メキシカン・ゴシック の商品レビュー
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男性優位社会に反発を覚えながらも、若さと美貌を使いこなし男性を手玉に取ろうとするノエミの主人公像があまり好きになれないな、と思いながら読んでいたのだけど、途中から彼女が、自身を男性優位社会という枠にはめ込んで行動していたことを自覚するあたりで、読み方を改めた。 ゴシックホラーの舞台装置を使いながら、その実、マイノリティや女性の社会進出、そして反植民地について扱っている小説だった。 ホラーの文脈は、さびれた町のお屋敷に嫁いだ従姉を苦難から救出すべく足を運んだら怪異に遭遇するという、いわゆる王道の「館もの」。屋敷に住まう人々の奇妙さや、手助けをしてくれる存在、徐々に明かされていく秘密の数々と、ほとんど様式美を感じるような出来となっている。その点で新しさはあまり感じなかったけれど、キャラクター性の強い登場人物たちが織り成すミステリアスな物語が楽しいので後半になるにつれエンジンがかかり一気に読んでしまった。明るいゴシックホラーってめずらしくて良いね。 それと、ホラーとキノコの相性の良さを再確認。古くは『夜の声』までさかのぼれるだろうし、最近でも『ラストオブアス』で菌類を脅威の対象としていたしで、キノコにのせいで頭がおかしくなる人たちの話って独特の面白さがあって好きだなあと感じた。 以下、本書の感想とは別軸の話。 というわけで、今年8月くらいから始めたホラー小説祭りはこれにていったん終わり!もともとは、『このホラーがすごい!』で紹介されていた「必読ホラー20選」の国内編と海外編を全部読もうと思い、始めたことだったのだけど、この度リストを(途中で増えたものの含めて)すべて読み終わったので。我ながらよく読んだもんだぜ。 ホラー小説はこれまで好きな作家の作品か、超メジャーな作品しか読んでおらず、そもそも怖いのは苦手だったので好き好んで読もうとはしてこなかったジャンルでした。でもこの夏にかけて、何故か異様にハマってしまい、それこそ何かに憑りつかれたように読みまくっていたわけで、その甲斐あって人生で最も多くホラーを摂取した期間となりました。 うん、ホラーって楽しいね。SFともミステリーとも違う、このジャンルでしか味わえない栄養・興奮・切なさ・笑い・奇妙さ・凄み・文学性・エンタメ性・静けさ・昏さ・愛・強烈さ・光・闇・願いがあると感じます。その中心にあるのは「恐怖」という人間の根源的な情動であり、読むことで普段は見ていなかった部分にまで何かを見出してしまうような、そんな視界が開いていく興奮がありました。 正直言うと、10冊くらい読んだあたりから、よっぽど強烈な作品でない限り、ほとんど「怖い」とは感じなくなってきていて、ああ、恐怖って案外簡単に慣れるんだなあとか思ってました。ホラーは短期間で摂取しすぎると食傷気味になります。なんでもそういうもんですが。 でも楽しかったなあ。文句を付けつつもめちゃくちゃ興奮しながら読んでたし、素敵な期間だった。 というわけで、ホラーをインストールしました。インストールしたと言っていいでしょう。少なくとも基礎的な部分は。 たぶん今後もこんなふうに苦手なものや避けてたものが経験や年齢によって急に美味しく感じることはあるだろうから、そういうタイミングを逃さないようにしたいな。
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ホラー。 メキシコが舞台の館ものホラー作品。 カナダのSF賞も受賞している作品とのことで、若干のSF要素もあり。 怖さよりも不気味さ、気持ち悪さが強め。 意外と読みやすいのは良い。
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勝気なメキシコ美女やら、イギリスから来た一族が住む古びた館やら、設定がてんこもり。 ゴシックというと白黒灰色の世界をイメージするけれど、こちらはメキシコ系だけあって、色彩が鮮やかなゴシックホラーだし、みんなよく喋るから明るいホラーでもあった。最終的には恋愛小説かな。 爺さんが醜く...
勝気なメキシコ美女やら、イギリスから来た一族が住む古びた館やら、設定がてんこもり。 ゴシックというと白黒灰色の世界をイメージするけれど、こちらはメキシコ系だけあって、色彩が鮮やかなゴシックホラーだし、みんなよく喋るから明るいホラーでもあった。最終的には恋愛小説かな。 爺さんが醜くすぎて、ゴシックよりホラーより恋愛より、爺さんを抹殺することが私の中ではメインテーマになってしまった。キモすぎ。
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中盤までは動きがなくて退屈だったが、謎が詳らかになってからは面白くなった。原住民の禁断のキノコが菌糸を張り巡らせて人間と一体化し、その作用で半不死になるという設定は面白い。一族の中に適性があり、その不死性を維持するために新しい血が必要。ラヴクラフト的なストーリー運び。舞台が1950年のメキシコなのも良い。
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田舎に嫁いだ従姉妹から、異様な手紙を受け取ったノエミ。真実を突き止めるため、従姉妹の嫁いだ屋敷を訪れる。 屋敷には、一体何が棲んでいるのか。 何、の正体明かしからの盛り上がりが凄くて後半あっという間に読み終えた。 私の好きな構成してる物語。
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先日読んだ『ニードレス通り 果ての家』が面白かったので、その巻末の広告に載ってた本作も手に取ってみました ってまたホラーやないかいっ! ってホラー作品の巻末広告なんだからホラーに決まってるやろバカタレ! ホラー苦手なんだけどなぁと思いつつも、いやいやこれこそあれですよ 浄土...
先日読んだ『ニードレス通り 果ての家』が面白かったので、その巻末の広告に載ってた本作も手に取ってみました ってまたホラーやないかいっ! ってホラー作品の巻末広告なんだからホラーに決まってるやろバカタレ! ホラー苦手なんだけどなぁと思いつつも、いやいやこれこそあれですよ 浄土瓶宗に伝わる荒行のひとつ「新境地のためあえて外しに行ってるとも思えるほどの苦手分野を読み進めてあーやっぱり苦手だったわーという悟りを開く行」ですよ 結果はというとあーやっぱり苦手だったわーという でもあんまり恐い!って感じもしなかったかな 静かな狂気と言いましょうか、人の持つ浅ましさをギュッと濃縮したようなお話しでした 王道の展開は嫌いじゃないんですが、あまりにおどろおどろしい感じを出そうとし過ぎてか、情景描写が多すぎてちょっと疲れちゃいました 悪くなかったんだけど、時間もかかってしまいました 読むのに時間かかってる時って脳が喜んでないときなんだよね でもホラーはまたごんごん読んで行こうとも思いました そろそろ行ってみる?スティーブンとか
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正直、プロットやキャラクター、ロマンスさえも、作り込みが浅いなぁ...と、Goodreadsという世界最大級の読者レビューサイトでも、多くの人が"退屈なストーリー"とコメントされていました。 にもかかわらず、この小説が幾つかの文学賞を受賞していたり、好意的なコ...
正直、プロットやキャラクター、ロマンスさえも、作り込みが浅いなぁ...と、Goodreadsという世界最大級の読者レビューサイトでも、多くの人が"退屈なストーリー"とコメントされていました。 にもかかわらず、この小説が幾つかの文学賞を受賞していたり、好意的なコメントも数多く寄せられているのは、そのアンチ・ゴシック的な試みを評価されてのことかな、とも思いました。 つまり、ゴシックといえばヴィクトリア朝、そして、その時代的な背景から仕方がないとはいえ、白人至上主義的な風潮が暗黙のうちに認められていたりしますが、こういう傾向に対して、植民地支配を受けた側のメキシコの元気一杯、破天荒、傍若無人で自意識過剰な女子大生が、ちょっと待った!と全編に渡ってケンカを売る、という覚悟に対する評価です。 正直退屈なストーリーはさておき、優生学、人種差別、性差別、植民地支配、親が求める世間体、などなどに怒れる女子大生ノエミが、とことん楯突くのが見ものです。他人のお屋敷に押しかけ、部屋では煙草はご遠慮くださいと懇願されても、ガン無視してスパスパやり出すという、一事が万事こんな調子で、静かなゴシック屋敷を縦横無尽に暴れまくるノエミの活躍が愉しいホラー活劇でした。
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ラヴクラフト好きにはたまらない! カビだらけの洋館、墓所、幻覚見せるきのこの山…(-_-;) ゴシック・ホラーの世界観を楽しめる作品でした(〃´-`〃) 何やら沢山の賞を取っているこの作品。 ずっと気になっていて、読みたいリストの先頭に載せてました♡(*´˘`*) 時...
ラヴクラフト好きにはたまらない! カビだらけの洋館、墓所、幻覚見せるきのこの山…(-_-;) ゴシック・ホラーの世界観を楽しめる作品でした(〃´-`〃) 何やら沢山の賞を取っているこの作品。 ずっと気になっていて、読みたいリストの先頭に載せてました♡(*´˘`*) 時代は1950年。 主人公のノエミは超金持ちの遊びまくってる大学生のお嬢様。 仲の良かった従姉妹のカタリーナから支離滅裂な手紙が届き、父からカタリーナの様子を見てくるよう命令される。 カタリーナの嫁いだ先『ハイ・プレイス』は霧がかった墓地のそばにある、ヴィクトリア朝期の建築様式にこだわった屋敷。 その屋敷に住む人々は皆どこか様子がおかしい…… ラヴクラフトを連想させる世界観。 代々続く家系。寝たきりの主人。 悪臭と甘すぎるワイン。 霧がかかり不思議な声が聞こえる墓所。 カタリーナの奇怪な言動と、館で起こる数々の現象。幻覚や違和感。 カタリーナの夫、ヴァージルは不思議な力でノエミにせまる。 エログロまではいかないにしても、想像次第では結構グロデスクです。 私の頭の中では肉感と弾力がリアルで湿気とカビと湿った空気、あらゆるぬるぬるしている何かと悪臭で…とグロ妄想が炸裂してました(-∀-`; ) 最近読んだ『血の配達屋さん』のような雰囲気に近いかも。 いや、あそこまでグロではないですが、クトゥルフ神話っぽさが近い。 美しいドレスを着た美女2人が何やら奇妙でグロテスクな何かに囚われ、精神を蝕まれ… 逃げ出したくても逃げられない。 血族の呪いがどうしてもハイ・プレイスへ惹き寄せる…。 ゴシック・ホラーの世界へ浸りたい方におすすめします(*˘ー˘*).。.:*♡
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呪われたイギリス人の古い屋敷が舞台で住人の名前がドイルなのでバスカヴィル家の犬が連想されます。途中まではドイル家の謎がどんどん深まっていくミステリー小説なのですが、謎がとけていくと徐々にきのこに取り憑かれたアウトサイダーVSノエミのホラーアクション小説になっていきます。その緩急...
呪われたイギリス人の古い屋敷が舞台で住人の名前がドイルなのでバスカヴィル家の犬が連想されます。途中まではドイル家の謎がどんどん深まっていくミステリー小説なのですが、謎がとけていくと徐々にきのこに取り憑かれたアウトサイダーVSノエミのホラーアクション小説になっていきます。その緩急の差もあるのですがさいごの脱出劇は最高におもしろく、最後まで読むと爽快感さえ感じさせてくれます。 作者が化学を学んでいたのもあると思うのですが、薬品に関することも妙に説得力があります。あと、ゾンビにきのこが生えている描写もそんなにグロテスクに感じられません。 フランシスがもっと活躍すると思っていたのですがいまいちでした。そこは白人に対するするメキシコ人、男に対する女性というテーマもあったとおもうのでしかたないのかもしれません。メキシコシティで頑張ってもらいたいです。
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タイトルと装画に惹かれ、内容も見ずに購入。こういう選書はワクワク出来るので非常に楽しい。(大外れを引く時もあるが、それもまた一興。) 舞台は、1950年のメキシコ。主人公のノエミ・タボアダは、メキシコシティに住まう美しい女子大生。裕福な家庭で育った彼女は、"女性&qu...
タイトルと装画に惹かれ、内容も見ずに購入。こういう選書はワクワク出来るので非常に楽しい。(大外れを引く時もあるが、それもまた一興。) 舞台は、1950年のメキシコ。主人公のノエミ・タボアダは、メキシコシティに住まう美しい女子大生。裕福な家庭で育った彼女は、"女性"としての自分に強い自信を持っており、魅力的な話術と仕草で男性を魅了し、彼女自身もその駆け引きを楽しみとしていた。 ある日、イギリス人男性であるヴァージル・ドイルと結婚し、田舎町の屋敷に嫁いだ従姉のカタリーナから、一通の手紙が届く。そこには「夫が毒を呑ませようとする。邪悪な何かが自分を捕えて離さない。」といった不穏な一文とともに、ノエミに助けを求める内容が書かれていた。元々カタリーナの結婚に反対していたノエミの父は、すぐにもカタリーナの様子を見てくるようノエミに話す。大学の講義等の予定が入っていたノエミは父の頼みを渋るが、両親に難色を示されていたメキシコ国立自治大学への進学を認めることを条件に出され、カタリーナのもとへ行くことを決めたのだった―――。 「不穏な空気に包まれた屋敷に囚われた従姉を救い出すため、"旧時代の化物"と対決する新進気鋭の美女を描くゴシック・ホラー。」 混血を示す浅黒い肌、男性に追従しない(むしろ手玉に取る)、学問することを望む―――"新時代の女性"として描かれるノエミ。その彼女が対峙するは、白人至上主義(血統主義)と家父長制を貴ぶ、"旧時代"のドイル家。"息"も"謎"も詰まるドイル家の屋敷からカタリーナを救い出すため、アウェーゲームで奮闘するノエミの前に、文字どおりの"化物"が立ちはだかる―――。 「不気味にして優美なゴシック・ホラー」―――まさに帯コメントのとおりの作品。(「ブロンテ姉妹、ダフネ・デュ・モーリア、シャーリィ・ジャクスンらの愛読者は必読だ」―――これも間違いない。)
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