渚の螢火 の商品レビュー
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2時間ドラマ的な粗さは、時々目につくけれど、途中からはスピードに乗って読み進められる。 当時は、休日になることぐらいしか意識していなかった沖縄返還。たしかに様々な「問題」があったのだろう。政治や経済以外にも。生活する者たちにも。
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昭和47年、沖縄の本土返還直前に現金輸送車が襲われ100万ドルが強奪される事件が起きる。日米両政府に知られぬよう穏便に事件解決を画策する琉球警察。沖縄戦や戦後の沖縄県民の置かれた立場を考えると心が苦しくなってくる。沖縄の終戦は昭和20年ではなく昭和47年なんだなと改めて感じた。
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若い作者が沖縄をここまで描くとは。ミステリーの形をとった告発だと思った。「インビジブル」も良かったがすごい書き手だ。 双葉社さん、もっといい表紙にしろよ。
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07月-09。3.5点。 沖縄返還直前、ドル回収時に強奪事件が発生し。。。 面白い。時代・沖縄・本土・八重山の人間関係など、興味深い。スピード感もあり、すぐ読めた。
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沖縄返還50周年のための書下ろしハードボイルドミステリー。 琉球警察物でいえば伊東潤の「琉球警察」、アギヤーと言えば真藤順丈の「宝島」があるが、本作は返還カウントダウンというタイムリミットもあり一気に読めました。 ミステリー的には後半でインフォーマーの伏線がいきなり出てきたので...
沖縄返還50周年のための書下ろしハードボイルドミステリー。 琉球警察物でいえば伊東潤の「琉球警察」、アギヤーと言えば真藤順丈の「宝島」があるが、本作は返還カウントダウンというタイムリミットもあり一気に読めました。 ミステリー的には後半でインフォーマーの伏線がいきなり出てきたのでちょっと残念です。 とはいえ、占領下から返還までの沖縄の悲惨さは大変だったと思いますが、現代でも問題の禍根は残ってますよね。 週刊ポストに連載していた柳広司の「南風に乗る」が占領下の歴史の詳細を知るのにはよいと思います。
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2023-8返還前夜の混乱と今に続く差別の連鎖。近代史とも言える沖縄の苦悩が今も感じられる作品である。戦争はするもんやないね。
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刹那いストーリーだったが、戦後沖縄の人々の苦悩を小説というタッチで描いているんだと理解した。 時代がそうさせていたのかもしれないが、元はといえば戦争に起因すると思うので、やはり誰も幸せにはならない事だから戦争だけは避けなくてはいけないと改めて強く感じた
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戦後のターニングポイントにおける物語を偶然続けて読んだ。戦中から戦後、未だに癒えることの無い沖縄の悲しみの一端に触れる。タイトルにつながるエピソードがラスト描かれる。とても印象的なタイトルです。 ただ、現金強奪と復讐がいまひとつ結びつかず、その必然性に疑問を感じた。玉城の役割は意味不明な結果だし、イシザワも思ったほど活躍せず肩透かしって感じ。宮里の思い対して作戦が不自然でチグハグです。
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2022.8 真藤さんの宝島もスゴかったけれど、この小説も凄かった。へぼ侍、インビジブルに流れるハッピーエンドとは言えない渋み深みがこの小説にもある。 若い作家だけど坂上泉さんの小説は好きだな〜
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五十年前まで、沖縄はアメリカの領土であった。 太平洋戦争の敗戦からすでに半世紀が経過し、アメリカに占領された沖縄は日本とは違う外国であった。 その沖縄が正式に返還されてから半世紀が経過する中で、アメリカ統治時代が如何なるものであったのか、返還に向けて起きた大事件に立ち向かう琉球警察の警察官たちを描いたのが今作になる。 作者はデビュー当時は西南戦争という、幕末から明治に至る中での転換期を描き、第二作目では敗戦後の大阪にあった大阪市警視庁を舞台の作品を描いた。 そして、今回は返還迫る沖縄の琉球警察という歴史の転換期を描いており、読み終えて作者の型が完成したことに大きな衝撃を受けた。 では作品についての解説だが、東京への出向経験を持つ主人公である真栄田太一は返還迫る沖縄にて起きた百万ドル強奪事件に携わる。 彼は沖縄本島の出身ではなく、八重山諸島の石垣島出身であった。 今作では沖縄の闇を描いており、本当とそれ以外の離島出身者への差別と、本島出身者の排他的な部分も描いている。 日大に進学し、東京で暮らしていた時は沖縄人として扱われ、警察の中では東京からやってきた奴として扱われ、果たして自分は一体何者なのかを問い続けていく。 彼の父親にしても、石垣島での生活を嫌っており、こんなところに来たくなかったと酒を飲んでは愚痴るという非常に女々しい態度を取っており、彼はそれを嫌悪しながら育っていった。 そうした中で自分が果たして一体何者であり、何のために事件を捜査しているのかを問い詰める。 そして、最終的に真栄田は自分が警察官であり、犯罪を取り締まることが使命であることを自覚する。 だからこそ、この本の帯にある「私は、この捜査が欺瞞にまみれているとしても沖縄の警察官として、沖縄の為に事件を解決しなければならない」という台詞を偽りない本心を吐き出した。 最終的に事件は無事に解決し、彼の奥さんが生んだ子は沖縄が本土に復帰した1972年5月15日に生まれる。 沖縄が日本という国家の一員となった時に生まれた子に、自分は一つの希望を見た。 この子は主人公である真栄田太一は無論のこと、作者である坂上泉先生自身が、そうした願いが込められているのではないかと思った。
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