女人入眼 の商品レビュー
同じ永井でも永井路子とは全く違う視点と肌理細かい心理描写で描く鎌倉初期を舞台にした傑作。周子と大姫との対峙からみえる鎌倉内と京内の御所政争が浮き彫りになる、ボトムアップでの歴史考察本であり女性小説。ほぼ知らない裏面史も多く勉強になった。
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御台所、尼将軍、過たぬ女人・北条政子。己の過ちを決して認めぬからして過たぬ。後世に伝わる像は傲慢で孤高の悪女ながら、はたして虚像か実像か。ことさらこの時代についてはまったく疎くて大河も観ておらず、ここで少々学ぼうと思うも、入っていけないなぁ。なんせ物語は気鬱な大姫に終始して、衛門...
御台所、尼将軍、過たぬ女人・北条政子。己の過ちを決して認めぬからして過たぬ。後世に伝わる像は傲慢で孤高の悪女ながら、はたして虚像か実像か。ことさらこの時代についてはまったく疎くて大河も観ておらず、ここで少々学ぼうと思うも、入っていけないなぁ。なんせ物語は気鬱な大姫に終始して、衛門周子はときに勇を振るうも空回り。歴史は曲げられんのだけれど、もう少し時代を大きく切り取って魅力的に伝えたいただけぬものでしょうか。大姫入内を計る背景として、頼朝の必死な裏工作、土御門通親や丹後局とのかけ引きなんぞをもっと生々しく。
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「鎌倉殿と13人」を欠かさず見ている身には、まるでスピンオフ作品を読んでいるよう。 幼い時のまま義高への想いが止まってしまった大姫がその幼さゆえ、母をも想い、心を殺す。 一方、子を想うが故の自らの強さに気付かぬ政子の傲慢さ。 その親子のすれ違う想いと軋轢が招いた悲劇。 これが親子の愛なのか。 それにも増して周子の強かさに天晴れ! 同じく義高に対する後悔の念に悩む海野幸氏と結ばれ、鎌倉に生きることを選ぶとは。 あー、面白かった!
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2022.9 大河ドラマではサラッと流れた大姫はこういう人だったんだな、と解説本のようでした。でもしっかり読ませる小説でしたので星4つです。
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第167回直木賞候補作品。初永井紗耶子作品です。 2022年NHKの大河ドラマで盛り上がっている鎌倉時代。 鎌倉幕府が力を持ち始め さらなる力拡大のため 大姫を入内させる計画をすすめる。 そして朝廷側も 次なる帝 そして国母としての女の権力争いが起こっており 大きな時代のうねりの...
第167回直木賞候補作品。初永井紗耶子作品です。 2022年NHKの大河ドラマで盛り上がっている鎌倉時代。 鎌倉幕府が力を持ち始め さらなる力拡大のため 大姫を入内させる計画をすすめる。 そして朝廷側も 次なる帝 そして国母としての女の権力争いが起こっており 大きな時代のうねりの中での入内要請であった。 しかし 大姫は頼朝の命で打ち取られた木曽義仲の嫡男 清水冠者義高(木曽義高)を慕い、殺害されてから気鬱の病となり 普段の生活もままならない。 主人公 周子(ちかこ)は丹後局の命で大姫入内の任を受け 鎌倉にはいるが 大姫の心は閉じられたまま なすすべが無かった。 登場人物が多く とくに朝廷側の姫や局など 難しい名前ばかりで理解するのに手間取ってしまった。 しかし 大姫の真の心のうちが明かされると グッと大姫への愛おしさが増して、話が面白くなる。 人物関係図を頭に描きながら 鎌倉幕府最大の失策「大姫の入内」を女性の権力争い目線で展開するこの本 おすすめです。
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源頼朝と北条政子との長女大姫の入内のために鎌倉に赴いた、京の六条殿に使える女官の周子。 許婚が頼朝の命で殺害されるという過去と母政子の圧力とに挟まれてくる染む大姫。 政子は現代に照らせば毒親だろう。 本書の結末が史実と合っているかは不明だが、書き込まれた背景よって、極めて強...
源頼朝と北条政子との長女大姫の入内のために鎌倉に赴いた、京の六条殿に使える女官の周子。 許婚が頼朝の命で殺害されるという過去と母政子の圧力とに挟まれてくる染む大姫。 政子は現代に照らせば毒親だろう。 本書の結末が史実と合っているかは不明だが、書き込まれた背景よって、極めて強い説得力を持つ。 精神的な京の世界が物理的な鎌倉の世界に置き換わっていくさまも、よく見て取れる。
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直木賞ノミネート作品に上がった本なので読んでみた。中学・高校と歴史で北条政子は習ったが、詰め込み教育で何年に何が起こって何年に誰がなにをした、程度でしか学んでこなかった。こういう小説を読むと、歴史の授業が面白くなかったのは自分の頭が悪かったのではなく、授業の教え方・方針が悪かっただけだと痛感する。単なる尼将軍でしか認識していなかった鎌倉という地がこれほどにドラマに飛んでいた(諸説ありますが笑)と思うと、もっとワクワクしながら勉強していただろうと思う。 それでも歴史小説、しかも後宮などの話になると出てくる言葉も名詞も読み方が難しく数ページごとにルビを打ち直してくれって何度も思いながら読まなくてはならず、どういう意味っけ?といった単語も頻繁に出てくる。こういうところが歴史嫌いの理由でもあるが...。それを差し引いても中盤からの読み入れ込みはぐっと増し、登場人物の心情がそのまま自分の思いに重なりこの時代の人々の苦悩を思う。 小説を通じて学生時代苦手だった歴史を紐解くことが出来るのは読書やっててよかったなと思う。地元図書館ではあまり人気がなく、他の候補作品と違い普通に来館時に借りる事が出来たが、この作品を見過ごすとかもったいない!
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尼将軍政子のひととなり、当時の政略結婚が主軸であっはあったが、個人には不幸=呪いの概念がかなり浸透していて面白かった。 政子とのコントラストをつけるためか、頼朝がだいぶ穏やかだったのは少々違和感を感じた。 ★3.7
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武士としての男の戦ではなく、策略による女の戦が生々しく描かれていた。いつの時代も情勢を把握し、先を見通せる者しか生き残っていけない厳しい現実は、今も昔も変わらないのだと改めて感じた。 最終的に大姫を救えなかったこと、政子が尼将軍として君臨しているところで物語が終わるところが単純なハッピーエンドではなくてリアルに感じられた。
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初読作家作、まあ、そこそこ面白かった。大変ゾッとする。ただ、前半波にのれず苦戦した。 北条政子はもともとエキセントリックで恐怖なイメージを持っていたが、本作に描かれる政子の怖いことといったら、何度もゾッとさせられた。これは、ホラー。毒親(毒母)政子の描かれ方がほんとに恐ろしい。 ...
初読作家作、まあ、そこそこ面白かった。大変ゾッとする。ただ、前半波にのれず苦戦した。 北条政子はもともとエキセントリックで恐怖なイメージを持っていたが、本作に描かれる政子の怖いことといったら、何度もゾッとさせられた。これは、ホラー。毒親(毒母)政子の描かれ方がほんとに恐ろしい。 そして、大姫の最後が 全て政子に責任が被さるように逝くところが 結構むねがすいた。 言葉はわるいが”ざまぁ”って感じではある(正直なところ) とはいえ、政子にはたとえ大姫が死をもった訴えをしたところで、 全く理解はしていないだろうというのも窺える。 個人的に、うちの母とまったく同じタイプなので 身につまさるというか、トラウマが蘇りまくる。 こういう人、 なにをどうしても、自分の中にあるフィルターを通して理解し、 そのフィルターに恐ろしいほどのブレがないので いつまでたってもどこまでたっても理解しあえることがないという。 パレXチナとユXヤみたいな、、 結局、 話し合いで理解し合うことは無理な場合が多々ある。 たとえ、家族であっても、 どうやっても理解し合えない、ということですな。 無駄。 「しかし、あの御方は過たない。何故、過たないかご存知ですか」 「過ちを認めず、誰かの責にするからです。(中略)己を責めて嘆く人の心など分からぬのです。」 超個人的読了感→脱力感 地雷だった、、。 鎌倉関係は10年ぐらい前に仕事上の理由もありこってりと学習したときに、自分なりの解釈が出来上がってしまっているので、なかなかそこらへんを打ち破るのが難しい。逆に違うイメージや見解の書籍など、ギャップはとても楽しめる。
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