自衛隊海外派遣 隠された「戦地」の現実 の商品レビュー
南スーダンPKO時の日報隠蔽問題を明らかにしたジャーナリストによる新著。カンボジアから始まる30年間の自衛隊PKO活動を振り返り、日本政府の「二枚舌」=国内向けの法解釈とPKOの現実が乖離しているさまを明らかにする。 個人的な関心からすると、PKOに対する考え方が国連内部でも...
南スーダンPKO時の日報隠蔽問題を明らかにしたジャーナリストによる新著。カンボジアから始まる30年間の自衛隊PKO活動を振り返り、日本政府の「二枚舌」=国内向けの法解釈とPKOの現実が乖離しているさまを明らかにする。 個人的な関心からすると、PKOに対する考え方が国連内部でも大きく変化してきたにもかかわらず、日本政府の法解釈・法の建て付けが基本的に変わっておらず、そのことが矛盾をより深刻にさせているという議論が興味深かった。これは一方で、ポスト冷戦期の自衛隊が「国際平和」のエージェントとして活動できるのではないか、という期待を担っていたこと、にもかかわらずそうしたあり方は実現せず、紛争当事者に対する中立性が担保された場面が存在しなかった、ということでもある。 当然ながら、国連の戦争と平和にかかわるミッションも、1990年代以降の歴史的展開を踏まえて考える必要がある。当時の言説を振り返るうえでは、このような環境の変化も忘れるべきではないだろう。言い換えれば、「国際貢献」としての自衛隊派遣というスキーム自体がすぐれて歴史的だった、特定の時代の刻印を帯びたものとしてあったのだ。
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自衛隊の海外派遣について、とてもわかりやすく書かれていた。地道な資料請求、取材に一国民として感謝したい。肝心な資料を隠蔽したり、破棄したり、改竄したり、開示されても真っ黒だったり、そんなことは本当にやめて欲しい。 日報の保存期間が延長され(破棄できなくなった)公文書館に移管される...
自衛隊の海外派遣について、とてもわかりやすく書かれていた。地道な資料請求、取材に一国民として感謝したい。肝心な資料を隠蔽したり、破棄したり、改竄したり、開示されても真っ黒だったり、そんなことは本当にやめて欲しい。 日報の保存期間が延長され(破棄できなくなった)公文書館に移管されることになったのは、著者の功績だろう。 今後の日本(自衛隊)ができるPKO活動の著者の提言もなるほどと思い、国としても考えてくれていると信じたいが、何も考えていないかも。アメリカの要請に従うことしかできないのかも。なんだか悲しいが、隠蔽や現地の戦況の過小説明で、肝心のPKO活動に参加された自衛隊の人への国民の評価が抑えられてしまうことも、酷いことだと思う。
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情報公開制度大事。 最終的な結論は、伊勢崎賢治さんがSNSでがなっている(失礼)ことに近いのだと思う。 (主張の内容はもしかしたら正しいのかもしれないのだけれども、あまりにも攻撃的な態度に読むのを避けてしまう。) この本は、それに至る現場のリアルを、距離を保ちつつ公文書上の記述から検証して、議論の前提として提供してくれるので、落ち着いて読める。
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PKO法制定から30年 隠されてきた4万3000軒の記録 30年の僧検証と国民的議論を 序 章 なぜ海外派遣の検証を始めたのか 戦争と選挙の政党制に疑問 自衛隊海外派遣の歴史 内部記録 第1章 南スーダンPKO インタビュー1 第10次南スーダン派遣施設隊隊長・中力修氏に聞く ...
PKO法制定から30年 隠されてきた4万3000軒の記録 30年の僧検証と国民的議論を 序 章 なぜ海外派遣の検証を始めたのか 戦争と選挙の政党制に疑問 自衛隊海外派遣の歴史 内部記録 第1章 南スーダンPKO インタビュー1 第10次南スーダン派遣施設隊隊長・中力修氏に聞く 第2章 イラク派遣 第3章 カンボジアPKO インタビュー2 第1次カンボジア派遣施設大隊長、渡邊隆氏に聞く 第4章 東ティモールPKO/ルワンダ難民救援/ゴラン高原PKO インタビュー3 第34次ゴラン高原派遣輸送隊隊長・萱沼文洋氏に聞く 第5章 今後の海外派遣のあり方を考える PKO参加5原則 多国籍軍との一体化 文民保護のために武力行使も 武力紛争の否認 憲法9条の議論 軍事監視要員 1人も殺さないアクターとして 米世界戦略のもとで インタビュー4 国連PKO支援部隊早期展開プロジェクト(2019年度第2回)教官団長・藤堂康次氏に聞く
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日報隠蔽問題が発覚し、当時の防衛大臣や、自衛隊幹部が辞任する事態にまで至った南スーダンPKO活動。その時に明らかになったのは、どう見ても戦場となっている地域に自衛隊を派遣しながら「停戦合意がある」、銃撃戦があっても「散発的な発砲がある」等の事実を捻じ曲げた政治家のロジックでした。...
日報隠蔽問題が発覚し、当時の防衛大臣や、自衛隊幹部が辞任する事態にまで至った南スーダンPKO活動。その時に明らかになったのは、どう見ても戦場となっている地域に自衛隊を派遣しながら「停戦合意がある」、銃撃戦があっても「散発的な発砲がある」等の事実を捻じ曲げた政治家のロジックでした。自衛隊のPKO参加は、1991年の湾岸戦争後に掃海艇の派遣から始まって南スーダンに至るまで約25年間続きました。本書で明らかにされているのは、そのほとんどの現場で、自衛隊が現地の戦闘に巻き込まれていてもおかしくない状況に幾度となく遭遇していた事実です。 「武器の使用は正当防衛と緊急避難の時だけ認める(他者を守る目的のみでは武器使用が認められない以上、昨今のPKOで多く見られる文民警護任務では、自衛隊自身が相手の攻撃に身をさらし、あえて攻撃を受けてから武器を使用するしかない)」、「自衛隊は多国籍軍に入るが、同司令部の指揮下には入らず、戦闘に巻き込まれる可能性があれば撤退可能(実際には、現地司令部と一体化して活動するしかなく、現地で命令を受けながら武力行使を拒むのは事実上不可能)」などなど、PKO活動の実情と憲法9条の制限下で”出来ること”には非常に大きな矛盾を抱えながらの派遣であったことが明らかにされています。 本書後半で筆者も指摘していますが、建前は「国際貢献」でありながら、その実情は「自衛隊の海外活動の既成事実化」という構図では現場に派遣された自衛隊員にしわ寄せが及びます。「本来なら激しい戦闘の中でも、一人の犠牲者も出さずに任務を完遂したことは誇れることのはずなのに、(政府が戦闘を否定したことで)いてはならない所から帰ってきたようで、話す事が憚れるような空気がありました。これでは厳しい状況で任務を完遂した隊員に失礼です」との発言をされている派遣された自衛隊幹部の言葉は重く受け止めなければならいと思います。結局、自衛隊の派遣を決めるのは政治家ですし、その政治家を選ぶのは有権者の国民です。本書の結びでも上記の自衛隊幹部の言葉が引用されていますが「国民がどこまで自衛隊の負うリスクを許容できるのか、一人一人が考える必要がある」との発言には、非常に共感できました。
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国際平和協力法、PKO法による自衛隊の海外派遣が始まって30年が過ぎていた。自衛隊が派遣された場所は、それまで紛争地でまだ敵対する勢力が停戦に合意しているだけの戦地であったことを、情報公開された「活動」日報によって明らかにする地道な取材で明らかにしてくれる労作。今ウクライナで戦争...
国際平和協力法、PKO法による自衛隊の海外派遣が始まって30年が過ぎていた。自衛隊が派遣された場所は、それまで紛争地でまだ敵対する勢力が停戦に合意しているだけの戦地であったことを、情報公開された「活動」日報によって明らかにする地道な取材で明らかにしてくれる労作。今ウクライナで戦争が起こっている時に自衛隊に防衛以外の任務を付与する余裕はないようにも考えるものの、本書にいくつかの提案は考えていいのかと思えた。軍事監視要員派遣、重機などの操作訓練を行う派遣など、「一人も殺さないアクター」として国際平和に貢献する道を模索してほしいとの著者の願いは印象的だ。それにつけても自分の行った判断を記録して胸を張って世の検証を受ける公務員、政治家が多数派となってほしいものだ。
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