日本でわたしも考えた の商品レビュー
英国、中国、ベルギー、インドネシアと暮らしてきたインド出身のジャーナリストによる4年間の東京滞在記。日印の結びつきを取り上げる第8章「僧侶、映画スター、革命家、そしてゾウ」もさることながら、第2章「「割れ」と「癒やし」」の文章にはっとさせられる。 「わたしは早い段階で、真実は一...
英国、中国、ベルギー、インドネシアと暮らしてきたインド出身のジャーナリストによる4年間の東京滞在記。日印の結びつきを取り上げる第8章「僧侶、映画スター、革命家、そしてゾウ」もさることながら、第2章「「割れ」と「癒やし」」の文章にはっとさせられる。 「わたしは早い段階で、真実は一つだけではなく、常に混沌としたものだという結論に達していた。だからこそ、中国社会がカオスであると同時に統制されていることや、インドに思いやりと残酷さが同居していることを知っても、落ち着いて受け入れることができた。日本についてわたしが思い至ったのは、深い癒しをもたらしてくれるとともに、深く傷ついているということだった。この矛盾こそが、日本をよりリアルに感じさせてくれるのだ。」 一概に「傷」と呼んでよいのか分からないが、生きている間に捨てられたことや失ったことを通じて、悲しみを抱きしめて生きていくことはあるように思う。このことは日本社会に特有のことではない。けれど自然に近い文化の中では、それが意識に上りやすいかもしれない。 また、第6章での「職人とジュガール」、第9章での「リスク回避傾向とジュガール的対応」では日印でビジネスをするときの溝を考えさせられる。
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日経新聞202242掲載 評者:神野紗希(俳人) 毎日新聞2022514掲載 評者:渡邊十絲子(詩人)
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