青い雪 の商品レビュー

麻加朋(著者)

2022/04/29

まず表紙が怖すぎる。日本ミステリー文学新人賞受賞作。由緒ある一族を中心に休暇を過ごす仲間たち。ある日、5歳の子どもが行方不明になる。そして「青い雪」と謎の言葉を残して自殺した女性。この2つの事件の結びつきとは。えらそうで申し訳ないが、プロットは悪くないけど話の展開の仕方が今ひとつ。特に第1章が挫折しそうなほど面白くない。中盤からはあれやこれや盛りだくさんで、先行きが気になるものの、なんか平坦な印象であまり盛り上がらない。登場人物が典型的なタイプばかりでちょっと薄味なのかも。でもストーリー自体は好きな感じ。

2022/04/15

しっかりミステリー作品という感じだった。え？、え？って予想外なことが次々起きたり、発覚したりするのが読んでいてわくわくした。犯人は誰かを予想しながら読み進めるのも楽しかった。最初の夏休みの時間に出てくる人物みんなが重要人物で、考えられて作り込まれている作品だと思った。

2022/04/10

非常な力作です。登場人物がとても多い上に苦手ジャンルの本格的なミステリーかなと思ったので、ちょっと躊躇したのですが、登場人物たちの運命が気になって夢中で読んでしまいました。
色々な仕掛けもあるのですが、ヒューマンドラマが根底にこんこんと流れていて、そちらがとても胸に刺さり切なくも感動してしまいました。
どれを書いてもネタバレになりそうなのですが、要素がかなり多いのでどれを断片的に書いてもネタバレにならないとも言えます。
今回の作品は賞レース用のチューニングマシンという可能性もあり、盛り込んだ要素を全部回収して全部詳らかにするというサービス精神は今回だけかもしれません。次作はもうちょっと読者の読解に色々委ねてくる可能性もあるか。
それにしても凄い新人が現れたものです。大いに期待したいと思います。

2022/03/14

日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品。夏の日に起きた少女の失踪事件から始まる、長い悲劇の物語。だけれど、さらにその始まりは投身自殺をし、死に際に「青い雪」という言葉を残した一人の女性。一見関係なさそうなこれらの事象がいったいどのように絡まり合い、繋がっていくのか。実に丹念で読みごたえのある作品でした。
ああでもこれはあまり語れない。語りたくない。事件の真相はもちろん、登場人物たちの抱える多くの秘密とその痛み、苦しみがとてつもなく鋭く胸を刺すような心地でした。決して不幸なばかりではないし、救いもあるとは感じられますが。全体的にはひどく哀切。ちょっとした環境の違いで変わってしまった彼女たちの運命がやりきれません。だからこそ彼女が最後に選んだ決着は、正しいとは思えないけれど。こうするしかなかったのでしょうかね。
全ての要素が繋がって物語の構図が見えたころ、ようやく「青い雪」の謎も解けます。ああそうか、そういうことだったのか……これもまたあまりに切ないけれど、美しい謎でした。

2022/03/06

ミステリーながらも、子供に対する愛情や、家族を思う心を考えさせられました。
また、政治絡みでの人間の狡猾さが、絶妙なタッチで表されていると思いました。
「青い雪」の持つ意味に、最後の最後で感心させられましたし、さすが受賞作品であり、名作だと感じました。

2022/02/02

第25回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
夏の数日をともに過ごす三組の家族を、悲劇が襲う。五歳の少女が失踪したのだ。事件性も疑われるが、行方は知れぬまま、月日が過ぎていく。長い時を経て現れ出た一通の告発状。絡み合った謎が氷解したとき、明らかになる真実とは? 新人離れしたストーリーテリングで描く慟哭の大河ミステリー