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ななみの海 の商品レビュー

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39件のお客様レビュー

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2022/05/31

大人でもない子どもでもない、その合間でたゆたう十代後半という世代。だからこそ大人をうとましく、子どもを遠ざけたく思う、そんな世代の心情を、児童養護施設に暮らす少女の日常を通して細やかにみずみずしく描いた物語でした。 「寮の子」という、家のある子よりも「頼りない手すり」をすがって...

大人でもない子どもでもない、その合間でたゆたう十代後半という世代。だからこそ大人をうとましく、子どもを遠ざけたく思う、そんな世代の心情を、児童養護施設に暮らす少女の日常を通して細やかにみずみずしく描いた物語でした。 「寮の子」という、家のある子よりも「頼りない手すり」をすがって生きるしかない彼女たちが、友達や仲間たち、支える大人たちを通して、自ら理由もわからないままに煩悶しながらも少しずつ前へ進んでいく様子がとてもいじましくリアルでひりひりとさせられました。 良い大人が増えれば、つらい想いをする子どもが減る。彼女がその境地に至ったのは、彼女らの周りにいた大人たちが良い人であったからで、つまり今の大人が、未来の子どもを救えるのだということにほかなりません。そして、それは血縁など関係なく、ただただその大人自身の在り様によるものなのです。 すっかり大人側になった自分はそちら側の視点からまた痛感させられたのでした。未来の子どもたちへ、辛い思いを今まさにしている彼らにできることを、今少しでも何かしていきたいと、そう思いました。

Posted byブクログ

2022/05/15

 児童養護施設のことを、本書を読む前はよく認識していなかった。  将来何になりたいかなんて、子どものうちに分かるわけないし、とりあえず前に進んでからでも遅くはないと、俺はそう思っている。  だけど、18歳で施設を出なければいけないというタイムリミットがある子供たちにとって、早く大...

 児童養護施設のことを、本書を読む前はよく認識していなかった。  将来何になりたいかなんて、子どものうちに分かるわけないし、とりあえず前に進んでからでも遅くはないと、俺はそう思っている。  だけど、18歳で施設を出なければいけないというタイムリミットがある子供たちにとって、早く大人にならなければいけないために、将来の選択を18歳までに選ぶ必要がある。  それは子どもにとっては重圧だと思う。  逆に、将来のことを考えず、とりあえず大学に行って、とりあえず就職をしてから考えることは、遅きに失しているとも思うようになった。  将来に正解なんかないけど、選択を迫られる子どもたちの存在に気が付くことができた。  施設に入る子にはそれぞれに事情がある。  本書の主人公、ななみは母子家庭だったが母が亡くなり、祖母に引き取られた後は祖母が亡くなったという事情がある。  施設で暮らしていることを少数の友人しか話さず、仲が良いグループの間柄でも伝えられずに、夜の門限には家が厳しいからと言い訳をして早く帰る。  でも、普通の子は、もっと遅くまで遊んでいたり、スマホだって制限なく使っている。  それに、施設の中にも、甘えっぱなしの低学年の子にはイライラする。  馬鹿にされちゃアいけない、という祖母の言葉が頭にこびりついて離れない。    18歳になったら施設を出ていかなければいけない。  高校三年生になり、将来のことを考えなければならない。  ななみが選んだ道とは。

Posted byブクログ

2022/05/12

児童養護施設、そこにいる子供、関係者の様子を上手く(わかりやすく?とっつきやすく?)表現していると思う。実際は、こんな良い場所・人間関係ばかりではないかも知れないけど、一面を知る、良いきっかけになる一冊。 登場するネガティブな面のかいま見える大人たちも、自分が良かれと思って子供に...

児童養護施設、そこにいる子供、関係者の様子を上手く(わかりやすく?とっつきやすく?)表現していると思う。実際は、こんな良い場所・人間関係ばかりではないかも知れないけど、一面を知る、良いきっかけになる一冊。 登場するネガティブな面のかいま見える大人たちも、自分が良かれと思って子供に刷り込みしている部分もありそう。自分も同じことをしていないか振り返ってみては。

Posted byブクログ

2022/04/29

ななみ、頑張れ。両親を早くに亡くし、養護施設で生活している高校生のななみ。友達もおり、部活も楽しみ、彼氏もいる。なのにふとした時にモヤモヤする。「施設暮らし」「親がいない」というのが自意識以上にコンプレックスになり、ささくれた気持ちが抑えられない。複雑なななみの心情を中心に書いた...

ななみ、頑張れ。両親を早くに亡くし、養護施設で生活している高校生のななみ。友達もおり、部活も楽しみ、彼氏もいる。なのにふとした時にモヤモヤする。「施設暮らし」「親がいない」というのが自意識以上にコンプレックスになり、ささくれた気持ちが抑えられない。複雑なななみの心情を中心に書いた作品。正直ななみは発想が自己中だし、優しくない。その辺がリアルなのだが読んでいて悲しい気持ちになった。でも進路が決定してからは少しずつ大人になったのかな、と思える成長を応援したい。ななみ以外の子供達の描写も丁寧で印象的だった。

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2022/04/25

児童養護施設の様子がリアルに描かれていて、施設によって多少の違いはあるとしても様子がよく分かる。児童養護施設がどんな所なのか知る意味でも多くの人に読んでほしい1冊。 友達や彼との距離感、施設の子との関わり、進路…。いろいろなことを通してななみが成長していく姿は、いま自分自身が関わ...

児童養護施設の様子がリアルに描かれていて、施設によって多少の違いはあるとしても様子がよく分かる。児童養護施設がどんな所なのか知る意味でも多くの人に読んでほしい1冊。 友達や彼との距離感、施設の子との関わり、進路…。いろいろなことを通してななみが成長していく姿は、いま自分自身が関わっている子どもたちの希望であり、まさに「灯」である。

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2023/12/19

 児童養護施設で生活する高校生の岡部ななみが施設を出るまでの2年間を描いた青春小説。      * * * * *  「施設で暮らす」ということがどういうことか。きちんと考えさせてくれる作品でした。  ななみは一般的な高校生からすると非常によくできた高校生です。そんなななみ...

 児童養護施設で生活する高校生の岡部ななみが施設を出るまでの2年間を描いた青春小説。      * * * * *  「施設で暮らす」ということがどういうことか。きちんと考えさせてくれる作品でした。  ななみは一般的な高校生からすると非常によくできた高校生です。そんなななみでも、茫漠と広がる(自身の)将来を連想させる「海」が好きではありません。  18歳で退所し自活することを迫られる。これは大学進学を志すななみにとっては深刻な問題です。何より1人で大海原に漕ぎ出さねばならないという不安は17歳の少女には荷が重すぎると言えます。  また如才なく振る舞えるななみゆえ施設暮らしを学校の友人たちにカミングアウトできない苦労もあるでしょう。これら大小さまざまな気苦労は本来する必要のないことです。ななみでもそうなのだから、もっと不器用で不安定な寮生たちの心理的負担はいかばかりでしょうか。  子どもたちを取り巻く社会を作っている大人の責任の大きさ。真摯に受け止めて置かなければいけないと強く感じさせられました。  少し斜め上から物事を描くいつもの朝比奈作品とは違う、素直でストレートな作風が新鮮でした。

Posted byブクログ

2022/04/10

児童養護施設で育つ七海の高校生活を描いた作品。医学部への進学、受験勉強に集中したいが下の子たちの勉強やお世話、同級生とLINEをしていても夜9時にはスマホを取り上げられる施設のルール、様々な特別な環境と向き合いながら、そして葛藤しながら成長していく。

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2022/03/30

施設の子と一括りにすることはできない。 そこには、一人一人、全く違う悩みを抱え、 生きている子どもたちがいる。 親がいるから、家があるから、幸せか? それも一概には言えない。  皆、それぞれに苦しんでいる。 だから、世の中には、いい大人が必要。 ストレートだけど、強いメッセージ...

施設の子と一括りにすることはできない。 そこには、一人一人、全く違う悩みを抱え、 生きている子どもたちがいる。 親がいるから、家があるから、幸せか? それも一概には言えない。  皆、それぞれに苦しんでいる。 だから、世の中には、いい大人が必要。 ストレートだけど、強いメッセージ。

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2022/03/20

児童養護施設のこと。 2歳から高校3年生まで44人が一緒に暮らしている。 施設での生活の様子がとてもよくわかる。 ななみは両親がいない。 それは特殊なことで、帰る場所がないというのは、重いこと。言われると辛いこと。 成績が良く、一生懸命に学習するななみでも、心身のバランスを崩す。...

児童養護施設のこと。 2歳から高校3年生まで44人が一緒に暮らしている。 施設での生活の様子がとてもよくわかる。 ななみは両親がいない。 それは特殊なことで、帰る場所がないというのは、重いこと。言われると辛いこと。 成績が良く、一生懸命に学習するななみでも、心身のバランスを崩す。 爪を噛んだり、足を踏み鳴らしたりした。 なんとか歯を食いしばるようにして、孤独と闘ってきた。 でも、そういう踏ん張って生きていることを邪魔するのはいつも大人。 高校生のななみは、施設に住んでいることを、高校のダンス部の友達に言えなかった。 でも、みんな知っていた。涙が出そうになる。 そういう、みんなと違う部分での悲しさがたくさん出てくる。 目の前に広がる海は、恐ろしい。呑まれたら死ぬ。精神的な意味で。 ななみも何度も呑まれそうになった。これからもそんな考えに襲われる時が来ないとも限らない。あり得ないとは、決して言えない。 足を掴まれて沈められてゆくようなあの感じ。 子供にとってはあまりに大きく、時に美しく、しかし時に恐ろしく、そんな海が目の前に広がっていた。 でも、切り拓いていけるななみだと思う。 最後にさす光が温かい。

Posted byブクログ