善人たち の商品レビュー
宗教の深いところに触れた気持ち。 ほんの少しだけど人生観変わるかも。 今更だけど宗教って哲学なんだね。
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善き人であることの苦悩や、善き人として生きることの難しさを感じた。 特に最後の戯曲「わたしが・棄てた・女」は、純粋さと善意に満ちた生き方を痛いほど貫いたみっちゃんに対して涙が止まらなかった。 善き人でいることは、何が起きても他者への優しさや同情、共感が捨てられずに涙を流さなければ...
善き人であることの苦悩や、善き人として生きることの難しさを感じた。 特に最後の戯曲「わたしが・棄てた・女」は、純粋さと善意に満ちた生き方を痛いほど貫いたみっちゃんに対して涙が止まらなかった。 善き人でいることは、何が起きても他者への優しさや同情、共感が捨てられずに涙を流さなければいけないとても過酷なことなのだと感じた。
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2021年の冬に公開された未発表の戯曲3本「善人たち」、「切支丹大名・小西行長」、「戯曲わたしが・棄てた・女」。1970年代後半に書かれたとされる。新約聖書でペテロがイエスのことを知らない、といって嘘をついてしまう描写が何度か出てくるように、人間の弱さや信仰心について、日本人的...
2021年の冬に公開された未発表の戯曲3本「善人たち」、「切支丹大名・小西行長」、「戯曲わたしが・棄てた・女」。1970年代後半に書かれたとされる。新約聖書でペテロがイエスのことを知らない、といって嘘をついてしまう描写が何度か出てくるように、人間の弱さや信仰心について、日本人的な恥の感覚、どうしても救われない現実、というものを描いている。 「善人たち」は真珠湾攻撃の1年前に、日本からアメリカに牧師になろうと留学した青年の話。この留学生や、留学生の面倒を見るトムの妹で、異端的な行動をしたキャサリンを取り囲む街の人たちの態度が生々しい。偽善、ということを考える。キャサリンは「兄さんは理想主義者すぎるんだわ。自分の理想や善意を押し付けて、相手がそれに応じれば愛と言い、それに応じなければ憎む利己的な理想主義者なんだわ」(p.75)という、善とされる価値観の押し付けによって苦しむ人間がいることが指摘される。ちなみに黒人のコトンに逆立ちさせたり、といった、遠藤周作の描くサディズムの話も出てきた。 2つ目、「切支丹大名・小西行長」は、『鉄の首枷』という作品の戯曲版らしい。「人はどのようにもおのれの弱さを正しとすることができる。その時、人は自分で自分をだますのだ。貴公たちは今、自分の弱さをだまし、自分の弱さを正しとしているのだ。」(p.115)、というところが、心に刺さる部分。遠藤周作の面白さって、こういう図星のところをたくさん指摘されるのが面白いのかな、と思ったりした。人から直接指摘をされると傷つくけど、本に指摘されると、素直に自分の弱さを考えることにつながりそう。(ここからネタバレになります。この段落を飛ばして下さい)最後の行長の心境で、行長がイエスと重ねられる部分に、腑に落ちるところがあった。「主ジュズスが背中に背負われてとぼとぼと歩かれた十字架クルスは、この俺の…俺のような人間の弱さ、卑怯さのすべてだからだ。あるいはこのうすよごれた俺たちの生きている俗世のすべてだからだ。主ジュズスはな、我らに十字架を棄てるなと教えたもうた。と言うことは…自分のうすよごれたすべてを背負うて生涯を終えろということであろう。俺は右近殿や細川の御内室のように、背に背負うた俗世の十字架を捨てる生き方だけはできなかった。だがその十字架の代りにこの首枷をつけている」(pp.192-3)の部分が、この物語の種明かし的な部分だった。 3つ目、「わたしの〜」には歴史的な要素が最初の2つよりはないが、それでもハンセン病とか当時の雰囲気を感じることができる。『沈黙』でもテーマになっていたが、「私はあんたと違って別に神など信じとらんが…神と言うものがあるなら、なぜ、あんな罪のない娘をこういう辛い目に合わせるのかね。」(p.267)という部分がやっぱり心を打つ。 遠藤周作のテーマや雰囲気を戯曲という形で触れることができ、しかも読み始めればすぐ読み終わるので、おすすめしたい1冊だった。(23/01)
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戯曲三作。 善人たちは、宗教と欲望。 キリシタン大名は、ガネシャと行長、何方の考えが正しいのか。 棄てる女は、若者の半数はと思ったらモラトリアム。 ここに価値はあるかと聞かれたらない。 だけど、本作では、みっちゃんとイエスの復活までを重ねることにより、若い時の男女関係が就業的贖罪...
戯曲三作。 善人たちは、宗教と欲望。 キリシタン大名は、ガネシャと行長、何方の考えが正しいのか。 棄てる女は、若者の半数はと思ったらモラトリアム。 ここに価値はあるかと聞かれたらない。 だけど、本作では、みっちゃんとイエスの復活までを重ねることにより、若い時の男女関係が就業的贖罪を背をうという話。 遠藤周作は海と毒薬が好き。
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手垢のついたテーマだけど、それほどにも作者にとっては重く、背負わなければならなかった十字架だったんでしょう。遺作ということだから、なおさら。
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- ネタバレ
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「善人たち」「わたしが捨てた女」のみ読了。 シナリオの形式で物語が進むから読みやすい。 遠藤周作なので、どれも、キリスト教の教えが根底にある。 善人ぶって阿曽をアメリカに自分の家に住まわせたトムは結局、戦いたくない(人を殺したくない)と言ったにに大使館に電話をせず阿曽を戦争に行かせた。 阿曽がトムの呼びかけに応じることなく投げられた火炎瓶で洞穴の中で死ぬ。 何が善で何が悪かを考えさせされる。 「わたしが捨てた女」タイトルは有名だけど、こういう話しだったのね。 体目当てで近づいてきた吉岡という男に尽くし、結果捨てられたミツ。ハンセン病の疑いがかけられ、施設に入るが誤診とわかり出ていけるのに、そのまま残りスタッフとして働き続けるミツ。 モデルは井深八重(ハンセン病と誤診されのちにそこの看護婦となった)らしいけど。 ここの施設で活き活きと働いていたミツを交通事故であっさり逝かせるなんて。むごいわ。(ちなみに八重はいいとこのお嬢さんで91歳で死去) あの、最低な男吉岡は初老になって、その施設を訪ねシスターに話しを聞くところから物語は始まるんだけど、懺悔、後悔の気持ちの表れなのか。 なんか、映画の「道」のジェルソミーナとザンパノの関係を思い出したよ。
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