がってくる。 由依の語りの部分から受ける印象と、他の登場人物から見た由依の印象とのギャップを理解するのが難しかった。 読み終わって荒木の正体を知るにあたり同じことを思った。人の実像を本当に掴むことは難しい。だからこそ他人と一緒にいる結婚というものも難しいのかもしれない。

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2022/08/22

キレッキレで驚異的な語彙力がたまらない。 「一緒にいることの絶望」という発想が斬新で 不思議と全否定できなかった。 世界観にどっぷり浸かりながらそれぞれの立場で考えるとなぜか共感してしまう。

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