幸村を討て の商品レビュー
八本目の槍と似た構成で、大阪冬の陣を前にした家康と正信の密談から始まる。夏の陣にて家康本陣まで迫りながらも槍をわざと外した幸村の、大阪城登城からの謎を解くため、五人の証人から話を聞くというスタイルで物語が進む。 織田有楽斎、南条元忠、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永の幸村とのやり取...
八本目の槍と似た構成で、大阪冬の陣を前にした家康と正信の密談から始まる。夏の陣にて家康本陣まで迫りながらも槍をわざと外した幸村の、大阪城登城からの謎を解くため、五人の証人から話を聞くというスタイルで物語が進む。 織田有楽斎、南条元忠、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永の幸村とのやり取りから、大阪城におけるそれぞれの戦いと生き様を描くのは見事だと思う。 特に毛利勝永の物語は美しかった。約束を果たすための入城、そして最後に大阪城が墜ちる際の様子を一つ一つの灯が消えると表現するのが印象深かった。火に包まれて陥落する天守の中で、淀殿とふたり幼少に戻り、人生の灯を消す介錯をする、そして美しい時代が終わる、言葉の連なりが美しく、哀しさとともに後を引く章だった。法華寺三珠院の大杉、思わず光成を思い出してしまった。 この本の中では忍びが重要な働きをする役目として登場し、南条元忠の章はその絆が深く、まるで幼馴染のような関係のふたりに訪れる最期が辛かった。恩を忘れず生死を共にする人の在り方、主と忍びの関係性がこれも美しい。 全体を通しては、真田の親子や兄弟の愛、名前(諱)に懸ける想いを通じて家を巡る戦いを描いている。最後の書状の宛名に関する件はそれで罪を免れるのかと疑問が残ったが、家康と正信を前にした信之の痛快な切り返しは清々しくもあった。 命を懸けて家を守る、名を上げる、約束を果たす、一筋縄ではいかない大阪城での諸将の目論見が渦巻く中での幸村の戦いぶりと暗躍が光る。表裏比興の者と言われた真田昌幸をはじめ、徳川を幾度も苦しめた真田家の強さは人の心を読む能力だろうか。
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幸村を討てが、いわば合言葉?真田幸村に敵対する人物、協力する人物、それぞれに絡み合う思惑を見事に描ききった作品だと、感心してしまった。真田幸村を主人公にするにしても、こんな書き方もあるんだと、作者の着眼にも拍手。(って、かなり上から目線ですみません)ただ、読み始めてしばらく、その...
幸村を討てが、いわば合言葉?真田幸村に敵対する人物、協力する人物、それぞれに絡み合う思惑を見事に描ききった作品だと、感心してしまった。真田幸村を主人公にするにしても、こんな書き方もあるんだと、作者の着眼にも拍手。(って、かなり上から目線ですみません)ただ、読み始めてしばらく、その構成に気づかなくて、うまく読み進められなかった。徳川家康の「幸村を討て!」で、ああ、そんな感じかと気付けて、話が面白くなってきた。戦国時代の本も結構読んだけど、ほとんどが、信長、秀吉、家康といった英雄たちを主人公にしたものだったので、王道の物語がこびりついていて、この本の流れがとても新鮮で面白かった。真田家の生き残り作戦。それぞれの武将の夢をどう解釈するかで、歴史って違って見えるようだ。それにしても、真田はみんなかっこよく描かれすぎじゃない?
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まさかの倒叙ミステリ。大阪の陣を舞台にホームズ家康とワトソン正信とか常人の発想ではない。幸村を討て!が新手のフラグに。長いのにグイグイ読ませてしまうこの作者の力量は相当なもの。「塞王の盾」の直後にこんなの書けてしまうのは凄いわ。
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読み応えあり もう最初から一度読み返したくなる 題名から、もっとチャンバラな話かと思ったらものすごい頭脳戦の話だった、よく出来てて感心しきり 各章で一人一人フィーチャーされる武将一人一人の物語も、一つの本になるぐらい楽しめた
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本の雑誌・どんでん特集から。とりあえず、長い。いわゆる超大作でも、圧倒的ページターナーぶりでその長さを全く感じさせない作品もある訳だから、長いと感じるってことは、自分的には冗長ってこと。最終章、家康と真田のやり取りがスリリングだったし、ここでいわゆるどんでん返されるから、そのおか...
本の雑誌・どんでん特集から。とりあえず、長い。いわゆる超大作でも、圧倒的ページターナーぶりでその長さを全く感じさせない作品もある訳だから、長いと感じるってことは、自分的には冗長ってこと。最終章、家康と真田のやり取りがスリリングだったし、ここでいわゆるどんでん返されるから、そのおかげでちょっと持ち直したけど、それが無ければ☆2つでした。やっぱり歴史小説って、史実という大きな枠が決まっている分、スリルに欠けるというデメリットを、改めて感じてしまいました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「幸村を討て」のタイトルですが、真田兄弟の物語 大坂の陣の裏側が、独自の視点で描かれます 信繁の大坂城入城の真の目的を、家康(と正信)が解き明かすというミステリー仕立て 5人の証言者、その人生も(腹心から聞き出したとして)語られます 「幸村を討て」は、物語のキーワードになっています ラストが鮮やかですね ただ、いくら草の者を駆使しても、大阪と江戸は遠いんじゃない?
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03月-17。3.5点。 真田幸村と家康との戦いの中、周囲の武将視線で幸村を語っていく。手法は既刊「八本目の槍」の感じ。 ラストの家康・本多正信と信之の攻防が圧巻。 個人的な趣味では「塞王の楯」の様な主人公目線で最初からラストまでが好きかな。
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よく出来てるなーと思った。 伊達も毛利もかっこいい。 でも、やっぱり家康を討っていたら、どうなったんだろうとも思ってしまった。
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重厚な戦国ドラマでした。真田の家の絆の強さをしみじみと感じました。あの夏、大阪城に入った者たちの様々な思惑を、まるでその場で見たかの様に語る今村先生の凄さ。家康もさすが天下人というところでしたが、それでも真田の賢しさが一枚上回りましたね。
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分厚い本で通勤で読むのは適してなかったな笑 真田幸村の大阪の陣はよく知ってるつもりだったが、こういう裏のストーリーがあっても面白いな。伊達政宗、毛利勝永の話の絡ませ方は流石だと思う。他では地味に描かれやすい真田信之がカッコイイのが新鮮でした。
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