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彼女たちの場合は(上) の商品レビュー

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2022/07/07

時折、それは上手くいかないことが重なった時などに、自分のことを誰も知らない場所に行きたいと思うことがある。明日なんて来なければいい。でも、現実には急にどこかへ行けるわけもないし、明日だってもちろんやってくる。そんなこと、言われなくてもわかっている。 そんな時、この本を開く。 ボ...

時折、それは上手くいかないことが重なった時などに、自分のことを誰も知らない場所に行きたいと思うことがある。明日なんて来なければいい。でも、現実には急にどこかへ行けるわけもないし、明日だってもちろんやってくる。そんなこと、言われなくてもわかっている。 そんな時、この本を開く。 ボストン、メインビーチズ、ホワイトマウンテンズーー。きっと生涯行くこともない場所に、二人の少女と旅に出る。あえてそうしなくても、行く先々での景色や空気、食べものの香りが本から漂ってくるので、本当に自分も旅行しているみたい。 歓迎もなければ拒絶もしない街と、別れることが前提の出会い。けれど、一瞬でも今いるところ以外に自分の居場所ができるというのは、とても嬉しい気持ちにさせるのだ。 「だって、行かれないはずがないでしょう?」(p.58) 今日のところはここにいてあげるけれど、ほんとうは、どこへだって行けるんだから。この本を読むとそう確信できる。これ以上悪いことが続くようだったら知らないからね、これが最後の警告よ、なんて上から目線で。 何もかも自由で、でも少し心許ない気持ちがたっぷりと詰まった上巻。まだまだ旅をしていたい。 

Posted byブクログ