脳は世界をどう見ているのか の商品レビュー
最新の脳の研究をしている作者は、パームパイロットを創業者として開発しながらも本当は脳の研究がしたかったそうな。晴れて脳研究にもどって20年近くの研究成果を一般書にまとめた。曰く 大脳新皮質の15万個の皮質コラムは、それぞれが固有の世界モデルの予測をして、予測するための座標系を独自...
最新の脳の研究をしている作者は、パームパイロットを創業者として開発しながらも本当は脳の研究がしたかったそうな。晴れて脳研究にもどって20年近くの研究成果を一般書にまとめた。曰く 大脳新皮質の15万個の皮質コラムは、それぞれが固有の世界モデルの予測をして、予測するための座標系を独自に持っている(はず)。それぞれのコラムが投票をすることによって、一つ(場合によっては複数)の知覚が生成される。詳細なメカニズムはまだ不明だが、この仕組みを1000の脳理論と呼ぶ。 たくさんの予測演算が脳内だ行われ、メモリー空間を整理する適切な座標系が3次元だけでなく 問題によっては高次元で組まれる。数学の方程式を格納する座標系は何次元かは不明だが、個別の問題ごとに座標系を持ち、知らない問題は座標系がないので迷子になるという説明は腑に落ちる。作者1000の脳理論に絶対の自信を持っているようだが、真実はどうかは今後の研究結果を注視したい。 2部・3部は著者のAIや人類の未来に関する想いであり、古い脳と間違った(だまされた)知識が重なり、強権国家やカルト宗教が地球を滅ぼすのが心配というのは同意だが、本書の1部の科学的記述に比べて蛇足と思えたので星3つ。
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脳が知識や知能を獲得・発達させた仕組みを解き明かすとともに、AI開発を含めた人類のあるべき未来に向けた方向性を提案する一冊。 IT企業家兼脳科学者という特異な経歴を持つ著者は、自身のライフワークとして脳の仕組みを研究する中で、人類の脳は、”遺伝子の乗り物”としての動物的な生存本...
脳が知識や知能を獲得・発達させた仕組みを解き明かすとともに、AI開発を含めた人類のあるべき未来に向けた方向性を提案する一冊。 IT企業家兼脳科学者という特異な経歴を持つ著者は、自身のライフワークとして脳の仕組みを研究する中で、人類の脳は、”遺伝子の乗り物”としての動物的な生存本能を司る「古い脳」の上に、知識や理性を司る「新しい脳」である新皮質を徐々に積み重ねることで進化してきたが、脳の総重量の7割を占める「新しい脳」が外部世界を認識し、知識として蓄積するメカニズムを解明する新説を提案している。 具体的には、「新しい脳」が行なっているのは感知した事物の情報の「モデル化」であり、新皮質に存在する約15万の「皮質コラム」が、事物そのものに付随する特徴的な情報と、それを感知している人間との位置関係の「座標軸」を整理することで、脳は世界の構造を効率的に学習するとともに、新たな情報を感知した際には既存のモデルを使ってその内容を「予測」することができる。 このようなモデルは数多くのコラムが保持しており、複数のコラムによる「予測」を「投票」することで、人間は効率的に外部世界を把握したり、新たな情報を学習したりすることができ、しかもこれは物理的に感知できるものに限らず、言語や数字や民主主義といった概念上の情報にも適用できることから、これらの知識を活かすことで人類は、他の生物を一線を画する進化を遂げることができたのだという。 一方でこのような「新しい脳」の進化がもたらした知能とその成果である新技術などは、人間が相変わらず「古い脳」に支配されていることで、本来あるべき目的外に悪用されるリスクを孕んでいる。著者はだからこそ、AIは「古い脳」の要素を排して「新しい脳」の要素のみを活用することで安全に汎用人工知能を開発することが可能であり、また知識の未来への保存を遺伝子の保存よりも優先するならば、人間自身も含めた遺伝子組み替えは正当化できると主張する。 ともすれば極論として批判されるであろう内容も数多く含まれるが、長年謎とされてきた脳の仕組みに対する有力な新説を提案するとともに、我々が直面しているのは「古い脳 vs 新しい脳」の戦い、つまり人間の存在の目的を相変わらず動物的な「遺伝子の保存」に求めるのか、それともそこから脱却して「知識の保存」へとシフトするのか、という対立軸であるという視点を持つことによって、地球温暖化といった現代社会が抱える問題への対処の難しさの要因も見えてくるのが非常に興味深い。
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図書館で 脳のモデルは座標系、あらゆるものが座標系。 そしてシンプルな分散系。 ディープラーニング深層学習は賢い。ただ知識ではない統計や大量のデータによる分類・推測・予想。 人間の知能こそリスク 知識と知能を伝える
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レビューはブログにて https://ameblo.jp/w92-3/entry-12753800943.html
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ジェフ・ホーキンス「脳は世界をどう見ているのか」読了。大脳新皮質の構造と役割は座標平面で捉えられるという理論は大変興味深く斬新だった。また、新皮質と旧代の脳幹の隔たりは、ダニエル・カーネマンのスロウとファストな思考と対比して考えると効率良く深く思考するヒントになるのかもしれない。
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【総合評価 ⒋0】 ・革新性⒋5 1000の脳理論については世界の見方を変えさせてもらった。 ・明瞭性⒌0 神経科学やAIについての高度な内容を非常にわかりやすい表現で書き表していた。 ・応用性⒋0 古い脳と新しい脳という区分は日常生活にも現れてくる教えである。 ・個人的...
【総合評価 ⒋0】 ・革新性⒋5 1000の脳理論については世界の見方を変えさせてもらった。 ・明瞭性⒌0 神経科学やAIについての高度な内容を非常にわかりやすい表現で書き表していた。 ・応用性⒋0 古い脳と新しい脳という区分は日常生活にも現れてくる教えである。 ・個人的相性⒊0 1、2章は良かった。神経科学とAIを理解している著者だからこそ書ける内容であった。ただ、3章については内容が飛躍しすぎに感じた。もっと前半戦を掘り下げて欲しかったというのが個人的な思いである。
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2022-05-07 世界初の商用スマートデバイスPalmを生み出したホーキンスの、本気本。 1000の脳理論ことコラム理論はなかなか刺激的。記憶が偏在している事を見事に表していると思う。 が、意識の問題については疑問。おそらく意図的に知能と知性を混同している。コラム理論で説明し...
2022-05-07 世界初の商用スマートデバイスPalmを生み出したホーキンスの、本気本。 1000の脳理論ことコラム理論はなかなか刺激的。記憶が偏在している事を見事に表していると思う。 が、意識の問題については疑問。おそらく意図的に知能と知性を混同している。コラム理論で説明しているのは知能でしかない。そして、知性には意識や意思が付随する。動機と言ってもいい。新皮質、つまりモデルには動機が存在しないとも言っているし。 知識とそれを扱う知能を保存し伝えなくてはならないのは確か。だが、知性は残さなくてもいいのか?動機なき知識に本当に価値があるのか?知能と知性は独立して存在しえるのか? この問題、ワッツが「ブラインドサイト」で提示し、その解説でチャンが反論(というか反対)した問題そのもの。 SFファンではないと明言しているけど、この分野で未来を語るのにそれでは通らないですよ。
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