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少年 の商品レビュー

3.3

35件のお客様レビュー

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2022/04/13

川端康成没後50年ということで、新刊として刊行された「少年」 さてどんな小説だろうかと蓋を開いてみると、全く予想外であった。大衆小説を予想して読んでいたので、率直に、非常に読み進めにくかった。内容的には森鴎外の「ヰタ・セクスアリス」や三島由紀夫の「仮面の告白」と似ている(ただ後...

川端康成没後50年ということで、新刊として刊行された「少年」 さてどんな小説だろうかと蓋を開いてみると、全く予想外であった。大衆小説を予想して読んでいたので、率直に、非常に読み進めにくかった。内容的には森鴎外の「ヰタ・セクスアリス」や三島由紀夫の「仮面の告白」と似ている(ただ後者は読みやすかった)。また話の構成の巧さで言えば、彼らにはちょいと劣るかな、、? そこに書かれている内容は、青少年の頃の川端と後輩の清野の長きにわたる交流である。互いに寮生活の中で愛(この場合、友愛も恋愛も全て包括している)を育むも、川端の卒業によって徐々に疎遠になっていき、、、というような感じである。 ここで交わされる愛の行為は非常にプラトニックで、先に挙げた鴎外の作品に出てきた輩や三島の描く人物とは違い、暑苦しいものではなく、非常に静謐さに溢れていたように思える。けれど、在学時においては少なくとも燃えるような恋情を抱えていたのではと私は考えている。 いずれにせよなかなかに興味深い話であった。

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2022/05/01

良いと思わない。私小説。いわば川端なりの仮面の告白であるが、整然としない。少年期を丁寧に書けるかは、ひとつ作家の重要な指標だが、これはどうなのか。原点を振り返るという意味で、トルストイや三島は確かに上手い。 肯定的に捉えるのであれば、「伊豆の踊子」の裏作品として読まれるべきである...

良いと思わない。私小説。いわば川端なりの仮面の告白であるが、整然としない。少年期を丁寧に書けるかは、ひとつ作家の重要な指標だが、これはどうなのか。原点を振り返るという意味で、トルストイや三島は確かに上手い。 肯定的に捉えるのであれば、「伊豆の踊子」の裏作品として読まれるべきである。また、川端康成研究上は不可欠ともいえる。 後書きはエッセーだが、川端康成の女性からは「匂い」がしないという。それは谷崎に比べればそうであろうが、「眠れる美女」などを読んだことがないのだろうか。

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2022/04/12

旧制中学の寄宿舎での美しい後輩・清野との淡い愛。彼との書簡、当時の日記、学校の綴方で書いた作文とを引用しながら、齢50歳の川端が追想する。川端が清野に特別な想いを寄せていたのは思春期特有の心理的な動きだと思うが、それとは別に肉親との縁が薄かった川端の人恋しさもあったと思う。思春期...

旧制中学の寄宿舎での美しい後輩・清野との淡い愛。彼との書簡、当時の日記、学校の綴方で書いた作文とを引用しながら、齢50歳の川端が追想する。川端が清野に特別な想いを寄せていたのは思春期特有の心理的な動きだと思うが、それとは別に肉親との縁が薄かった川端の人恋しさもあったと思う。思春期の肉体的な欲求と恋や愛への憧憬、苛む孤独が清野への愛着となって現れたのではないか。中学生当時、清野は川端の心の拠り所であり、青春の思い出の象徴でもあったろう。最後に会ってから30年経った今でも感謝を持ち続けていると川端は書いている。清野がいなければ川端はもっと違った人間になっていたかもしれない。

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2022/04/04

宇能鴻一郎氏があとがきで「川端の描く女には体臭がない」と書いていたが、確かにそういう感じで少年愛も描かれていた。

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2022/03/31

日常の何気ない描写の美しさは星5つ、内容については私の理解力不足ゆえの星2つである。 川端康成といえばどちらかというと少女趣味のようなところがあると思っていたが、「寄宿舎」「少年愛」といううたい文句にまんまと釣られ購入(いわゆる腐女子根性である)。 初の文庫化ということで早速...

日常の何気ない描写の美しさは星5つ、内容については私の理解力不足ゆえの星2つである。 川端康成といえばどちらかというと少女趣味のようなところがあると思っていたが、「寄宿舎」「少年愛」といううたい文句にまんまと釣られ購入(いわゆる腐女子根性である)。 初の文庫化ということで早速読んでみた。 本筋である清野少年とのあれこれよりも、当時の生活の描写、そして寄宿舎で起きたときの朝靄の描写などは本当に美しくそして気高いものであり、今のスマホパソコン世代、いや、4K、8K世代にはできない描写であると感じた。 ぎょっとするようなことも、さも平然であるかのようにさらりと書いてある。 それゆえの川端康成らしさを強く感じた作品でもあるけれど、良くも悪くも堂々巡りのような印象が否めずやや退屈はしてしまった。 あと、凡人の感想として「当時から新興宗教ってあったのね」みたいな発見もあった。 回想録というかエッセーというか、であるので、あわよくば長野まゆみあたりの想像をして購入すると期待外れになるのでご注意を。

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