Blue の商品レビュー
文庫本になったので再読。平成の30年間を振り返りつつ、様々な社会問題を取り上げる。殺人の罪は決して許されるものではないが、悲しい小説だった。
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Blueの生い立ち、人生の経緯を通して「平成」という時代を描き出した超力作。素晴らしい。貧困、虐待、格差、外国人技能実習生、などのテーマを様々に交差させ、きれいごとだけではない日本の陰に生きる人々に寄り添った作品。陰惨で悲惨なエピソードが続いて気が滅入るけれど、時折に彼らを繋ぐ静...
Blueの生い立ち、人生の経緯を通して「平成」という時代を描き出した超力作。素晴らしい。貧困、虐待、格差、外国人技能実習生、などのテーマを様々に交差させ、きれいごとだけではない日本の陰に生きる人々に寄り添った作品。陰惨で悲惨なエピソードが続いて気が滅入るけれど、時折に彼らを繋ぐ静謐な湖のイメージがそれを中和する。 糾弾というよりは提起の物語。 憎しみというよりは悲しみの物語。 語り部が明らかになった時の納得感が少し足りないように感じてしまったことだけが残念でした。
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平成の社会問題振り返り小説 当時を振り返る際に時事ネタや音楽が入りすぎてた嫌いがあるものの、長い割にはサクッと読めました。
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★4.5 絶叫に続き葉真中さんの著書2冊目です。 おもしろかった。 ただ、何日かかけて読んでいたため「これは誰だっけ?」「どう繋がってたんだっけ?」と自分の記憶力の乏しさに悲しくなりました(;_;)
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平成史30年と共に今作の主人公・ブルーの歩んだ足跡を辿る社会派ミステリー作品。過去作の「コクーン」同様、社会問題を随所に盛り込んだ群像劇というフォーマットの弊害なのか、全体的を通じて奥行きに欠けており、他者視点を介したブルーの人物像も立体的とは言い難い。女性警察官ペアによる最後の...
平成史30年と共に今作の主人公・ブルーの歩んだ足跡を辿る社会派ミステリー作品。過去作の「コクーン」同様、社会問題を随所に盛り込んだ群像劇というフォーマットの弊害なのか、全体的を通じて奥行きに欠けており、他者視点を介したブルーの人物像も立体的とは言い難い。女性警察官ペアによる最後の一幕も些か唐突感が拭えなかったのが正直なところ。ロスジェネ世代の著者による問題提起もリーダビリティの高さも魅力的だが、デビュー二作品のインパクトが強過ぎた所為か、このシリーズにおいては作品を追う毎に作風が小粒になっている気がする。
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時代とその時の社会問題が合っていたので読みやすかった。 その社会問題の中生きる者の話なので途中で何度か切なくなった。
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初めてこの作者の本を読んだが、社会的な課題がテーマで面白い! 子供時代に、当たり前に与えられるべき愛情、環境、そもそも存在しているという証明、それが無い人がいる問題。 最近、児童養護施設卒業後のフォローが強化されているニュースを見たが、もっと幼い頃に、人の暖かさを感じながら育つこ...
初めてこの作者の本を読んだが、社会的な課題がテーマで面白い! 子供時代に、当たり前に与えられるべき愛情、環境、そもそも存在しているという証明、それが無い人がいる問題。 最近、児童養護施設卒業後のフォローが強化されているニュースを見たが、もっと幼い頃に、人の暖かさを感じながら育つことを支援する必要があるのだろうと感じた。
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平成という時代を一気に駆け抜けた感じで、まさに平成史。平成を象徴する出来事や固有名詞がたくさん出てきて、ドンピシャ世代にはたまらない懐かしさ。 そしてこの時代によく耳にするようになった、児童虐待や貧困、無国籍児など様々な社会問題をテーマとした社会派ミステリー。 葉真中氏の書く社会...
平成という時代を一気に駆け抜けた感じで、まさに平成史。平成を象徴する出来事や固有名詞がたくさん出てきて、ドンピシャ世代にはたまらない懐かしさ。 そしてこの時代によく耳にするようになった、児童虐待や貧困、無国籍児など様々な社会問題をテーマとした社会派ミステリー。 葉真中氏の書く社会派ミステリーは大好きなので、かなり期待して自分でハードルを上げすぎてしまった。もちろん飽きることなくすらすら読み進めることができてとても面白かった。しかし「ロストケア」や「絶叫」を読了した時のような満足感は、今回は得られなかった。あの2作品が個人的にはあまりにも面白くてツボだったので、まあ仕方ないのかもしれない。 それでも葉真中氏の書く社会派ミステリーは大好き。
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見方によってはとてつもなく醜悪で救いのない話なのに、それでも、それゆえに惹きつけられる。 何よりラストに待つ闇の中の米粒ほどの光。 それは逃避によってもたらされたものかもしれないけれど、そこに人間の本質的な部分を信じる何かがあるようで、醜悪さとのギャップでより美しくも感じました。...
見方によってはとてつもなく醜悪で救いのない話なのに、それでも、それゆえに惹きつけられる。 何よりラストに待つ闇の中の米粒ほどの光。 それは逃避によってもたらされたものかもしれないけれど、そこに人間の本質的な部分を信じる何かがあるようで、醜悪さとのギャップでより美しくも感じました。 葉真中作品には時にハッとさせられるような美しかったり、力強く感じる部分と、社会の闇という残酷さや醜悪さが両立しているから、忘れがたい作品になるのかもしれません。 舞台となる時代は平成の31年間。時代を超えて犯された二つの犯罪が、ある一人の人間の壮絶な人生を浮かび上がらせます。 当時の世相やブーム、実際の事件を交えながら犯人だけでなく、刑事や証言者たちの生い立ちからも平成という時代が生んだ様々なひずみが描かれます。 たとえば経済格差や搾取、不景気、家族の解体、個人化、児童虐待といったものが、物語の節々で軋みを生み進んでいく前半部は、まさに今の時代の閉塞感は前時代から地続きとなって表面化してきたものだと実感させられます。 刑事の執念の捜査によって徐々に浮かび上がる、一家惨殺事件の真相。そこに立ちふさがるのも社会の闇と組織の論理。そして物語は後半部、改元間近の平成31年へと移り…… 読み終えたときは平成という時代の闇やひずみが瞬く間に、自分の脳内を駆け巡っていった気がしました。 平成の裏面を親から何も与えられず、社会からも見つけてもらえず、それでも駆け抜けた“ブルー”。警察の捜査が進むごとに彼の壮絶な人生がしのばれ、自然と感情移入してしまい先へ先へと読み進めなければいけない、という感覚に陥っていました。 彼を刑事たちと追うことが、そのまま時代の裏面を駆けることとイコールだったのかもしれません。 そしてブルーだけでなく、彼を追う刑事たちも、囲う人物たちもみな時代の闇に翻弄されたり、愛すべき家族という神話にとらわれていたりと、それぞれに何かを背負っていて、その人間ドラマや葛藤も非常に読み応えがありました。 単に犯罪捜査のミステリでもなく、時代や社会を断罪するだけでもなく、こうした個人の物語にもフォーカスするからこそ、この作品はより心に残ったのだと思います。 家族とは? 罪とは? 救いとは? 正義とは? 罪を憎んで人を憎まずというならば、この事件の場合何を憎むのが正解なのか? ミステリらしい仕掛けも用意し、一方でこうした問いが読後心に沈殿する。いい意味で尾を引く社会派ミステリ。 平成という時代の軋み。それは今なお残り、なお一層不気味に音を立て続けている気がします。その音にかき消された人々の叫びを大小問わずすくい上げ、小説に昇華した迫力満点の力作です。
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