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ヴェネツィアの陰の末裔 の商品レビュー

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2023/10/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

(とんでもなく長くなってしまった!そして辛口でごめんなさい) ヴェネツィアという舞台、剣士と魔術師の二人組で動く重めの契約あり設定(レジェンドオブマナの珠魅ぽいなあと思ってしまったので多少マイナスではあったけど)、主人公のバディは男性が魔術師で女性が剣士とRPGセオリーの逆で、二人に恋愛の香りがしない(途中まではね…)など要素要素はかなり私の好みの作品なのになんとなくノリきれず無念。 魔法のギミックや魔術師がどう生まれてくるのかという設定がどうも古臭くオリジナリティがなく感じてしまったこと(腕輪設定だけが目新しいかなとはおもったけどその戦略もそこまで活かしきれてないような気がしてしまった)、ヴェネツィアという深掘りすればどこまでも魅力的に描けそうな街をわざわざ舞台にした必然性をそこまで感じられなかったこと、視点がキャラクターごとに頻繁に変わってしまったところや、過去の記憶に入っていく流れが急だなという感覚、名前が覚えづらく誰が誰か混乱することが多かった(登場人物紹介もあるけど正直役に立たない)こと、細かいかもしれませんが主人公バディが「リザベッタ」「ベネデット」と似たような響きの名前のバディなのが混乱に拍車をかける、などで読みづらさ引っかかりを感じてしまい、読んでいてテンションが上がりきらず読み切るのが大変でした。 ただ、選考委員の「一人称視点の似たようなテンションの文で視野の厚みがない」みたいな選評もあり、投稿時は一人称で出版に際し三人称に書き直したのかなと思うと読者としてはどっちが良かったのかは判断しにくいですね。 主人公に魅力がなく好きになれないという感想も見かけて、そこも同意。リザベッタやイルデブランドの方が魅力的に見える。幼少期の記憶がない主人公なのでそこは仕方ないかな。 「魔女が敬虔なキリスト教徒に殺されたその次の日に魔法使いが敬虔なキリスト教徒のガラス職人(逃げると死罪とは全然知らなかったです)を殺す仕事を請け負った皮肉」の対比や、一人孤独に戦っていた主人公がいけ好かない仲間の魔術師の道具でからくも最終戦で助かるシーン、「目的は同じだったはずなのにその手段と理想の選択が180度違ってしまった二人」の話とかは鮮やかで好きだなと思いました。見せ方が少し違ったらかなり好きになってたと思う。 また主人公の師匠がいかにも師匠師匠した(変な書き方ですみません)「のじゃ」口調だったり悪役女魔術師の喋り方が「〜せぬ」みたいな喋りだったり妙な所でひと昔前のファンタジーぽいのが気になってしまって。好みの問題?ファンタジー最近読んでなかったけどこんなもん?と思ってたんですが、最後の選考委員の感想を読むと「話し言葉が世界観とマッチしない」みたいなものがあって、改稿でこうなったのかなと思うと強くツッこめなくなってしまった。 ラストの因縁も正直わからなくもないものの、ありがちかな。オスマントルコ側って野蛮な国よねみたいな視点から脱却するのいつになるのかなとも思わなくもない。あれこれやっといて結局万能アイテムで解決ってのも寂しいものがある。 「大事な半身」のはずの相棒の魔術師または剣士を亡くした・仲違いして裏切られたなどの人はどうなってしまうのか?みたいな話も多少盛り込んでいただけたら嬉しかったなあとも思います。何人か出てくるけどそこまで大きくダメージ受けてなさそうに見えてしまった。契約の重みだけは何度も作中で繰り返されるのに反して具体的なペナルティが見えないのがね。 せっかくのリザベッタも結局捕まってピーチ姫枠になっちゃうのがなあ…もったいない。 そして、これもまた完全に私の好みの話になってしまうのですが、そろそろ「血」「生まれ」「遺伝」「生まれ変わり(まあ西洋ファンタジーで仏教要素の輪廻転生概念出されるの正直好きじゃないんですが)」以外の、その人が選べない生まれつきなり神(作者)の見えざる手の要素がなくても魔法使いになれますってファンタジーが欲しいなと思ってるんですがやっぱり無理なのかなぁ。

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2023/01/07

22/8/5〜23/1/7 腕輪での戦闘システムや、史実にファンタジイを絡めている点などが面白いものの、ストーリーが単調に感じられて読み進めにくかった。 なかなか気持ちが乗らず、間を空けてやっと読み終えたが、結末も小さくまとまっていてちょっとあっけないように感じた。 十字軍...

22/8/5〜23/1/7 腕輪での戦闘システムや、史実にファンタジイを絡めている点などが面白いものの、ストーリーが単調に感じられて読み進めにくかった。 なかなか気持ちが乗らず、間を空けてやっと読み終えたが、結末も小さくまとまっていてちょっとあっけないように感じた。 十字軍あたりの西洋史に詳しかったらもっと楽しめたのかも。

Posted byブクログ

2022/06/21

ベネデットとリザベッタ、ヴェネツィアに仕える魔術師と護衛剣士。16世紀の権謀術数蠢く都市国家で、失った過去の記憶を探しながら陰の仕事をしていく彼らはどんな気持ちでいたのだろう。未来に夢を持つことがあったのだろうか

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2022/04/24

権謀術数渦巻く16世紀前半のヨーロッパ。フランス、ドイツ、オスマントルコに蹂躙されるイタリアで、ヴェネツィア共和国が魔術師を公認していたという設定で描かれたファンタジー小説。 表舞台ではわれわれが知るヨーロッパ史が展開され、その裏では主人公であるベネデットらヴェネツィア共和国の魔...

権謀術数渦巻く16世紀前半のヨーロッパ。フランス、ドイツ、オスマントルコに蹂躙されるイタリアで、ヴェネツィア共和国が魔術師を公認していたという設定で描かれたファンタジー小説。 表舞台ではわれわれが知るヨーロッパ史が展開され、その裏では主人公であるベネデットらヴェネツィア共和国の魔術師がフランスやオスマントルコの陰謀と戦っている。 最初は少々慣れない語り口にページを繰るペースが上がらなかったが、謎が謎を呼ぶストーリー展開で読書のペースも上がっていき、後半部は一気に読了できた。一体誰が味方で誰が敵なのか最後までわからない筋立てがハラハラドキドキで面白い。 呪文による魔術は呪文の詠唱を完成させないと発動されない。そのため戦闘の場面では役に立たないはずなのを、腕輪に魔術を封じ込めで戦闘時に発動させるという設定を設けて魔術戦を描く。物理的に持てる腕輪が六つという設定で、戦闘を今流行のカードバトル的な様相で描いてる。この物語の魔術師同士の闘いは単に魔術の力比べではなく、あらかじめどのような魔術をいくつ腕輪に封じ込めておくか、それをどの時点で発動させるかという戦術が必要になる。単純に魔力が強いものが勝つということでなくして、物語を面白くしている。 さらに、魔術師は体力的に劣るというファンタジーもののお決まりのルールで、魔術師には剣の力で魔術師をまもる護衛剣士がつく。一人の魔術師に一人の護衛剣士。二人は”血の契約”で結ばれており、いわゆるバディもの的な要素を添えている。 また、物語のモチーフにダンテの「神曲」が使われており、筋立てやアイテムの名前などに巧みに神曲が組みこまれているのも面白い。 本作は、第5回創元ファンタジイ新人賞佳作作品だそうだが、撰評を受けて大幅に改稿されている様子で、佳作とは思えない完成度。この手の小説には珍しく巻末に参考作品がずらっと並んでおり、取材の精度が高いことを思わせる。この世界観を活かしたシリーズとして次回作も期待したいところである。

Posted byブクログ